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『殺人シッター』と呼ばれた男の長い起訴状

 未就学児を持ち働く親にとって、仕事の際の子の預け先は大きな課題だ。特に、土日祝日、夜間早朝など、一般的に認可保育園が対応していない時間帯に仕事をしていて、周りの家族友人の協力が得られなければ、24時間営業の保育園やファミリー・サポート、ベビーシッターという選択肢が浮上する。

 中でも、きめ細やかに時間的な要望に対応してくれるのはシッターではあるが、都心でシッティング業務を請け負う会社に頼むと、1時間あたりの料金が2000円~3000円程度かかることが一般的だ。そのため口コミや紹介による直接取引やマッチングサイトも存在している。こうした利用方法は、いくらか費用は抑えられるものの、リスクも生じてくる。

 もちろん、ほとんどが真面目にシッティング業務を請け負うつもりであるシッターであるのだが、中にはシッティング業務の動機が、幼児への特別な感情から、という人間も参入しやすくなるのだ。

 2014年3月に埼玉県富士見市で発生したベビーシッターによる2歳男児殺害事件。逮捕された物袋(もって)勇治は同月14日、山田龍琥(りく)君(2)とその弟を預かり、龍琥君を殺害したとして殺人罪に問われている。しかし物袋が問われている罪はこれだけではなく、多くの乳幼児に対する児童ポルノ禁止法違反や強制わいせつ等でも起訴されていたのだ。昨年6月に横浜地裁で開かれていた物袋に対する裁判員裁判の様子を、今回、連続してリポートしたい。

 なお、この一審では物袋に対し懲役26年の判決が言い渡されたが、これを不服として控訴しており、現在、事件は東京高裁に係属している。まだ裁判は確定していないことを心に留めながら読んでもらえれば幸いである。

 * * *

 物袋勇治に対する裁判員裁判の第一回公判は2016年6月10日、横浜地裁404号法廷(片山隆夫裁判長)にて開かれた。先に記した通り、罪名は殺人だけではない。開廷表の罪名欄には、保護責任者遺棄致傷、強制わいせつ、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反(児童ポルノ禁止法違反)、わいせつ誘拐、強制わいせつ致傷なども記されていた。被害に遭ったのはいずれも乳幼児である。身元が判明しているだけで9人。その他、児童ポルノ禁止法違反の被害者は、さらに多い。

 法廷に現れた物袋被告は大柄でがっちりしており、少し背中が丸まっている。坊主頭でぼんやりとした顔立ちが特徴だ。証言台の前に立った時の後ろ姿は、異様に右肩が下がっていた。朴訥とした印象を受けないこともない。

 起訴状の詳細な内容が検察官によって読み上げられたのち、物袋被告の罪状認否に続く。罪名が多いため、起訴状読み上げだけでかなりの時間がかかった。なお本裁判では被害者秘匿の措置が取られ、被害者の名は公開の法廷で明らかにせず、また被害者が特定されるような家族の名や地名も言わない。各被害者はA~Iまでイニシャルで呼ぶ、とまず宣言があった。読み上げられた起訴状の概要を記す。なお分かりやすさ重視のため、起訴状をそのまま記したわけではない。

多すぎる罪

・氏名不詳男児達多数対する児童買春・児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反(=児童ポルノ禁止法違反)

 被告人は平成24年11月16日〜平成25年8月9日頃まで、埼玉県、神奈川県、またはその周辺において、別表1〜12までの氏名不詳の男児が18歳未満に満たないと知りながら、衣服を脱がせてから陰茎を露出させ、それをデジタルカメラで撮影し、画像データ162点をPCのハードディスクに保存した

・D(1歳女児)、E(5歳男児)に対する強制わいせつ、児童買春・児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反(=児童ポルノ禁止法違反)

1:被告人はD(1歳)が13歳未満の女児と知りながら、平成24年11月25日、神奈川県内で衣服を脱がせ裸にして陰部を露出させデジタルカメラで撮影し画像データ3点をPCのHDDに保存しもって児童ポルノを製造した。

2-1:被告人はE(5歳)が13歳未満の男児と知りながら、平成24年11月25日頃、神奈川県において全裸にし、口をガムテープで塞ぎ、両手首を紐で縛り緊縛し、陰茎や陰嚢を強く触り紐様のものを巻き付け緊縛したのち、陰茎の包皮をむき、亀頭部をことさら露出させデジタルカメラで撮影し、画像データ41点をPCのHDD内に保存した。

2-2:平成25年3月31日頃、神奈川県内において同人に対し衣服を脱がせて陰茎を露出させそれを撮影し、同年4月19日頃画像データ8点をPCのHDD内に保存した。

3:同年4月21日頃、神奈川県内で同人に対し衣服を脱がせて裸にして陰茎を露出させそれをデジタルカメラで撮影し、画像データ9点をPCのHDD内に保存した。

・F(2歳男児)、G(4歳男児)に対する強制わいせつ、児童買春・児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反(=児童ポルノ禁止法違反)

1:被告人はF(2歳)が13歳未満の男児と知りながら平成24年11月29日頃、埼玉県、神奈川県、またはその周辺において、下半身を裸にさせ陰茎を露出させデジタルカメラで撮影し、さらに同人を裸にし、陰茎を露出させ、デジタルカメラで撮影し、画像データ6点をPCのHDD内に保存した。

2:被告人はG(4歳)が13歳未満の男児と知りながら平成24年12月20日頃、埼玉県、神奈川県、またはその周辺において、同人を全裸にさせ陰茎露出した姿態をとらせ、それを携帯電話のカメラで撮影し、さらに裸の同人に、陰茎や陰嚢に紐を巻き付け緊縛し、陰茎を露出した姿態をとらせ、携帯のカメラで撮影し、画像データ15点をPCのHDD内に保存した。

