痴漢被害を軽く見積もってはいないか? 痴漢は暴力行為であり、エロではない
痴漢を疑われた男性が逃走し、死亡する事故が相次ぎました。
■5月12日
JR京浜東北線の電車内で痴漢を疑われた40代の男性。痴漢被害を訴えた女性と東京都・上野駅で下車し、事務室に向かう途中に逃走。その後、近くの雑居ビル脇で倒れているのを発見され、病院に運ばれたが死亡が確認されました。ビルから飛び降りたと見られています。
■5月15日
東急田園都市線で痴漢容疑で取り押さえられた30代の男性。横浜市・青葉台駅の線路内に降りて逃走中、電車に轢かれ死亡しました。
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これらの事件を受けて、<痴漢冤罪の恐怖>を訴える声がSNSで大きくなっています。しかし痴漢冤罪が発生するのは、痴漢加害がそこにあるからです。痴漢の加害者がいなければ、被害者もいません。痴漢はすべての鉄道利用者の敵と言えます。女性専用車両の増設、男性専用車両の提案、痴漢逮捕および冤罪を防ぐための監視カメラの導入などなど、対応策の議論も出ており、それらのうちで実現可能なものは充分な検討のうえ鉄道各社が実施していく必要があるでしょう。
また、尋常でない混雑状況の車両だけでなく、比較的空いている車両でも痴漢被害は発生することも付記しておきます。私が何度か痴漢を捕まえたときは、いずれもそこまで車内が混雑していませんでした。
▼痴漢現場をスルーしてはいけない。電車内痴漢行為と逮捕の一部始終
性器を露出して押しつける、体液をかける、相手の衣服の中に自分の体の一部を侵入させる……そうした悪質な痴漢加害行為はもってのほかですが、「服の上からちょっと触るくらいいいだろう」「お尻を撫でただけで逮捕なんて」と、痴漢被害を軽く見積もっている人も世の中にはいます。痴漢被害に遭った人間は、「不快」どころではありません。心身ともに深く傷つき、乗車に恐怖心を覚えたり、人間不信に陥ってしまうことさえあります。でも、痴漢被害で人間不信に……と聞いて、「そんな大袈裟な」と言う人もいるんですよ。あるいは、満員電車に乗らざるを得ない被害者に対して、「満員電車を避けたら?」と“アドバイス”する人もいる。「抵抗しなさそうに見えるから。強くなりなさい」と“励ます”人もいる。このように被害者に注意を促すことが、自動的に痴漢を許すことになってしまっていると気付いてください。
■痴漢、ただただ気持ち悪い
痴漢行為が加害であると気付かずに、「ちょっとエッチな遊び」程度の歪んだ認知を持っている加害者もいます。痴漢をエロとして表現するのは、映像・書籍ともにファンタジー作品だからです。現実には、痴漢はエッチな行為ではなく、残虐な暴力行為と変わりありません。昨年10月に起きたある痴漢事件は、加害者が犯罪行為である痴漢を「エロいプレイ」と勘違いしていたことを示唆しています。
昨年10月、京王相模原線で、およそ10分間にわたって痴漢行為をした20歳の男が逮捕されました。加害者は、女性の背後から手を入れて胸を触り、さらには女性の手を掴んで自分の下半身を触らせました。この被害者女性は駅員に突き出すため、男性の腕を掴み「次の駅で降りましょう」と言い、男性はすんなり従って駅で一緒に下車しました。そして女性は駅員に「痴漢です」と突き出し、現行犯逮捕となったわけです。驚いたことに加害者は、逮捕されるとは思わず、「(女性と)別の場所に行くと思った」から、騒いだり否認したりせずに下車したのだそうです。痴漢行為によって見ず知らずの女性が“その気”になり、ラブホテルに誘ってくれた、と期待したのでしょうか。
いつでも、誰が相手でも、スイッチを押されれば(胸や尻、股間を触られる)、女性がその気になるとでも? 男性だって好みの女性からアプローチされたならともかく、見ず知らずの女から強引に迫られたとして、そんなに都合よく心身が反応するとは限らないのではありませんか。そもそも、自分が許可していない相手から、突然性的に扱われるなんて恐怖です。痴漢からはじまる出会い、痴漢からはじまる恋、痴漢きっかけでセックスまでしちゃいました……それらはすべてファンタジーとして、脳内で処理しましょう。AVで楽しめばいいじゃないですか。“痴漢プレイ”がしたいならば、それは合意を得た相手とプライベート空間でする以外ありません。犯罪で欲望を満たさないでください。
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