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笑って泣けるホラー『死霊館 エンフィールド事件』のワイルド・スピード的方法論

【リアルサウンドより】

 「笑って泣ける〇〇」とは、宣伝でよく使われる定型句の一つであるが、現在公開中の『死霊館 エンフィールド事件』は「笑って泣けるホラー映画」と言うべきだろう。

 本作は、アメリカに実在する心霊研究家ウォーレン夫妻が、実際に体験した怪事件を描く! という触れ込みの『死霊館(13年)』の続編だ。前作は『SAW』(04年)でデビュー後、『狼の処刑宣告』(07年)『インシディアス』(10年)など、快作を連発し続けていたジェームズ・ワンが監督を務め、幽霊屋敷モノという古典的なテーマながら、「音」と「映像」を巧みに使うことで新鮮な恐怖映画に仕上がっていた。その続編である『エンフィールド事件』では、もちろんワン監督と主要キャストが続投。舞台をイギリスに移し、ウォーレン夫妻が再び悪霊の住む家の恐怖に挑むわけだが……その映画の方向性は、前作とは明らかに異なっている。ワン監督の見事な恐怖演出に加えて(ワン監督の必殺技とも言える、独特のカメラワークが連発!)、今までのワン監督にはなかったとも言える、エモーショナルな部分が加味されているのだ。つまり、怖いところはとことん怖く、その一方で笑えるところは笑えて、しかも胸に来るようなエモーショナルさがあるのだ。俗にも「恐怖と笑いは紙一重」と言うが、それゆえに、そのバランスをコントロールするのは難しい。「恐怖」に傾き過ぎれば「ドン引き」に、笑いに傾きすぎれば「どっちらけ」の状態になりがちだ。しかも「泣ける」的な要素を加えるとなると――、三つの要素を全て立たせるのは至難の業だ。しかし、ワン監督はそれを成し遂げている。これはちょっと異常と言ってもいいだろう。いったいワン監督は何故、こんな難しい仕事をやってのけることができたのか?

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 ここで注目すべきはワン監督の前作『ワイルド・スピード SKY MISSION』(15)だ。『ワイルド・スピード』と言えば、2016年現在、最も成功しているフランチャイズ映画であり、まさにハリウッド・エンタテイメントの超王道と言っていいだろう。『SKY MISSION』も、ロスの暴走族が世界を救うために車で空を爆走する娯楽大作であり、同時に主演のポール・ウォーカーの事故死という不幸に見舞われた作品でもある。この映画でワン監督はロスの街中でミサイルが飛び交う大アクションを演出しつつ、ポール・ウォーカーとの映画史上に残る感動的な「別れ」を描いてみせた。この別れのシーンは世界中を涙で包み、ここで印象的に使われたウィズ・カリファの楽曲『See You Again』は12週連続ビルボードチャート1位という特大ヒットになった。

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