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テレビ辛口研究所

平昌五輪「日本人がメダルを獲ってから」しか注目しない……ゆがんだ日本のスポーツ中継

イ・サンファ選手のインスタグラム(@sanghwazz)より

 連日、熱戦が繰り広げられている平昌オリンピック。2月23日現在までに獲得した金メダルが3個、銀は5個、銅は3個と、素晴らしい成績に、日本中が沸きに沸いている。

 しかし、不思議なのは、オリンピックがスタートするまでは、さほど盛り上がっていなかったこと。事前にオリンピック関連でテレビが報じたことといえば、どの局もどの番組も「北朝鮮美女応援団」のことばかり。

 他は、男子フィギュアスケートの羽生結弦選手と、男子スキージャンプの“レジェンド”葛西紀明選手のことが少々触れられている程度に見えた。

 挙句、女子スピードスケート500メートルで金メダルが確実視されていた小平奈緒選手ですら、事前に取り上げられることはほとんどなく、1000メートルで銀を獲ってもなお報道は少なかった。にもかかわらず、500メートルで金メダルを獲得すると、途端に所属先の相澤病院のことが取り上げられ、Twitterのトレンド入りするなど、報道が盛り上がるという状態。

 もちろん地元の新聞などは以前からきちんと報道しているし、応援している人は誰でも知っている情報だが、フォームの変化についての解説なども含めて、テレビが取り上げるのは基本的に「メダルを獲ってから」。

 本来は事前に選手の情報がたくさんあったほうが、応援する側ももっと熱が入るというものなのに。

 いったいなぜテレビは「メダルを獲った後」しか注目しないのか。スポーツ系の番組に携わる放送作家は言う。

「テレビは基本的に『世の中が何を注目しているか』に沿って番組を作るからです。フィギュアスケートの羽生結弦選手にしても、ケガの具合がどうなっているかわからない状態でしたし、スキージャンプの葛西紀明選手にしても、『レジェンド』とはいえ、それほど世の中が注目していたわけではありませんでしたよね? 世間がオリンピック開催前に何を注目していたかというと、スポーツ以外で面白がれる部分、『北朝鮮』だったから、『北朝鮮美女応援団』ばかりを取り上げたわけです。スピードスケート小平選手のさまざまな物語だって、事前にテレビで流したところで、『知らない選手の物語』では世の中は見ない。『金メダリストの物語』だから途端に興味が湧くわけです。そもそもテレビをそれほどみんな見ていないですから、余計に事前に選手の情報を流したところで見ないですよね」

 また、男子フィギュアスケートで金メダル最有力と言われつつも、ショートプログラムで失敗→フリーで4回転ジャンプを5回成功させて1位を獲得、総合5位に巻き返したネイサン・チェン選手は、ネット上ではソチ五輪の浅田真央選手と重ね合わせて「ネイサン真央」とも言われ、大人気となった。にもかかわらず、テレビでは生中継以外、その演技の映像がほとんど流れていない。

 スピードスケート女子500メートルで小平選手とライバル関係にあり、銀メダルとなったイ・サンファ選手も、小平選手との仲の良さがネット上で話題になり、大盛り上がりとなった。しかし、テレビでは彼女自身についてはほとんど取り上げられていない。

 なぜなのか。前述の放送作家は言う。

「世間は『日本』にしか興味がないから、日本人しか映さないんです。日本人が世界で活躍するところは見たいし、ネットなどの反応で日本が世界から褒められている記事は読みたい。逆に、外国人が活躍しても見たいと思う人は少ないので、流しても視聴率がとれないんです」

 そういえば、日本人選手が男女ともにトップレベルで活躍するようになった卓球の国際試合も、テレビで見られる試合が増えている気がする。

 結局、「日本人が活躍すること」「日本人が好成績を挙げること」こそが世間の興味であり、「大会が始まる前に選手の情報が知りたい」とか「外国人選手の試合も観たい」とか思う一部の人は、専門誌や有料放送、ネットなどで自ら情報を集めるしかないのかも。

最終更新:2018/02/23 22:30
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