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“下流人間”の群像劇『ララピポ』成宮寛貴が壊したかったもの

rarapipo.jpg(C)2009「ララピポ」製作委員会

「深刻な話を深刻に論じたところで、誰も救われた試しはないんですよ」

 2月7日に全国で封切られる”下流人間のサバイバル・ムービー”『ララピポ』の原作者・奥田英朗は、公式HPにそんなコメントを寄せている。この作品に登場するのは、「対人恐怖症のフリーライター」「妄想癖のカラオケ店員」「ゴミ屋敷に暮らす主婦」「デブ専御用達の裏DVD女優」などなど、揃いも揃って見事な”下流人間”ばかり。そんな一癖も二癖もある共演者たちを向こうに回して、これまた「フーゾク専門のスカウトマン」という軽薄極まりない役柄に挑んだ『ララピポ』主演俳優・成宮寛貴に話を聞いた。負け組ばかりの群像劇に「自分を壊したいから」という理由で挑んだ成宮。その思いに迫る。

──「自分のイメージを壊したいから参加した」というお話を聞きました。作品が完成しての実感を教えてください。

「評価はお客さんにお任せしますが、僕自身、達成感はすごくありました。僕が演じた栗野という人間は、人を騙すことに罪悪感を持ったりしない、平気で嘘をつく人間です。僕自身にもそういう部分はきっとあると思う。そういったネガティブな自分を見つめ直して、それを明るく演じきってやろうというのが、今回の僕個人のテーマでした」

──確かにこの作品、登場人物はいわゆる”下流”と呼ばれる人々ばかりですが、映画そのものは「明るい」という形容がよく似合います。

「作品が扱っているテーマが、とても興味深いというか……。今、僕たちが真正面から受け止めなければいけない現実が描かれていると思います。隣に住んでいる人が何をしてるか分からないとか、昨日、笑顔で挨拶した人が次の日に殺人を犯しているみたいなことって、やけに現実感があるんですよ。そんな厳しい現実を受け止めて、それでも前向きに生きていこうっていうのが『ララピポ』のテーマの一つにあると思うんです。そういうリアリティを感じさせるテーマを、明るくポップに描いて見せようとしてるギャップに僕は惹かれますね」

──辛いことなんて笑い飛ばそう、というメッセージなのでしょうか。

「もちろん、辛いことや惨い事件なんかがあったときに、ただ笑い飛ばしているだけではいけないんですけど、やせ我慢的な前向きさもあっていいと思うんですよ。それが生きていく上でのたくましさにつながっていくんじゃないかという。僕はそういうのも好きなんです」

──栗野のセリフで「この世界には二種類の人間しかいない。一生地べたに這いつくばって生きる人間と、そこから抜け出し、高く高く昇りつめる人間」というのがあります。このような考えに共感する部分はありますか?

narimiya_rarapipo.jpg「昔、僕もそう思っていましたね。世の中にはラッキーをつかめる人間とつかめない人間がいるんだけど、つかむ準備ができてるやつだけが成功できるんだって思ってました。もしかしたら、今でもそう思っているかもしれません。少なくとも、それをつかめる自分でいたいって思っています。ただ、栗野と僕が違うのは、栗野の場合、世の中に2種類の人間しかいないという世界でしか生きられないんだと思うんですよ。そう思い込むことで自分自身を奮い立たせている部分がすごくあるんですよね。多分、あの考え方は彼にとっての信仰なんだと思います」

──確かに、何かを信じないと人は生きていけないって部分はありますよね。

「そうですね。まずは自分自身を信じなければ何も始まらないと思うんですよ。現実や過去を否定して未来ばかりに目を向けていても、結局は自分が望む未来って、現在や過去を受け入れて成長した自分であったりすると思うんです。まあ、それってすごく難しいことで勇気のいることでもあると思うんですけどね。僕自身、はっきりとした答えが見つかったわけじゃないですけど、自分はそうありたいと思います」

──『ララピポ』もそうですが、今、「厳しい現実を生き抜こう」というテーゼを持った作品が次々と発表されていると思います。それは、やはり時代に必要とされているからなんでしょうか?

「必要だし、そういう作品をやらなきゃいけない、作らなきゃいけないって僕は思うんですよね。例えば生きるのが辛いと思っている人って、自分にとって本当に大切なことを見失ってしまっている気がするんです。それは、自分が何のために生きているのかとか、自分にとっての幸せってなんだろうかってことを考えないでも、なんとなく生きてくことが許されちゃう社会だからだと思うんですよ。それを自覚しないで、生きることに物足りなさを感じて事件を起こしちゃうんだとしたら、それってすごく迷惑な話じゃないですか。人間って欲深い存在だと思うし、どんな状況にも慣れちゃう。しかも、なかなかそのことを自覚できないんですよね。でも、こうやって話したりするだけでも自分の中で整理されて自覚的になれる部分もあるし、映画を観ることであらためて自分自身を省みることができることもある。『ララピポ』が、誰かのそんなきっかけになってくれれば嬉しいですね」
(取材・文/テルイコウスケ)

●なりみや・ひろき
82年東京都出身。00年、宮本亜門演出の舞台『滅びかけた人類、その愛の本質とは…』で3000人のオーディションを勝ち抜き俳優デビュー。映画・ドラマを中心に幅広く活躍するほか、年間10誌以上のファッション誌で表紙を飾り、服飾のデザインも行うなど、若者のファッションリーダーとしても注目されている。主演映画『ドロップ』も今春公開予定。

rarapipo_02.jpg
●『ララピポ』
http://www.lalapipo-movie.com/
原作:奥田英朗「ララピポ」(幻冬舎)
脚本:中島哲也
監督:宮野雅之
出演:成宮寛貴、村上知子(森三中)、中村ゆり、吉村崇(平成ノブシコブシ)、皆川猿時、濱田マリ
配給:日活
(c)2009『ララピポ』製作委員会
2月7日(土)より渋谷シネクイント、シネ・リーブル池袋、新宿ミラノ3他全国ロードショー。

深呼吸の必要 [DVD]

難しい役を好演。

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最終更新:2016/12/15 19:37
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