【官能小説】セミダブル千夜一夜/第一夜 海に向かってオナニーする王様
しぇー子とは、友人の作家の出版記念パーティで初めて会った。奥二重で切れ長の目の上に大きく垂れた下がり眉がすごく俺のタイプだったので、友人にせがんで紹介してもらって一所懸命話しかけ、なんとか二人で飲みに行く約束を取り付け、そしてなんとか今夜、俺の一人暮らしの1DKに連れてくることができた。しぇー子というのは変な名前だがもちろん本名ではなく、何かというと「しぇー」というのが口癖なのでそう呼ばれるようになったとのことだった。その「しぇー」は、あの有名赤塚キャラの放つテンション高めの「シェー!」ではなく、厚めの濡れた唇から吐息交じりで漏れるような「しぇー」だったので、飲み屋での会話の中で、初めてそれを聞くことができた俺は、それだけで軽く勃起した。
家に着き、寝巻き代わりに Tシャツとスウェットを渡すと、しぇー子はバスルームに着替えに行き、やがて、それまで着ていた服を抱えて出てきた。Tシャツに描かれたバンドのロゴがしぇー子の大きな胸に乗っかって、ゆがんでいた。しぇー子は軽く畳まれた自分の服を、入ってきたときに部屋の隅に置いたトートバッグの上にぽん、と乗せ、そして、俺の仕事場兼寝室である部屋の半分を占めるセミダブルベッドの、シーツの間にその体を滑り込ませた。枕の上に広がった髪の匂いが俺の鼻に届いた。すでに自分もスウェットに着替えていた俺は、反対側からシーツに潜りこむと、そのまましぇー子に覆いかぶさりキスをした。唇を離したとたん、そこから「しぇー」という声が漏れた。Tシャツの上からしぇー子の胸をまさぐった。Tシャツ越しに乳首の形がわかった。
途端に、しぇー子は、俺の手を払いのけると、自分の胸を手でかばい、「だーめ。」と言った。かまわずその手の下に、俺の手をもぐりこまそうとするが、しぇー子のその軽い口ぶりにそぐわず、胸の前でクロスした腕の力が存外に強い。
「え、なんで?」
「だって、笹王さんとは、そういう関係じゃないでしょ?」
「今からそういう関係になろうかと。」
「うーん、そういうことも今後あるのかも知れないけど、今日はだめ。」
「えーじゃあなんで今日うちに来たの?」
「眠かったし、家帰るの面倒だったから。あと、笹王さんの家に興味あったし。」
「俺には興味ないの?」
「あるよ、もちろん。」
「じゃあ。」
「だめだってば。」
「キスはいいの?」
「いいってわけじゃないけど、いきなりされたから。」
俺の手はしばらくしぇー子の体の上をさまよったが、しえー子の体は抵抗し続けた。俺は諦めて、しぇー子から体を離した。
「わかった。今日はいいや。寝よう。」
「怒った?」
「怒ってはないけど。無理やりするのもやだし。」
「ごめんね。おやすみなさい。」
「おやすみ。」
怒ってない、という意思を表明するために、俺はしぇー子にもう一度軽いキスをした。今度は「しぇー」は出なかった。俺はしぇー子の隣に自分の体を横たえ、目をつぶった。
しばらくして、しぇー子が矢庭に「ねえ、お話、して。」と言った。
「お話?」
「うん、なんでもいいから。」
「眠いんじゃなかったの?」
「目、覚めちゃった。さっきので。」
「じゃあ。」しぇー子の体に手を伸ばすが、「それはダメ。」とブロックされ、「笹王さんのお話聞きたい。」となおも言われた。
俺は少し苛立った。この女は明らかに俺を翻弄しようとしている。怒ったほうがいいのかもとも思ったが、しぇー子の下がり眉を見て、自分に怒る気が全くないのにも気づいた。
「お話かー。」
俺は、半ばヤケクソのような気持ちになり、その場で考えたデタラメな話を語り始めた。
昔、ある国に、とても性欲の強い王様がいました。美しい愛妾が何人もいて、王様は毎日、彼女たちの部屋を渡り歩いてその体を求めました。しかし、全ての部屋をまわって、全ての愛妾を抱いても、王様のペニスは全く衰えることがありませんでした。王様はそんな自分の性欲を持て余していました。
ある日王様は、いつものように愛妾たちの部屋をまわり、最後の愛妾の部屋を出ると、海に面した城郭の上に立ちました。王様の城は岬の端にあり、青い海が見渡せました。先ほど射精したばかりだというのに王様のペニスは、ズボンの中でもうパンパンに怒張しています。王様は何を思ったかズボンを下ろすと、屹立したそれを取り出し、海に向かってゆっくりしごき始めました。青い海を背景に、王様の黒ずんだペニスがどんどん赤みを増していきました。夕刻も近い時間でしたが空もまだ青く、たまに吹いてくる潮風に上等のサテンのマントがなびき、王様の亀頭を撫でました。
その海には女の人魚がたくさん棲んでいました。岬の先端で王様がしていることの噂はたちどころに海中に広がり、人魚達がそれを見に来ました。
