日刊サイゾー トップ > その他 > ウーマン・ウェジー  > 再現VTRみたい…アレンジがダサい、役者も演出もしょぼい!/『あなたのことはそれほど』第一話レビュー
【messy】

再現VTRみたい…アレンジがダサい、役者も演出もしょぼい!/『あなたのことはそれほど』第一話レビュー

『逃げるは恥だが役に立つ』『カルテット』と連続で話題作品を送り出してきたTBS火曜22時枠の今期連ドラは、『あなたのことはそれほど』です。はい、出ました不倫ドラマ。しかもダブル不倫。まあ確かにそこで描かれるのは二組の夫婦で、渡辺さんちの奥さんと有島さんちの旦那さんが何度もセックスするんで不倫なんですけど。コミックス1巻の表紙帯にも「底無しのW不倫」て惹句が躍るし。でもこの原作マンガは、読み返すたびにウッてなる恐ろしい作品(もう何もかもどうでもいいや~って虚無感に襲われます)で、ドロドロ不倫を面白がる系ではないんですけどね。

原作のウツポイント。愛されてないのに不倫相手を「運命の恋」だと信じる主人公には親友の忠告など一切響かない。その妻に実母の面影を重ね執着する男の愛し方がキモい。家庭に不満がないのにうっかり外でセックスしちゃう新米パパの油断と、不倫相手に大した恋愛感情はないうえ性欲や孤独感がセックスに直結してる感じもしない奇妙さ。冷静で思慮深く良き妻・良き母(というか良き人間)であるサレ妻の思考回路が全然読めない。地味に途中参戦する「ママ友」家庭は超鬱ですし。そんな読んでてツラくなる原作マンガが私は好きで、次巻が出るのをいつも楽しみにしているのですが、でも今回のドラマ化に期待は持てませんでした。

駅などに貼ってあるポスタービジュアル(メインキャラ4人と赤いリボンのデザイン)がまずダサい! いかにもコッテコテの不倫ドラマに仕上げる気満々なことが見る前から伝わります。配役もどういう都合なのか知りませんが明らかにミスマッチ。波瑠さんは陰キャなルックスの「不倫される妻」役の方が明らかに似合っているし、仲里依紗さんはヒロインの友人くらいのポジション(大政絢か黒川智花とチェンジ)が良いのでは? 無邪気で自己中心的でそこそこ可愛くてワガママなヒロインには、他に適役と言えるアラサーの女優さんがたくさんいると思うんですが(ex.石原さとみ、長澤まさみ、真木よう子etc)。ヒロインが夢中になるイケメン役に劇団EXILEの鈴木伸之というのも、あまりにも「いくえみ男子」をナメてるような……。

第一話の冒頭で確信しました。このドラマは「ダブル不倫とキモい夫」という素材を提供してもらっただけなんだと思います。ドラマはあくまでもドラマ作品、詳細を説明しなくても巧みなモノローグや会話や登場人物の視線で読者を揺さぶる原作のようには作らないと決めているに違いない。原作冒頭は初恋の男と再会した主人公が浮かれセックスでとばしまくるのですが、ドラマ第一話では時系列に沿ってヒロインが夫と出会い結婚するまでが長々と描かれました。これがまあ、ありきたりなエピソードの連発でとにかくつまらなかったのです……!!!!!

◎初恋相手との不倫セックスは「どうしようもなく幸せ!」

主な登場人物は、4人。波瑠が演じる主人公の渡辺美都(みつ)は、眼科クリニックで医療事務として働く20代後半の女性。彼女に一目惚れした朴訥で誠実なサラリーマン渡辺涼太(東出昌大)は、誰もが認める「いいひと」ですが、美都は涼太にときめきを覚えません。膣キュンしないわけですね。それでも優良物件なので妥協して交際し、占い師の「二番目に好きな相手と結婚すればうまくいく」という言葉を決め手に結婚。二番目どころか、好き度超低そうなんですけどね。夫のことをカースト下位の人間として見下している感じがするほどね。元カレに抜かされて十番目くらいだろ。

