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【おたぽる】

中学時代は生きづらさのかたまりだった……地下アイドル以前の姫乃たまの世界

——地下アイドル“海”を潜行する、姫乃たまがつづる……アイドル界を取り巻くココロのお話。

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 私が通っていた中学校は、敷地の真ん中に池があった。

 ある日、授業中に落とした鉛筆が、同級生達の足元を延々と転がっていくのを見て、ふと校舎が傾いているんじゃないかと思った。窓から身を乗り出してみると、たしかに校舎も体育館も、中央の池に向かって傾いているようだった。そのまま私も池に向かって飛び降りてしまいたかった。

 放課後、誰もいない教室の床にそっと鉛筆を置いてみたら、ころころと池があるほうへ転がっていった。校舎は本当に池に向かって傾いていた。

 早く、校舎も、体育館も、校庭も、池に向かって傾いて沈んでほしい。

 そう思わずにいられなかった。遠くの廊下から生徒達の騒ぐ声が聞こえてきて、死にたい気持ちと、殺したい気持ちが、同時に押し寄せてきた。

 先日取材中に、「姫乃さんは地下アイドルになったことで居場所を見つけたって言うわりに、生きづらそうですよね」と対談相手から言われて冷やっとした。その通りだけど、理由を話す気になれなかったからだ。

 私にとって、中学時代は生きづらさのかたまりだった。

 誰とも噛み合わない会話や、集団行動への嫌悪感からは、自分の社会性のなさを突きつけられるようだった。

 学校も地獄、きっと大人になってからも私は社会で生きていけない人間なのだろう。

 あの頃の恐怖は、大人になって居場所を見つけてからも拭いきれない。私は手放しで安心することはないし、何年も文章にすらすることができなかった。

 中学生の時、なにもかもすべてがダメ、という感じだった。誰だって多かれ少なかれそうだったのかもしれないし、「そんなことない、楽しかった」という人もいるのかもしれない。私にとって学校生活をそつなく送れる子たちは少し変で、ものすごく特別に見えた。その子たちも、本当のところは何を思っていたのかわからないけど、もし本心は辛かったのだとしたら、私には辛抱強さが足らないのだと思う。

 いずれにせよ、誰かと中学時代の話をすることはないので、私はいまだに少しだけ孤独だ。

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