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オリコン訴訟の最大の山場 証人尋問が行われる

20071213_orikon.jpg証人尋問終了後、報告会で会見する烏賀陽氏
手にしているのは、取材内容が記録されたノート

 12月11日、東京地裁709号法廷において、「サイゾー」06年4月号に掲載されたコメントが事実誤認の誹謗中傷に当たるとして、コメントを寄せたジャーナリスト烏賀陽弘道氏を音楽情報配信会社オリコンが名誉毀損で訴えた、いわゆるオリコン訴訟の証人尋問が行われた(裁判についての詳細は、烏賀陽氏のHP参照のこと)。傍聴席は満席で、傍聴できなかった者も数名見受けられた。

 証人として出廷したのは、原告のオリコン側からは同社元社員の広野麻里子氏で、2003年1月当時、同社広報企画部に在籍し、烏賀陽氏の電話取材に応対した人物である。被告側は烏賀陽氏本人が証人として証言台に立つことになった。

 まず、オリコン側証人の広野氏の尋問から始まった。オリコン側弁護士から広野氏に入社時期や取材を受けた当時の業務などについて質問された後、2003年1月14日に烏賀陽氏が行った電話取材についての尋問となった。

 まず、広野氏は烏賀陽氏の取材について、「覚えている」と証言。その理由として、自分の名前も名乗らず、あまりよい印象がなかったからという旨を答えた。そして、烏賀陽氏からの取材内容については、オリコンが自社チャートを作成する際のデータ集計方法について説明したものの、烏賀陽氏がなかなか納得しなかったため、上司の指示を仰いで説明のための社内資料『オリコンチャートについて』をファクシミリで送付したなど、取材でのやり取りが説明された。また、広野氏はその際、「オリコンのチャートには予約枚数はカウントしていない」と述べたと断言した。

 次に、被告側代理人の三上弁護士が尋問すると、広野氏は最初はすらすらと答えていたものの、社内資料『オリコンチャートについて』に記されたPOSを三上弁護士が取り上げ、「この『オンラインのPOS』とは?」という質問には、完全に沈黙して答えることができなかった。

 「POS」すなわちpoint of salessystemとは、「販売時点情報管理システム」と称されるもので、店舗に設置された端末をオンラインで結び、商品や客数などのあらゆる情報を統合的に管理するシステムである。流通業やサービス業に従事する現場担当者であればその概要は大まかにでも把握しているのが通常であろう。ところが、それまではごく普通に証言していた広野氏が、広報担当者として当然のように理解しているはずのPOSについて説明することなく、まったく黙り込んでしまったことには違和感を感じないわけにはいかない。

 そして、さらに三上弁護士がオリコンのチャート集計について質問すると、広野氏は「私はチャートについて分析する立場ではないので、詳しくはわかりません」と述べた。また、烏賀陽氏と電話で話したのは「一回だけ」と明言した。

 一般的に、企業の広報担当者が自社の技術や設備についてすべて熟知しているわけではない。取材内容が専門的な域に及んだ場合には、しかるべき部署の担当者を紹介するのが通常のパターンである。だが、広野氏は烏賀陽氏の取材に対し、専門部署であるマーケティング部にはこの件を伝えなかった。

 この点に対して、被告側代理人の釜井弁護士が「なぜマーケティング部に回さなかったのですか」と質問すると、広野氏は「回すべきではないと思ったから」と回答し、その理由については答えることはなかった。

 この後、2人の裁判官から、「オリコンチャートに予約がカウントされることはない」という点について質問があり、広野氏は「そのことは広報部に長くいる人間から聞いた」「広報企画部以外からは聞いていない」と答えた。

瑣末な質問を連発したオリコン弁護団

 次に、烏賀陽氏に対する尋問が行われた。オリコン側弁護士の尋問に対して、烏賀陽氏はまず取材の動機として、サウンドスキャンの日本上陸によって、ヒットチャートというジャンルでの長年にわたるオリコンの独占状態が崩れたことこそニュース性があると判断したことを強調した。そして、オリコン側弁護士から、電話取材でのメモの量が少ないことを指摘されると、「最初の電話は、あくまでオリコン本社に訪問し、対面取材をするためのアポイントメントを取るため、単なる取材申し込みと考えていた。ところが、電話に応対した広野さんがオリコンチャートについて詳しい説明を始めたため、あわててメモを取った。そのために少ないメモ量にとどまった」との旨を説明した。

 続いて烏賀陽氏は、サウンドスキャンを扱う株式会社エス・アイ・ピーに取材し、サウンドスキャンのチャートのカウントについて概要などを聞いたこと。その際、あるCDの売上がオリコンチャートとサウンドスキャンのチャートと数十万枚もの差があることに疑問を感じたことなどを具体的に説明した。

 また、事件の直接のきっかけとなった「サイゾー」掲載のコメントについて、「私の考えとはまったくかけ離れている内容。コメントとはいえない」と述べ、「サイゾー」編集部に対して強く抗議し、掲載しないよう求めたことも強調した。

 オリコン側弁護士はいわゆる「調査手法」というものについて質問を始めるが、この中で烏賀陽氏は、「私はオリコンチャートとサウンドスキャンを比べて、同じ商品でありながらランキングにおいて両者に差があることに疑問を抱いたに過ぎない。どちらが正しいか、どちらが間違っているかなどといったことは一度もない」とやや強めの口調で述べた。

 この後、オリコン側弁護士たちは次第に「細かなこと」を質問するようになる。たとえば、証拠として提出された烏賀陽氏の取材ノートの抜粋を指摘し、ある部分について「ここだけ字が傾いているのはなぜか?」とか「どうしてこの箇所だけ書き方が違うのか?」などと、実に違和感のある質問を連発した。

 また、烏賀陽氏が取材当時のことをよく記憶していることや、取材ノートの記述が詳細にわたっていることなどをとらえ、「なぜ2003年当時のことをそこまで鮮明に覚えているのか?」などという質問まで飛び出した。

 ライターにしろジャーナリストにしろ、取材は非常に神経を集中する作業であり、相手の言葉を聞き漏らすまいと緊張することはごく普通である。つまり、ただの雑談ならともかく、ジャーナリストが取材時の仔細を明確に記憶していることなど珍しいことではない。

 にもかかわらず、なぜオリコン側弁護士が「字の書き方が違う」「何年も前のことをよく覚えている」などという質問を連発するのか、強い違和感を感じないわけにはいかなかった。あまりに瑣末な質問が続き、さすがに裁判官も辟易したのか、綿引裁判長から「つまらない質問はしないように」「わかりやすく質問して」などと、数回にわたって注意される場面もあった。

 だが、うんざりしていたであろう裁判官たちも、最後には烏賀陽氏に対して「サイゾー」掲載のコメントに言及し、いくつか質問をしたのち、最後に「このコメントはあなたの考えにあっているのか、異なっているのか」という問いに、烏賀陽氏は「違います」と明言した。

 次回は、2008年2月19日、11時から709号法廷で開催。綿引裁判長は次回で結審させる意向を述べた。来春には判決が言い渡される見通しである。
(橋本玉泉/ジャーナリスト)

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最終更新:2008/06/27 21:35
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