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私が風俗嬢になったワケと、「元風俗嬢」が背負っていくもの

私が風俗の仕事を始めたきっかけは、生活が困窮して家賃が払えなくなったからだった。両親は亡くなっていて、頼れる親戚もおらず、悩みに悩んだ末に風俗店の扉を叩いた。

借金も考えたけど、もともと浪費癖があったので、一度借りたらそのまま借金地獄に転落してしまいそうな気がして、怖くてやめた。生活保護の申請も考えなくはなかったが、フラフラとフリーターをしている私が受給する資格はないと当時は思っていたし、好きな部屋に住んで、好きなときにバイトをしてという自由な暮らしも手放したくはなかった。

そうして始めた風俗の仕事。

接客は全然楽しくないし、苦痛でしかなかったけど、勤務後に全額日払いで貰える○万円という高額の報酬が嬉しくて仕方なかった。最初はある程度生活費を貯めたらすぐに辞めようと思っていたのに、「どうせなら、諦めた夢を叶えるために貯金しよう」と思うようになり、そのまま続けることにした。

私は高校卒業後、大学に進学することを希望していたのだが、家庭の事情により叶わなかった。

正社員として就職する気にはどうしてもなれず、「いつか大学に行って、自分のやりたい仕事をしたい」と思い、フリーターとなる道を選んだ。大卒じゃなくても、努力してその仕事に就いている人はきっといっぱいいるのに、あの頃の私は「大卒じゃないと無理だ」と思い込んでいた。

卒業後はほぼ全員が有名大学に進学する高校に通っていた私は、フリーターになったものの、やはり大学進学以外に自分の将来はないと思い込んでいたのかもしれない。でも結局、ちゃんとお金を貯めようともせず、フラフラとその日暮らしをして、家賃も払えなくなるほど困窮してしまったのだから我ながら呆れる。

◎風俗嬢になって、貯金どころか贅沢をしただけの最初の数年間

夢を叶えるためのお金を稼ぐはずが、1年後、お金はほとんど貯まらず、浪費癖がひどくなっていただけだった。

仕事のストレスもあったけど、一流企業に就職してバリバリ働いている高校の友人たちと自分を比べて虚しく感じる気持ちが強烈にあり、せめて衣食住は彼女たちと同じような暮らしをすることで、自分を満たしていたのかもしれない。

そのくせ、仕事が嫌になったら長期で休んで、お金がなくなったら仕方なく出勤してということを繰り返し、そんな生活でお金が貯まるわけもなかった。自分でもどうしてそんな馬鹿なことをしていたのか分からない。真面目に出勤すれば、多少贅沢をしても確実にお金を貯められる額を稼げるのに、「毎日出勤したら精神的に病むから」と自分に言い訳をしていた。かと言って他のアルバイトをする気にもなれず、ただただ毎日を無駄に消費していただけだった。

結局私は、贅沢をするためだけに数年間も費やしてしまったのだ。

◎風俗嬢としての賞味期限

「手に入らないものばかり欲しがって、人生失敗しちゃった」

つい最近TVドラマで聞いたセリフ。私のことだと思った。

一体私はいつまでこんなことを続けるんだろう。

お金を貯められないなら、この仕事をしている意味なんてないのに。

仮に貯めて今更大学に行ったところで、意味あるのかな。

履歴書にこの数年間のこと、何て書けばいいの?

いつからか、年齢を重ねることに恐怖を感じるようになった。

何も手にしていないのに、ただただ時間だけが過ぎていく。

今はまだ20代だからいいけど、このままダラダラと続けていったらいずれ加齢が顔に出て、この仕事で稼ぐのが難しくなる。

今が永遠に続いたらいいのに、なんて考えるようになった。

ただ、年齢を意識するようになってから、自然と贅沢をすることが少なくなった。

気分の問題でお店を休むこともなくなった。

自分のこの仕事での賞味期限を考えたら、そんなことをしている暇はないと思うようになったからだ。

そして最近また大きく心境が変化して、近いうちに辞めようと思うようになった。それは一カ月後かもしれないし、数週間後かもしれない。以前から「この仕事をしたことをマイナスだけで終わらせないように、○百万円貯めてから辞めよう」と思っていたけど、私の場合、どうしてもこの仕事を好きにはなれないし、お客さんとの時間を無意味な時間だとしか思えず、それならもうこれ以上人生において無意味な時間を積み重ねるのはやめようと思ったのだ。

