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テレビウォッチャー・てれびのスキマの「テレビ裏ガイド」第135回

感動は障害者を救えない? NHK『バリバラ』の挑戦

baribara0828.jpgNHK『バリバラ』

 画面に大きく「24」という文字。黄色い背景に地球が描かれたロゴが大写しになって、番組が始まった。

 日本テレビの『24時間テレビ』ではない。NHK・Eテレの『バリバラ』である。「笑いは地球を救う」と書かれた、黄色いTシャツを着た出演者たちが今回テーマにしたのは「検証!<障害者×感動>の方程式」。障害者を感動的に扱うことの多い『24時間テレビ』の真裏でこのテーマを生放送でやるという、かなり挑発的な企画だ。

『バリバラ』は、出演者のほとんどが、なんらかの障害を持った人たち。これまでも『バリバラ』は挑戦的ともいえる放送を行ってきた。たとえば、7月26日未明に起きた相模原障害者殺傷事件を受け、いち早く「緊急企画 障害者殺傷事件を考える」を放送。当事者である彼らが意見をぶつけ合った。こうした社会的な問題を扱う一方、同じ熱量で「SHOW-1グランプリ」といった企画も行う。「マイノリティーのお笑い日本一を決める」というコンセプトを掲げ、障害者たちがお笑いのネタで競うのだ(これは、6年前の2010年から続いている人気企画だ)。ちなみに今回の放送で、なんの説明もなくカッパ姿で後方に見切れていたのは、「SHOW-1グランプリ」出場者でもある「あそどっぐ」だ。

 これまでテレビは、障害者で笑うのはタブーだった。だが、彼らは自らの障害を“ネタ”にして笑いを取っている。視聴者の側からすると、「不謹慎」などと言いたくもなるのかもしれない。けれど、演じている人は真剣で楽しんでいる。そして実際、面白い。

 彼らは、口をそろえて言うのだ。

「感動するな、笑ってくれ!」と。

 番組では冒頭、世界的に大きな話題を呼んだ、骨形成不全症であるステラ・ヤングの「スピーチを紹介。

「手がない女の子が口にペンをくわえて絵を描く姿」「カーボンファイバーの義肢で走る子ども」など、障害者が自らの障害に負けず懸命に立ち向かっている姿を見て感動する。だが、その感動の中に「自分の人生は最悪だけど、下には下がいる。彼らよりはマシ」という視点があるのではないかとステラは指摘する。障害者は健常者に勇気や感動を与えるための道具、すなわち「感動ポルノ」になっているというのだ。

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