初めに見に来た人魚はまだ若く、胸のあたりまで伸びた黒髪をなびかせて泳ぐ美しい人魚でした。その人魚は海面まで泳いでくると、恐る恐る顔を出しましたが、精悍な王様の姿と、その手に握られた、逞しく反り返ったものの正体を捉えると、びっくりして一度海中に顔を沈めました。でも、しばらくすると頬を赤らめながら再び半分だけ顔を出し、うるんだ目で王様の姿をうっとりと眺めるのでした。
いつの間にか何人かの人魚が岩礁に座って見ていました。人魚達の目は一様にうるんでおり、ついたまらず自分の乳房を指でまさぐり始めるものもいましたし、隣の人魚の体に手を伸ばして愛撫を始めたり、人魚同士で接吻し始めたりするものもいました。人魚達の息が荒くなり、口から声が漏れ始め、疼きに我慢できず手が自分の下半身に伸びるものもいました。しかし、人魚達のへそから下はそのままつるりと魚の形になっているので、伸びたその手はうつろに鱗を掻きむしるだけなのでした。それでも、人魚達は次第に昂ぶっていきました。人魚たちの吐息は潮風にのり、海面を伝って、王様のペニスまで運ばれると、その裏側に暖かくまとわりついて、湿り気を与えるのでした。
やがて岩の上の人魚のひとりが、「…あっ」という声とともに、びくんと体を痙攣させたかと思うと、体の下方に小さく穿たれた肛門から、勢いよく卵を噴出させました。はしたない音とともに大量のオレンジ色の粒がその穴から流れ出し、岩肌を伝って海にこぼれ落ちていきました。人魚は産んでいる間、びくん、びくん、と幾度か小さい痙攣を繰り返しましたが、やがて卵の最後の一粒をぷるっと絞り出すと、静かになりました。そして、そのまま力尽きて岩の上からずるっと滑り落ち、海にぽちゃん、と沈んでいきました。
それに続くように、大小さまざまな絶頂の声とともに人魚達が次々と痙攣し、産卵しました。海中に散りばめられたオレンジ色のドットが、ゆっくりと下降していく中、満足げな表情を浮かべた人魚たちの影も次々と沈んでいきました。岩の上に最後に残された人魚は、ずっと高まってはいたものの、なかなか産卵には至りませんでした。彼女は岩に左手をつくと高く腰を突き上げ、右手の中指を口に差し入れると、ゆっくりと引き抜きました。そして腕を伸ばして、熱い唾液が絡んだその指を自らの肛門に当てると、ずぶりと沈めました。そして遠くにある王様の顔を見据えたまま、内壁の凹凸を確かめるように、指でなぞり、捏ね回しはじめました。「あっ、あん、あんっ」という喘ぎ声が大きくなるのに呼応するように指の動きも大きくなりましたが、やがて「ああ〜っ」という声とともに、背中が大きく反るのと同時に、尻尾の先がピーンと直立し、肛門から指がスポッと抜けました。そしてそこからひときわ濃いオレンジ色の卵がドボドボと流れ出し、その人魚も倒れ込むように海中に沈んでいきました。
王様の昂りも頂点を迎えようとしていました。そして手の動きは早くなっていきましたが、一瞬ぎゅっと、震えながら握りしめるような形でそれが止まり、それと同時に、赤黒く張り切った亀頭の先端から、白濁した液体が弧を描いて飛び散りました。それはまるで白く輝く真珠の粒のようになって、海面に降り注ぎました。青い海の中、白い粒とオレンジの粒がきらめきながら混じり合い、融合していきました。
射精が済んでも、王様はまだペニスをこすり続けていました。人魚の吐息が混じった潮風はまだ肉茎にぬるぬると絡みついているようで、それが乾く間を与えないようにも思えました。その滑りが上下する手の動きをなおも早め、王様はなにかに憑かれたようになって、赤黒く光るそれをこすりつづ続けるのでした。
「ああ…、ああ〜っ…」王様の口から、まるで女のような声が漏れ始めました。いままで体験したことのない快感の波が訪れようとしているのを王様は感じていました。日がそろそろ落ち始めていて、西の空も朱くなり始めていました。海は潮が満ちていき、人魚が乗っていた岩礁も、波に洗われながらその姿を沈めていきました。
そしてとうとう、「うっ」という声とともに、王様のペニスから、透明な飛沫が噴出しました。いわゆる「男の潮吹き」です。その飛沫は霧のように海上に舞ったかと思うと、夕暮れの垂れ込めた空気の中にたちまち消えていき、王様は放心したかのように、下半身を露出させたままその場にぺたん、と腰を落としたのでした。肉棒のさきから粘り気を持った最後のひと雫が、上等のマントのうえにゆっくりと滴り落ちました。
語り終え、しぇー子の顔を見ると、寝息を立てていた。俺も話し疲れて、しぇー子の肩だけ軽く抱いた形になると、そのまま眠りに落ちた。
朝起きると、隣にしぇー子の姿はもうなかった。バッグも消えており、ベッドの横に、俺が貸したTシャツとスウェットが綺麗にたたまれて置いてあった。朝だからということもあったが、俺のペニスは屹立していた。そのままオナニーして、そのあと 二度寝した。
--続く--
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