・H(3歳男児)、I(1歳女児)に対する強制わいせつ、児童買春・児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反(=児童ポルノ禁止法違反)

 被告人はH(3歳)が13歳未満の男児と知りながら、

1-1:平成24年12月13日頃、埼玉県、神奈川県、またはその周辺において、同人の衣服を脱がせ全裸または下半身を裸にし、陰茎を露出させデジタルカメラで撮影し画像データ12点をPCのHDD内に保存した。

1-2:平成25年1月3日頃、埼玉県またはその周辺に停めた車内において下半身裸の同人の口にガムテープをまきつけ緊縛し、手指で足を開かせ陰茎を露出させこれを撮影し、画像データ4点をPCのHDD内に保存した。

1-3:同年4月10日頃、埼玉県、神奈川県、またはその周辺において、同人の目や口、両手をガムテープで緊縛して全裸にした同人に陰茎を露出した姿態をとらせそれを撮影し、画像データ11点をPCのHDD内に保存した。

2:被告人はI(1歳)が13歳未満の女児と知りながら同年8月23日頃、東京都内またはその周辺において、全裸にし両足を開かせデジタルカメラで撮影し、画像データ10点をPCのHDD内に保存した。

・C(生後8カ月男児)に対する強制わいせつ致傷、児童買春・児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反(=児童ポルノ禁止法違反)

 被告人はC(生後8カ月)が13歳未満の男児と知りながら平成25年3月10日、都内でオムツを下げて同人の陰茎を露出させ包皮をむき、ことさら露出させケータイのカメラで撮影しデータ12点を電話の記録装置に保存したうえ、Cに全治5日間の外傷を負わせた。

・A(2歳男児)、B(生後4カ月男児)への強制わいせつ、児童買春・児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反(=児童ポルノ禁止法違反)、わいせつ誘拐、またAに対する殺人

1:被告人はB(生後4カ月)が13歳未満の男児と知りながら平成25年、埼玉県、神奈川県またはその周辺において下半身を裸にし陰茎を露出した姿態をとらせ携帯で撮影し、データ6点を携帯に装着したマイクロSDカードに保存した。

2:被告人はA(2歳)が13歳未満の男児と知りながら同年10月27日頃、埼玉県神奈川県またはその周辺において同人の衣服を脱がせ全裸にし陰茎を露出させカメラで撮影し、埼玉県神奈川県その周辺において静止画データ23点をカメラのSDカードに保存した。

3:被告人はA(2歳)、B(8カ月)らをわいせつ目的で、平成26年3月14日、Aらの母が被告人にAらの一時保育を依頼する意志がないのにそれを引き受けるとメールを送信し、Aらの母に、被告人が面倒をみることがないと誤信させ、同日19時頃磯子区内において、Aらの母が男性(Xとする)にAらを預け、横浜駅で被告人がAらをXから引き取り、埼玉県の当時の被告人方に連れ帰り、もってわいせつ目的でA、Bを誘拐し、

 Aが13歳未満だと知りながら15日、被告人方においてAの陰茎を紐で縛りもってわいせつ行為をしたのち陰茎を口淫しもって男児に強いてわいせつな行為をした。

4:同日被告人方でAに殺意を持ち、鼻孔部を手で塞ぎ鼻孔閉鎖による窒息を生じさせ殺害した。

・前記Bに対する保護責任者遺棄致傷

 被告人は平成26年3月14日、前記XからBを引き取り埼玉県内の当時の被告人方へ連れ帰り、同年3月16日13時から17日の20時15分まで、Bが生後9カ月の乳幼児と知りながら、ミルクを与えるなどの保護者としての責任があるにもかかわらず、1日ほど被告人方において前記Bにミルクなどの栄養を全く与えず、生命を危険に晒し重度の低血糖という傷害を負わせた。

わいせつ行為の意図について否認

 あまりに多い罪状。分かりづらいが、上記のAは龍琥君で、殺人行為があったとされる日時に物袋被告は、龍琥君の弟(B)も一緒に自宅で預かっていた。

 続いて罪状認否に続く。裁判長がひとつひとつ確認をしながらゆっくりとすすめた。全体として「児童ポルノの製造は認めるが、わいせつ行為については性的な意図がなかった」として否認。龍琥君、B君の事件については、母親に対して、別人を装い保育を引き受けるメールを送ったことは認め、母親を誤信させたことも認めた。

 わいせつ誘拐については「わいせつ目的で連れ帰っていない」と否認。龍琥君の陰茎を紐で縛ったが口淫はしていないと主張。殺人については「殺害はしてません」、B君への保護責任者遺棄致傷については「保護はしていました」と主張。低血糖の傷害を負わせたことについては「分からないです」と述べた。

 これを引き受けて弁護人も同様に大部分を否認した。全体として行為にわいせつな目的はなかったという主張だ。しかし児童ポルノ製造のみは認めていた。

 生後数カ月程度から5歳程度までの男児女児の淫部を撮影していたうえ、男児であれば陰茎に紐を巻きつけたり口淫したことは概ね認めているが、そうした行為には性的な意図がなかったという主張だ。認否を聞いた時、さすがにこれで性的な意図を否定することは難しいのではないかと感じたが、物袋被告は以降の公判でも同様の主張を繰り広げた。さらに龍琥君の殺害や、弟のB君への保護責任者遺棄致傷についても否認。一般的に裁判は、否認すれば争点も多くなり長期化する。長い審理が始まった。この日の初公判も10時から17時半まで続くことになる。

最終更新:2017/07/16 07:15
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