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引き渡し時、子供は「いやだー」「こわいー」涙をボロボロ流して泣いた/殺人シッター公判

 2014年3月に埼玉県富士見市で発生したベビーシッターによる2歳男児殺害事件。逮捕された物袋(もって)勇治は同月14日、山田龍琥(りく)君(2)とその弟を預かり、龍琥君を殺害したとして殺人罪に問われている。しかし物袋が問われている罪はこれだけではなく、多くの乳幼児に対する児童ポルノ禁止法違反や強制わいせつ等でも起訴されていた。昨年6月に横浜地裁で開かれていた物袋に対する裁判員裁判の様子を、連続しリポートしていく。

▼第一回:『殺人シッター』と呼ばれた男の長い起訴状
▼第二回:2歳男児はなぜ死亡したか 真っ向対立した検察側・被告側の主張
▼第三回:乳幼児を預かるために被告人が画策した計画と、母親が夜間保育を必要としていた事情

 第3回公判では龍琥君とその弟B君へのわいせつ誘拐、B君への保護責任者遺棄致傷についての審理が行われた。先述の通り、龍琥君とB君は2014年3月14日、埼玉県富士見市にあった物袋宅に預けられ、そのときに龍琥君は死亡し、B君は適切な保育を受けることができず重度の低血糖に陥った。これについて物袋は、龍琥君を殺害してはいないと否認し、B君についても保護はしていたと主張している。

 龍琥君とB君の母親(以下、母親とする)の尋問は続いた。母親は、事件当日に子供を引き渡した「つなぎのシッター」Xに過去、一泊で兄弟2人のシッティングをお願いしたことがあった。

母親「Xはすごくよかった、事細かく報告してくれて写真を送ってくれたりしました。契約の時も、保育園で働いているなど資格を持っていることを電話で説明受けたうえ、会った時もきちんと話してくれた。(X宅から)子供達はすごく楽しそうに帰ってきました」

 すごく良いと思ったシッターには継続してお願いしたいと思うものだが、母親はそうしなかった。できない事情があったのである。

母親「Xさんに預けたのは一度だけです。次男の夜泣きがうるさいと(Xさん宅の)近所の人に言われて預けられなくなりました。次男は預かれないと言われました。実際夜泣きはひどく、声は大きくて、2時間おきに泣いたりしていました」

 そして事件当日、物袋がなりすました別人のシッター(女性だと偽っていた)に子供を引き渡すために駅で待つ母親は、Xに会った。Xは「他のシッターの依頼を受けている。山本さんという人」と言っていた。だが母親とXが駅で30分待っても、“山本さん”は来ない。

 母親が別人のシッター(本当は物袋ということをこのときまだ知らない)にメールを送ると電話番号が送られてきたので、その番号にかけると、目の前でXにつながった。ここで母親はこう勘違いをする。「私が依頼したのは、Xに依頼してきた山本さんの奥さんなのだ。奥さんが仕事で忙しいから、旦那さんである山本さんがXに預けた子供達を引き取って自宅に連れて行くのだ」……分かりづらいが母親はまさか物袋が関与しているとは思わないので、母親が預けを頼んだ人物と、Xに依頼した人物は夫婦であると思い込んでしまったのだ。

検察官「預ける相手は被告人でもよかったんですか?」

母親「それはないです。料金トラブルもあり、もう子供を預けたいとは思っていなかった。サイト上では名字も変えて、メールアドレスも変えていた。そのぐらいしたので相手に預けることはありません」

検察官「当日、Xが子供を引き渡す相手が被告人だと知っていたら引き渡しをしていましたか?」

母親「していません」

検察官「しかしそのころ、仕事の時間が迫っていましたね、普通ならば預けないけど、仕事が迫っていれば被告人でも預けてたんじゃないですか?」

母親「(もし物袋とわかっていれば)店に連絡して休みました」

 また、母親は、どのシッターに対しても、預ける時は龍琥君とB君の体調やその日食べたものなど、細かく記したメモをそれぞれ作成して渡していた。龍琥君には衣類やおもちゃ、オムツが入ったバッグを、B君にはオムツや衣類、ミルク缶、哺乳瓶2本が入ったバッグを用意して、それも渡していた。

