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お笑い評論家・ラリー遠田の【この芸人を見よ!】第26回

人気者なのに愛されない芸人・品川祐の「がむしゃらなリアル」

dropshinagawa.jpg映画『ドロップ』HPより

 品川庄司の品川祐が原作・監督・脚本を手がけた映画『ドロップ』が、大ヒットを記録している。主演の水嶋ヒロの結婚発表なども追い風となり、4月3日の時点ですでに興行収入10億円を突破したという。

 小説も売れているし、テレビで見る機会もやたらと多い。数字だけを見れば、品川は間違いなく売れっ子芸人の1人である。だが、そんな状況に対して「なぜ?」と腑に落ちない思いをしている人も多いはずだ。華々しい活躍を続ける一方で、タレントとしての品川はかなりの嫌われ者でもある。「面白くない」「出しゃばりすぎ」「ウザい」など、彼に対する手厳しい意見も世間では根強い。

 品川はなぜ売れているのか? そして、こんなに売れているにも関わらず、なぜこんなにも嫌われているのか? 恐らく、品川の人気と不人気は、同じコインの裏表の関係にある。なぜ売れたのかを分析していくことで、彼が世間に愛されない本当の理由が見えてくる。

 品川が売れるために考えた戦略の大前提となっているのは、徹底したリアリズムだ。テレビお笑い界の現状を見て品川が悟ったのは、誰もがスターにはなれない、ということだった。何度かの「お笑いブーム」と呼ばれる時代を経て、テレビに出てくる芸人の数は昔より増えている。しかし、そんな中で看板番組を持つことのできる芸人はほんの一握りだ。圧倒的な才能とセンスが求められるそのポジションを初めから目指すのは、あまり得策ではない。

 だから品川は、「ひな壇」を自分の主戦場に選ぶことにした。正確に言えば、選ぶことを余儀なくされたのだ。彼が戦いを始めようと決意したとき、司会のポストはベテラン芸人で埋まっていて、目の前にはひな壇しか残されていなかったからだ。ひな壇で求められていることは何なのか、徹底的に研究と試行錯誤を繰り返した。そして今では、土田晃之と並んでひな壇芸人のお手本と言われる存在にまで上り詰めたのである。

 また、まっすぐにスターへの階段を歩むことを断念した品川は、いろんなことに積極的に首を突っ込んでいくようになった。ブログを毎日更新して、小説を出版した。料理の本を出して、映画の監督と脚本も務めた。芸人の数は多いが、テレビの枠は限られている。芸人が生き残るためには、ジャンルにこだわらずいろんなことに手を出して、それをビジネスにしていかなくてはいけない。

 タレント業はどこで火が付くかわからないから、どこでも手を抜けない。だから彼は、何にでも全力で取り組み、何をやってもそこそここなせる器用さを身につけたのである。

 そんな品川は、テレビのスタッフや共演者から見ると、実に使い勝手のいい芸人である。ひな壇に品川を配置すれば、場を盛り上げて空気を作ってくれる。ゲストとしてピンポイントで起用しても、それなりに笑いを取れる。テレビ芸人として、いかに扱いやすい存在になるか。彼はただひたすらそれだけを追求してきたのである。

 そして、品川が嫌われる最大の理由も、そのリアリズムにあるのだと思う。現実を踏まえて一歩一歩地道にキャリアを重ねる彼の生き方には、夢がない。一般の視聴者の多くは、テレビに夢や憧れを見いだそうとしている。テレビの世界は、圧倒的に美しい俳優やアイドル、天才的な運動神経を備えたアスリート、爆発的に面白い天才芸人たちで満ちあふれている。そんな中で、戦略的にこつこつと努力を重ねて成り上がってきたような品川の泥臭い芸風は、決して愛されることはない。

 シャレにならないほど不景気で後ろ向きな時代だからこそ、シャレにならないほどリアルでがむしゃらな芸人が結果を出している。それが品川を取り巻く現実のすべてだ。
(お笑い評論家/ラリー遠田)

●「この芸人を見よ!」書籍化のお知らせ

日刊サイゾーで連載されている、お笑い評論家・ラリー遠田の「この芸人を見よ!」が本になります。ビートたけし、明石家さんま、タモリら大御所から、オリエンタル・ラジオ、はんにゃ、ジャルジャルなどの超若手まで、鋭い批評眼と深すぎる”お笑い愛”で綴られたコラムを全編加筆修正。さらに、「ゼロ年代のお笑い史」を総決算したり、今年で9回目を迎える「M-1グランプリ」の進化を徹底的に分析したりと、盛りだくさんの内容になります。発売は2009年11月下旬予定。ご期待ください。

●連載「この芸人を見よ!」INDEX
【第25回】タモリ アコムCM出演で失望? 既存イメージと「タモリ的なるもの」
【第24回】ケンドーコバヤシ 「時代が追いついてきた」彼がすべらない3つの理由
【第23回】カンニング竹山 「理由なき怒りの刃」を収めた先に見る未来
【第22回】ナイツ 「星を継ぐ者」古臭さを武器に変えた浅草最強の新世代
【第21回】立川談志 孤高の家元が歩み続ける「死にぞこないの夢」の中
【第20回】バカリズム 業界内も絶賛する「フォーマット」としての革新性
【第19回】劇団ひとり 結婚会見に垣間見た芸人の「フェイクとリアル」
【第18回】オードリー 挫折の末に磨き上げた「春日」その比類なき存在
【第17回】千原兄弟 東京進出13年目 「真のブレイク」とは
【第16回】狩野英孝 「レッドカーペットの申し子」の進化するスベリキャラ
【第15回】サンドウィッチマン 「ドラマとしてのM-1」を体現した前王者
【第14回】小島よしお 「キング・オブ・一発屋」のキャラクター戦略
【第13回】U字工事 M-1決勝出場「北関東の星」が急成長を遂げた理由
【第12回】江頭2:50 空気を読んで無茶をやる「笑いの求道者」
【第11回】バナナマン 実力派を変革に導いた「ブサイク顔面芸」の衝撃
【第10回】山本高広 「偶像は死んだ」ものまね芸人の破壊力
【第09回】東京03 三者三様のキャラクターが描き出す「日常のリアル」
【第08回】ジャルジャル 「コント冬の時代」に生れ落ちた寵児
【第07回】爆笑問題・太田光 誤解を恐れない「なんちゃってインテリ」
【第06回】世界のナベアツ 「アホを突き詰める」究極のオリジナリティ
【第05回】伊集院光 ラジオキングが磨き上げた「空気を形にする力」
【第04回】鳥居みゆき 強靭な妄想キャラを支える「比類なき覚悟」
【第03回】くりぃむしちゅー有田哲平 が見せる「引き芸の境地」
【第02回】オリエンタルラジオ 「華やかな挫折の先に」
【第01回】有吉弘行 が手にした「毒舌の免罪符」

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品川食堂

「かなりちゃんと美味い」と評判です。

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最終更新:2013/02/06 13:10

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