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ギョーカイ【裏】座談会 [トヨタ編]

秋葉原事件は必然!? トヨタ社員が憤る人材の使い捨て(前編)

toyota3.jpg左から渡辺捷昭社長、豊田章男副社長、張富士夫会長

 09年3月期の連結決済において、1500億円の営業赤字になる見通しとなったトヨタ自動車。これに伴い、多くの派遣社員や期間従業員を切り捨て始めた同社であるが、”世界のトヨタ”社員はこうした状況をどう思っているのだろうか。

●座談会出席者

A……トヨタ自動車・技能系社員(60代)
B……トヨタ自動車・事務系社員(30代)
C……元トヨタ自動車・期間従業員(30代)
D……元トヨタ自動車・派遣社員(20代)


──本日は、現場の生の声を包み隠さず語っていただきたいと考え、トヨタやその関連会社で働いていたり、働いた経験のある方々にお集まりいただきました。早速ですがトヨタは今年、1941年のデータ公表以来初の営業赤字となりそうですが、一連の”トヨタ・ショック”について、どう受け止めていますか?

【A】 70年代の2度にわたる石油危機や日米貿易摩擦、85年のプラザ合意後の円高、90年代後半のアジア通貨危機など、これまでにも苦境はたくさんあった。しかし、今回は全く逃げ場のない不況、というのが率直な感想です。

【B】 昨年の今頃は(生産台数)世界一になるといわれていました。それだけに09年3月期の業績予想(営業赤字1500億円)を知ったときは、ホントにびっくりでしたよ。事前に悪いとは聞かされていたけど、実際数字を聞いたときは、連結決算ではなくて関連会社の単体かと勘違いするほど悪すぎた(苦笑)。年末の上司による仕事納めの挨拶も「いまだかつてない厳しい状況。09年も試練の年になるはず。だからこそ、みんなで一丸となって力を合わせて……」というものでした。

【C】 でも、その上司の「みんなで一丸となって……」は、私たちからすれば皮肉にしか聞こえませんね。だって、非正規労働者については容赦のないクビ切りを続けているのに。

【D】 僕も派遣先の上司から、正社員と同様の仕事をしてきたのに「どうせ派遣社員なんだから、責任感もないんだろ」と、遠回しに言われていました。そりゃ恨み節も漏らしたくなりますよ。

──同社ではすでに期間従業員の新規採用を取りやめ、さらに現在いる約6000人の期間従業員も今年3月までに半減する予定だといわれています。Cさん、Dさんもリストラの憂き目に遭われた張本人ですが、現在の率直な心境は?

【C】 私は、昨年4月に派遣社員から期間従業員となりました。採用時には10万円の手当てが出て、入社後は、主に内装の組み立てに従事。上司からも「頑張れば正社員への登用も十分あり得る」と日頃からハッパをかけられたりして、7月には更新希望も聞かれていたんです。それが一転。8月下旬頃に突然上司に呼び出されて、「10月以降の契約は結べない」と。「今後景気が回復して、期間従業員の募集を再開するときは、真っ先に声をかけるから」とは言われましたが……。契約終了の理由は、「景気の悪化」と「原油高等による原材料費の高騰」を挙げていましたね。

 当時、私は6畳のワンルームの寮(寮費0円)で生活をしていたのですが、契約満了後わずか3日間の猶予しか与えられずに退去を言い渡されました(昨年12月から、退寮期限は1カ月に延長)。で、9月分の給与と約30万円の満了慰労金を受け取ったら、あとは「はい、さようなら」。あらゆることが突然すぎて、気がついたら仕事も住まいも失っていたという感じですね。現在は愛知県豊田市内に暮らす友人のアパートで居候をしながら、新しい仕事を探しています。でも、この不況下なので、なかなか次の仕事は見つかりません。

【D】 企業経営は、慈善事業ではありません。そのため、会社としては、非正規社員からクビ切りを行うのは当然のことだと理解しています。ですが、これまでの扱われ方は人間以下。私は、トヨタに派遣社員として働いて約3年なのですが、その間、複数の工場間での異動、異動の繰り返しでした。なぜなら、派遣社員は、そのときどきの状況に応じて、最も忙しい工場に駆り出されるからです。要するに、派遣社員はトヨタ自動車の代名詞でもある”かんばん方式”(ジャスト・イン・タイム:受注に応じて必要な台数のみを生産するシステム)の歯車のひとつというわけです。早いときには、わずか1カ月で異動命令が下ったことも。だから、周囲に溶け込むこともできないし、専門的なスキルももちろん身につかない、嫌がらせのようでしたね。

【A】 トヨタ側が派遣社員に異動を強いるのは別の理由もあります。労働者派遣法(第40条の5)において、「受け入れ先の会社は、3年間にわたって同一の場所・業務に就いた派遣社員に対して、直接雇用を申し込まなければならない」(3年ルール)とあります。しかし、その間に異動があれば適用外となるんです。つまりトヨタからすれば、派遣会社を通じて派遣社員に異動を命じることで、自分たちの都合に合わせて人材を思うがままに使えるだけでなく、人件費のコストも抑えられるというカラクリです。

【D】 とは言っても結局のところ、派遣社員を選んだのは自分自身の意思によるもの。だから「派遣社員になった本人の自己責任」と言われたら、それまでなのですが……。

●派遣、期間工切りは経団連から要請された?