もう一組の夫婦は、美都の小中学校の同級生で初恋の相手である有島光軌(鈴木伸之)と有島麗華(仲里依紗)。光軌は中学時代から顔がカッコ良くて運動神経も良くモテるタイプ、高校からはそれを自覚したのかチャラくなり大学でもモテているというモテエリート。ただのサラリーマンですが。妻の麗華とは高校の同級生で、名前負けの地味顔で根暗な印象を与えがちな彼女に惹かれるものがあり交際、結婚。現在、妻は妊娠中という状況です。

第一話は、美都が友人の香子(大政絢)と一緒に友人の結婚披露宴と二次会に参加して「運命の人と結婚したーい」と嘯くところから始まり、「いいひと」涼太に好かれて付き合ってときめかないけど結婚して、そんなある夜に有島くんと偶然再会しハンバーガーショップ→バー→ラブホテルという急展開に美都が運命を感じて「どうしようもなく幸せ!」と膣キュンしまくるところでおしまい。そりゃ幸せですよね~。が、時系列で説明していく流れが退屈。また、ところどころに美都の中学時代の回想が入るのですが、これが失礼ながらバラエティ番組の再現VTRかな? っていうほどダサい出来栄えで衝撃を受けました。

しかもドラマ化で省かれた重要なシーンがあります。中学時代の初セックスです。美都は小6のときに転校してきた有島くんに一目惚れし、中学でもどんどん一方的な「好き」を募らせ目で追っていました(原作では有島くんがそれを気持ち悪がる描写があります)。ある晩、家に母親が男を連れ込んでいるため、公園で時間をつぶしていた美都と偶然会った有島くんはちょっと会話をし、さらに美都は(母と男が外出したのを見計らって)有島くんを自室に招き入れて……原作ではセックスするんですね。美都は一方的な恋愛感情で、有島くんは思春期の性的好奇心で。でもドラマでは、ヤろうとした有島くんを美都が思わず拒み、二人は何もヤらずじまいでした。キスシーンすらない。大好きな初恋の彼が、付き合ってはいないけど初セックスの相手である、ということが、美都が「有島くんとの運命」を信仰する大きな要因となってるのにもかかわらず、です。そりゃ中学生が「ヤリました」とわかるような描写を、地上波放送の連ドラに入れられないかもしれませんが、完全に省いたら二人の微妙な関係性がさっぱりわからなくなります。ただのクラスメイトじゃないですか、これ。

◎山崎育三郎が背負う期待

再現VTRもショックでしたが、仲里依紗が演じる本妻・麗華のキャラクターがもしかしたら原作と全然違って凡庸なフツーの女性なのかも……というところもショックでした。原作では、あからさまな不幸顔で描かれ、家庭の事情が複雑で高校生ながら家事を一通りこなし妹の面倒を見、アルバイトで生活費を稼ぎ貧乏家計を助けるアダルトチルドレン的な麗華。高校卒業後は役場に公務員として勤務する堅実なしっかり者(2巻の登場人物紹介では「結婚して専業主婦」となっていたが3巻の同欄でその記述がなくなり、4巻では「育児休暇中」にステータス変更されていた)。受動的に見えるルックスなのにしっかり者で主体的、クールで達観していて、モテるであろう夫を独占欲で縛りつけようともせず、しかし勘が鋭い女性です。有島くんは彼女にベタ惚れです。傍からは、「明るく爽やかなイケメンの夫と陰気で不美人な妻」の意外なカップルとして認識されている夫婦です。

しかし、登場時間は短かったものの、ドラマの麗華は思慮深さとか落ち着きとか陰気な第一印象とか、そういうものが一切なかったように思います。たとえば最初の登場シーンで、「焼肉? 誕生日はホテルで奮発って言ってたじゃない」と夫に不満を漏らすところ。“焼肉”はこの夫婦の重要なキーワードでして、高校時代に麗華がバイトしていた焼肉屋を有島はよく訪れていたんです。だから「また焼肉?」という意味……かもしれないのですが、麗華はそんなキャラクターだったかしら、と。もうひとつは、吉祥寺駅前で夫婦が待ち合わせをしていて、お互いを見つけ笑顔で大きく手を振りあうところ。付き合いたてのカップルか? まあ、原作とドラマは別物なのですから、キャラ設定も変更されている可能性はありますが、あの“デキた妻”は作品において非常に大切な存在のはず。フツーの妻で、説得力でるんでしょうか。

