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『大脱出2』過酷すぎるドキュメンタリーに吉本芸人が呼ばれないワケ

クロちゃん

 DMM TVで配信されている『大脱出2』が話題だ。8日までに最終話までが出そろい、今回も衝撃のラストを迎えている。

『大脱出』シリーズは、『水曜日のダウンタウン』(TBS系)などで知られるTBSのテレビディレクター・藤井健太郎氏が企画演出を務める過酷な謎解きバラエティ。昨年2月にシーズン1が公開され、今回の『大脱出2』はその第2弾となる。

 もともと、藤井氏の「クロちゃんを首まで埋めたい」という欲求から始まったという『大脱出』。前シーズンでは山中に埋められたクロちゃんだったが、今回は波打ち際の砂浜と、前回以上に命の危険を感じさせる場所に首まで埋められていた。

 そのほか、芸人が2人ずつ部屋に閉じ込められ、与えられた条件を満たすことでそこからの脱出を強いられることになるのが『大脱出』のルールだ。

 出演者は、砂に埋められたクロちゃんのほかに、難題クイズを解かなければならない部屋に、さらば青春の光・森田哲矢と東ブクロ。コンビで閉じ込められたのはこの2人だけだ。

 部屋全体が微妙に揺れ動く中でドミノ倒しを命じられたのは、ウエストランド・井口浩之とお見送り芸人しんいち。10個のサイコロをすべて「1」の面でそろえなければならないとされた部屋には、トムブラウン・みちおとザ・マミィの酒井貴士、UFOキャッチャーで鍵のついたぬいぐるみをゲットしながら謎を解く部屋には、みなみかわときしたかの・高野正成が配置された。そのほか、各部屋の外を鉄仮面を装着した巨漢がウロウロしているという、スリリングなシチュエーションが用意されていた。それをバカリズムとバイきんぐ・小峠英二が別室からモニタリングするという設定も前シーズンを引き継いでいる。

 前シーズンから引き続きの出演となったのは、クロちゃんはもちろんのこと井口、みちお、しんいち、高野。おそらく目隠しをして連れてこられた芸人たちだが、アイマスクを外した瞬間に「これは『大脱出』だ」と悟って苦悶の表情を浮かべるのが最初の見どころとなっている。さらばは前シーズン不参加だが、唯一前回と同じ難題クイズの部屋が用意されていたことから、こちらもすぐに現状を悟っていた。

 普段は東ブクロにひどいドッキリを仕掛ける側である森田が、珍しく仕掛けられる側に回って必要以上にイラついている姿も印象的だった。そのほかの部屋でも、難題を前に互いに不満をぶつけ合う様子が独特のヒリヒリ感を生んでいた。

 キャストはいずれも『水ダウ』でお馴染みのメンバーだが、『大脱出』には吉本所属の芸人がひとりも参加していない。

『大脱出』の演出プランのひとつに、閉じ込めた2人を「本気で険悪にさせる」というものがあるはずだ。本気で険悪になった2人が力を合わせて脱出するからこそ、そこにはカタルシスが生まれるのだ。

 おそらくは、吉本芸人では、この「本気で険悪」の空気が作りにくいのだろう。数多くの劇場出番で共演し、いわゆる「オン」での関係性はすでに成立してしまっている。また、いまだに先輩・後輩という縦の関係に固執する集団であるため、共演経験が少なくても関係性が崩れることがない。呼ばれればそれをやるだろうが、そこにリアリティが生まれにくいのだろう。

 テレビの現場では吉本芸人たちが舞台で作ってきたくだりによる集団芸が大きな武器になることがある。『大脱出2』に集められたのは、そんな吉本のくだりが発動したときに蚊帳の外に置かれる芸人たちだ。

 さまざまな意味で「テレビではできない」企画だった今回の『大脱出2』だが、そんなキャスティングの妙に思いを馳せながら見てみるのもおもしろいかもしれない。

(文=新越谷ノリヲ)

新越谷ノリヲ(ライター)

東武伊勢崎線新越谷駅周辺をこよなく愛する中年ライター。お笑い、ドラマ、ボクシングなど。現在は23区内在住。

n.shinkoshigaya@gmail.com

最終更新:2024/05/09 19:00
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