【C】 しかし、それにしてもトヨタの非正規社員に対する待遇はひどすぎる。こちらにしたって、それ以外に選択肢がなかった人もいるだろうし、全員が好きで非正規労働者の道を選んだわけではありません。

 ここで、本来なら弱い立場の非正規労働者を守るために労働組合が立ち上がるべきなのでしょうが、トヨタ最大規模を誇る「トヨタ自動車労働組合」は会社の傀儡組合でしかありません。なんたって、同組合は03~05年の3年間、経営陣に対してベースアップを要求しなかったほど。当時は会社の業績も右肩上がりで好調でした。それなのに、労組がベースアップを要求しないのは前代未聞。労働者のほうを向いていない、何よりの証拠ですよ。06年に新たに結成された「全トヨタ労働組合」は、地道な草の根運動を展開するなど、非正規労働者の支援のためにも頑張っているようだけど、会社から組合活動の妨害を受けることもしばしばあるみたいですね。

【A】 無借金経営をモットーにする同社は、”トヨタ銀行”と称されるほどで、約14兆円の内部留保を持つなど、財務体質には定評があります。某幹部も「うちはトヨタ全従業員が10年間遊んで暮らせる金がある」と豪語したとか。私の持論としては、会社はその潤沢な資金の一部を使って、非正規労働者を救済すべきだと考えます。それは、近い将来の会社の利益にもつながるのではないでしょうか?

【B】 まったくAさんの言う通りだと思いますね。このまま会社が非正規労働者のクビ切りを続けると、未来を担う若い労働者への技術継承や生産体制の面において、大きなマイナスにもなりかねません。トヨタの”ものづくり”が大きく揺らぐ恐れもあるでしょう。厳しい今だからこそ、非正規労働者を守る。そうすれば、企業価値はもちろん、社会的な評価もさらに高めることができるはず。ここ数年、トヨタはエコ活動や環境問題に注力しているけど、その前にもっと果たすべき大事な責任があるだろうと。これまで会社のために汗水流して一生懸命働いてきた労働者たちをサポートしてやれ! と、経営陣には言ってやりたいですね。

【A】 ひと昔前までは閉鎖的な企業風土から、”三河モンロー主義”と揶揄されることもありました。しかし、現在は”世界のTOYOTA”で、日本経済の象徴と言っても過言ではありません。そんな同社が先頭に立って、非正規労働者のクビ切りを行うのは、「ほかの国内企業も後に続け」と言っているようなもの。失業率の上昇に伴い、景気はさらに悪化していき、車も売れなくなる。人減らしの経営戦略は、トヨタにとっても悪循環を招くだけだと思います。

【B】 ただ、非正規労働者のクビ切りは、日本経済団体連合会(以下、経団連)の要請も大きいみたいですね。Aさんが先ほど指摘した通り、経団連に加盟している企業としては、「トヨタがやってくれれば、うちもやりやすい」という図式がある。周知の通り経団連の初代会長を務めたのは、同社取締役相談役の奥田(碩)さん。現在も代表取締役会長の張(富士夫)さんが副会長の役職にいる。また、これまでトヨタは、経団連を通して政府に雇用形態の規制緩和等の働きかけを行うなど、いろいろと利用してきた。だから、経団連の要請はむげには断れないはず。

 それに僕もそうだけど、無駄を排除する「かんばん方式」が身に染みているトヨタ社員は、良い意味でも悪い意味でも用心深く、貧乏性(苦笑)。だから、経営陣たちも今回の営業赤字1500億円は相当のショックだったんじゃないのかな。それで余裕がなくなって、とにかく来期の赤字帳消しのことしか頭にないから、中長期的な判断ができなくなって、安易なリストラ策に走っているようにも見える。

【D】 ここでトヨタが非正規労働者の支援・サポートに乗り出せば、世論的には「さすが”世界のTOYOTA”だけのことはある。それに引き換えホンダ、日産は人でなし」ということになるのに、ホントにもったいない(苦笑)。
(後編につづく/構成=大崎量平/「サイゾー」2月号より)

自動車絶望工場

25年前の著書。

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最終更新:2009/02/12 10:19
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