ところでいつも「棒」と揶揄されている東出昌大さんの演技が今回の役は「合ってる」「気持ち悪くていい」と好評ですが、確かに何を考えているのかサッパリわからない、闇を抱えた気持ち悪い人間の役は、抑揚のないしゃべりと無表情にマッチ。妻のスマホを盗み見たり、妻への執着が強すぎるところなどが「第二の冬彦さん!」と期待されているようですので、ドラマ制作側もそうした方向で話題になることを狙って作っているのかもしれませんね。そういえば「既婚者たちの恋愛が始まる!?」と煽る次回予告で、美都と有島くんが一泊二日不倫旅で泊まる温泉旅館が、『奪い愛、冬』で使われた熱海の旅館と同じでした。海の見えるヒノキの貸切露天風呂。なんかしょぼいです。

原作厨がうるさくてごめんなさいね。原作は「既婚者たちの恋愛」を描いてるわけじゃないというか、美都と有島くんの間に「恋愛」があるようには見えないんです。美都はガチ惚れだけど有島くんにとって彼女はちょっと可愛いだけのどうでもいい女。お互いを激しく求め合うような不倫じゃないところが現実的で素敵です。美都はイケメンに求愛されないし、イケメン2人に取り合われたりしないし、とりあえず浮かれてセックスするし、ありがちな純粋系ヒロインではありません。そのいかにも「バカ」な女としての描かれ方は、絶賛不倫中だった日本全国の女性読者の目を開かせる威力があるんじゃないでしょうか。つまりいくらでも面白く料理できる素材なのに、なんでこのアレンジなんでしょう?

「ダブル不倫」という題材だけをもらって、原作の乾いた雰囲気は全くない『あなたのことはそれほど』。第二話を見るのが憂鬱になるくらい、魅力を感じなかった初回75分(長っ!)でしたが、その中で一番「おっ!」と思ったのは、涼太の同僚で親友のポジションとして、山崎育三郎が出演していることでした。気鋭のインテリアデザイナーの役で、講演会とかに出ちゃう人気者。スタイリングも含めて、前の月9(『突然ですが、明日結婚します』)と同じ役で出てるのかと思うほど、そのまんまソックリな役でした! しかもその役、原作には登場しないドラマオリジナルですからね。陳腐で無難に進行しそうな不倫ドラマを引っ掻き回すキーパーソンになってくれたらめちゃくちゃうれしい!!!! 育三郎に期待!

(ドラマ班:下戸)

<そのほかのドラマレビューはこちら>

▼母になる

▼人は見た目が100パーセント

▼ボク、運命の人です。

最終更新:2017/04/20 07:10
ページ上部へ戻る

配給映画

トップページへ
日刊サイゾー|エンタメ・お笑い・ドラマ・社会の最新ニュース
  • facebook
  • twitter
  • feed
特集

【4月開始の春ドラマ】放送日、視聴率・裏事情・忖度なしレビュー!

月9、日曜劇場、木曜劇場…スタート日一覧、最新情報公開中!
写真
インタビュー

『マツコの知らない世界』出演裏話

1月23日放送の『マツコの知らない世界』(T...…
写真
人気連載

『24時間テレビ』強行放送の日テレに反省の色ナシ

「愛は地球を救う」のキャッチフレーズで197...…
写真
イチオシ記事

バナナマン・設楽が語った「売れ方」の話

 ウエストランド・井口浩之ととろサーモン・久保田かずのぶというお笑い界きっての毒舌芸人2人によるトーク番組『耳の穴かっぽじって聞け!』(テレビ朝日...…
写真