幸い、長年性感エステ店に勤めてきたことでマッサージの技術は習得しているし、辞めてもしばらくは普通のマッサージ店でバイトしていこうと思っている。バイトをしながら空いた時間を使って、長年夢見てきた仕事に就けるように努力していくつもりだ。

厳しい道であることは覚悟しているが、風俗の仕事を続けながら目指していくよりも、贅沢出来る環境から自分を離して向き合ったほうがいいのではないかと思ったのだ。もっと早くこう思えていたら良かったのだけど。

◎風俗歴がもたらす後ろめたさ

一応自分の今後の身の振り方を決めたことで、絶望的な気持ちになることもなくなったが、この先ずっと、「風俗で働いた」という後ろめたさが残るのだと思う。私は、今もこれからも、出来ることなら風俗歴を明かさないで生きていきたいと思っている。

今更友人に話す勇気もないし、周りから白い目や好奇の目で見られることに耐えられないと思うからだ。親しい友人たちなら、打ち明けてもきっと離れていかずにそばにいてくれると思うけど、そんな保証はないし、やっぱり知られるのは怖い。

そして、いつか結婚したいと思えるくらい大切な人に出会えたときのことを考えると、今から暗い気持ちになる。

そのとき私は相手に打ち明けるべきかどうか悩むだろうし、隠し通すにしても、ずっと後ろめたい気持ちを背負っていかなければならなくなる。

もし仮に打ち明けて相手が離れていったとしたら、私は風俗で働いたことを心底後悔すると思う。

それで離れていく人なら元から一緒になる運命じゃなかった人だということかもしれないけど、もし風俗で働いてさえいなかったらこんな杞憂もないのかと思うと、何とも言えない気持ちになる……。

そして、今後やはり職歴のことで苦労すると思う。

この数年間のことをどう履歴書に書けばいいのか分からないし、隠したままにするとしても、やはり後ろめたさがつきまとうだろう。そして、バレないか不安でい続けなければならなくなる。

風俗歴を後ろめたいことだと思わずに胸を張って生きていける強さが私にあればいいのだけど、ただぼんやりと贅沢をして過ごしただけの数年間のことを思うと、そんなこと出来ない。その資格は私にはないと思う。

最初から夢を叶えるために努力していればよかった。贅沢なんかにお金を使うんじゃなかった。ダラダラ続けるくらいならもっと早く辞めておくべきだった。風俗の仕事、するべきじゃなかった……。後悔は次から次へと押し寄せてくるし、これからも私は苦しみ続けるんだと思う。

◎風俗嬢は早く稼いで早く辞めたほうがいいと思う理由

もし私の風俗歴が役に立つことがあるとすれば、私と同じように、風俗で働かざるをえない緊急の理由があって働いているわけでもなく、ただ贅沢をして毎日虚しい気持ちで過ごしている子がいるのなら、この記事を読んで将来について考えてくれるきっかけになればいいなと思う。まだ何も成し遂げていない私が言うのもおかしいかもしれないけど。

本当はやりたいことがあるのに、お金も貯まらずその日暮らしになってしまっているのなら、今すぐ贅沢はやめて5年後、10年後の自分のことを考えて動いてほしい。まだ風俗で頑張れそうならそのままお金を貯めたらいいと思うし、私のように虚しさしか感じなくてつらいだけなら、もう風俗は辞めて昼職で働きながら夢に向かって頑張る努力をしたほうがいいと思う。

風俗の仕事は、ある程度シフトは自分で決められるし、出勤すればその日に高収入をもらえる。このラクさに甘えているだけなら、やはりすぐに辞める準備をして昼職に戻るべきだと思う。

一生風俗の仕事をするならいいけど、いつか他にやりたい仕事が出来たときに少なからず苦労すると思うし、まだまだこの仕事への世間からの目は冷たい。それなら、「いつか」のための保険じゃないけど、昼職のブランクを作るべきではないと思う。これは、風俗を辞めて次の段階へ進もうとしている自分への戒めでもあるけれど。
(朝比奈ゆきえ)

最終更新:2016/03/12 09:30
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