検察官「3月16日に、その別人のシッターと連絡が取れなくなったとき、どんな気持ちになりました?」

母親「いてもたってもいられなかった……最悪な事態を予測してしまい、無事を祈ることしかできませんでした」

検察官「龍琥君が亡くなっていると知った時は?」

母親「なぜ亡くなったのか……もう頭が真っ白でした」

検察官「裸にされて写真を撮られていると知った時は?」

母親「……衝撃が大きすぎて、なんでこんなことをされているのかわからなくて許せなくなりました」

検察官「龍琥君が亡くなった以外に、家族に変化はありました?」

母親「実母が亡くなりました。長男の死がきっかけだと思いますが、遺書には『大切なものを失った、あいつが憎い、恨む』と長男のことを書いてあって……本当に許せない」

検察官「裁判で知りたいことは?」

母親「全て知りたいです。あの日何をしたのか、長男は何をされたのか……。最後の姿を私は見たわけじゃないので、少しでも長男のことを知りたいです」

検察官「被告人に望むことは?」

母親「……長男にあんなにひどいことをして、次男にも、あんなひどいことをして、同じ苦しみを味わってほしいし、簡単に死んでほしくない。大きな罪を背負って生きて欲しい」

 母親への尋問は引き続き行われ、裁判長は、物袋の保育についての質問がなされた。

裁判長「被告人にこれまで20回以上預けてる。戻ってきた子供たちの様子をみて、シッターはどんな人だと思いました?」

母親「最初は……そうですね、穏やかそうな人だったので遊んでくれてるんだろうなという思いです」

裁判長「それが繰り返し頼んだ理由なんですね。で、1月11日は、龍琥君とB君の様子が変だったと」

母親「はい」

裁判長「どのように?」

母親「断定できなかったんですが背中にアザがあったり頬が腫れていたり……でも家庭でも起きることなので、あなたがやったでしょ、とは言えず……。服やオムツが替わってなくてオムツがパンパンだったり、お弁当を何回か持たせてたんですが、食べさせてなかったのかなという弁当箱が返ってきたり、全体含めて、やめようと」

裁判長「それが1月11日までに何回かあって不信感が溜まった?」

母親「はい」

裁判長「1月11日に限って、何か決め手になることはあったんですか?」

母親「ん~、長男、好き嫌いがはっきりしてて、やんちゃな子だったので、まさかそういうことをされていると気づいてなかったんですが、被告人を見るたびにすごく泣いて怖がっていました」

裁判長「1月11日にあなたの家にB君を被告人が返しにきた時?」

母親「長男が被告人を見ています。大泣きして……。そういうことが何回かありました」

 2歳の龍琥君が具体的に物袋に何をされたか話すのはまだ難しかっただろう。だが母親は物袋を見て大泣きしていた龍琥君を目の当たりにし、物袋に預けることをやめる決心をした。龍琥君はこれまで物袋になんども怖い目にあわされてきたのだろう。母親の尋問が終わった後に、Xの調書が読み上げられたが、Xから物袋に引き渡される時の龍琥君の様子は、実の母親でなくても、聞いていると涙が出てきて困ってしまった。

「お母様からお子さんを預かり横浜駅へ移動し、壁画の前で龍琥君を遊ばせて待っていると、小走りで近づいてきた男がいたので、この人が迎えにきたのだと思いました。私は、ふたりのお父さんの山本という人と契約してその人が迎えに来ると思っていたのですが、来れなくなり、同僚が代わりに迎えにきたのだと思ったのです。身なりもちゃんとしていて、疑うことはありませんでした。ベビーカーを持っていたのも、信じた理由です。

ところが二人を引き渡す時になり、それまで機嫌よくしていた龍琥君が泣き出し、『いやだー』『こわいー』とボロボロと涙を流して泣き出したのです。泣き方は激しく、以前お預かりした時もこのように泣くのを見たことがなかったので、驚きながらも龍琥君に『大丈夫だよ』と言いました。B君も目を覚まして泣き出しました。

今でも物袋の顔を見るなり激しく泣き出した龍琥君のことが忘れられない。後悔しています」(Xの調書)

 次に傍聴できたのは第5回公判。龍琥君とB君に対する事件についての検察側の被告人質問が行われた。

▼第一回:『殺人シッター』と呼ばれた男の長い起訴状
▼第二回:2歳男児はなぜ死亡したか 真っ向対立した検察側・被告側の主張
▼第三回:乳幼児を預かるために被告人が画策した計画と、母親が夜間保育を必要としていた事情

最終更新:2017/08/13 07:15
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