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【ロングインタビュー】

「ゼェェェット!」アニソンの帝王・水木一郎が見据える世界への道程

ichiro_mizuki_main.jpg「ゼェェェット!」

 近年、チャート上位にランクインすることが多くなり、にわかに脚光を浴びるようになったアニメソング。しかし、まだアニメソングが「こどもたちのためのもの」と思われていた時代から名曲は多数存在していたのだ。そんな「誰もが口ずさんだアニメソングのマスターピース」を網羅したコンピレーション・アルバム『みんなアニメが好きだった-青盤-』が本日発売された。

 その宣伝隊長に「ゼェェェット!」の雄叫びと共に、日本のみならず世界中を熱狂の渦に巻き込む我らがアニキこと水木一郎が就任した! そこで、「今でも聴きたい懐かしのアニメソングの魅力」とは何なのか。アニキ自身のアニメソングへの熱い想いとともに大いに語ってもらった。

──今回、『みんなアニメが好きだった-青盤-』宣伝隊長に就任されました。今回の任務に対する意気込みをお願いします。

水木 どんな人も必ずアニメを見て育っているわけですから。やっぱり隊長としてはアニメファンは当然として、そうじゃない人──J-POPが好きな人も、ジャズが好きな人も、ロックが好きな人も、あらためて聴いてみたいと思えるようなきっかけを作っていきたいですね。

──CM撮影のニュースをネットで拝見しましたが、まさかフラワーロックになってしまうとは思いませんでした。

水木 うはははははは(爆笑)。フラワーロックを知らない年代の人には「なんじゃコレ」ですよね。ひまわりっていうのが俺らしいでしょ(笑)。

──クネクネ踊り過ぎて、収録中に転倒されたとか。

水木 つい大きく動いちゃってそのまま転倒しちゃいました。でもフラワーロック君たちは潰さなかった。俺は非常にうまい転倒のしかたをしたんですよ。瞬間的にこの子たちをどうやって守ろうって考えたんですよ。

──熱いエピソードですね! さすがアニキです。それ以外に、撮影の時に難しいところはありましたか?

水木 オンエアは15秒間なので、いかにインパクトのあるものを作るかってことですね。その上でやはりCDの宣伝なので、それも視聴者にアピールしないといけない。それが大変でした。

──アニメソングは通常90秒以内で収めなければいけませんが、決められた時間内に収めるという点でCM撮影と通じるものがある気がします。

水木 そうですね。ちなみに俺の代表作『マジンガーZ』はワンコーラスが90秒どころか、フルコーラスが1分50秒もないんです。昔からそういう中で作品を作ってきたので、短い中でいかに表現していくかっていうことは、自然と身についてきましたね。

●生きるうえで大切なことを、魂をこめて歌う

──『マジンガーZ』での「ゼェェェット!」の叫びをはじめ、水木さんの歌には「この曲の聴きどころはコレ!」みたいな「掴み」が必ず入っています。そのおかげでどの曲もずっと耳に残るように思います。

水木 初めてアニメソングを歌った時から心がけているんですが、自分はレコーディングの時も、テレビの前に座っているこどもたちを胸に思い描きながら歌っているんです。だから、ヒーローソングに込められた正義の心や、愛や友情、勇気といった、人が生きていくうえで大切なことを、魂を込めて伝えるようにしているんです。

──ブラウン管の向こうに魂を届ける。

水木 そうです。だから皆さんから俺の歌を聴いて勇気が湧いたとか、励まされたとかおっしゃっていただけると、俺のやってきたってことは間違ってなかったなと嬉しく思います。まして世界にその思いが届いていたなんて(笑)。最初はテレビの前に座っている「日本の」こどもたちに向けて歌ったんですよ。それがまさか世界中のこどもたちに受け入れられているとは思ってもいなかった。でもどこの国のこどもにも通じているっていうのは、やっぱり俺の歌は間違ってはなかったっていうことですよね。

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──少なくとも92言語の人たちが興味を持っているわけですからね。(参照:『「世界一有名な日本人は……!?」wikipedia”掲載言語ランキング”が話題に』当時は91言語だったが、現在は92言語に増えている)

水木 ですから新しい歌手の人たちもそういう精神で歌ってくれれば、今のアニメソングも30年後までたくさん残るんじゃないかと思います。

●ジャンルを超えて──アニメソングは決して古びない

──今回の『青盤』なんですが、『赤盤』に続いての第2弾となります。これは、今懐かしのアニメソングを聴きたいという人が多くいる、ということの結果でもあると思いますが、このことについてどう思われますか?

水木 確かに「懐かしの」って言うとそのとおりなんですが……。まずアニメの主人公たちは年をとらないじゃないですか。だからだと思うんですが、アニメソングって心の中ではずっと現役なんです。音楽的に聴いても、「アレンジが古い」とか、「歌詞が古い」とか、そんなにない。

──確かに流行をあまり意識しなくとも構わないメディアですからね。

水木 そうなんです。歌は世につれっていいますけど、アニメソングの場合はそうじゃない。商業的にヒットを飛ばすことを要求される曲とは違って、90秒でいかにメッセージを伝えようか、いかにいいメロディを作ろうか、と自由な発想を盛り込めたことと、自分が感じたヒーロー像をメロディにする、ということで、他の音楽にはない独特の旋律が生まれてきたんだと思います。だから今でも新鮮に聴けるんです。そういう意味で懐かしいというのはちょっと違うのかもしれない。

──それにしても、本当に多岐にわたるジャンルの音楽が収録された一枚ですよね。

水木 これがアニメソングの魅力なんですよ。最初、俺はアニメソングをこんなに長く歌い続けるとは思っていなかった。もともと、ステージではアメリカンポップス、レコードデビューは歌謡曲と、いろいろなジャンルを経ているから、いずれは好きなジャズでも歌おうと思ってましたけど、今はもうそんな必要はない。アニメソングには『ルパン三世』みたいなジャズっぽいのもあればロックもあったり、演歌もあったりする。だから全然アニメを離れてよその世界に行こうなんて気はないです。逆に色々なジャンルの人から、「アニメソングをこういうアレンジで歌ってくれませんか」ってオファーがくる。

──そうなんですか?

水木 例えばフランスのディミトリ・フロム・パリ(※1)から一緒にコラボしてくれって言われたんです。それも『マジンガーZ』のオープニング・テーマじゃなくてエンディング・テーマを「長年温めてきた企画なので、ぜひとも歌を入れてくれ」って俺のところにきて。『BOKURA NO MAZINGER Z(Black Ver.)』として発売しました。実は彼は『マジンガーZ』のアニメを見てないんです。レコードのジャケットがカッコイイってジャケ買いして、聴いてみたら音楽もかっこいい。「何だこれは」って入ってきた人なんです。アニメソングが、ジャンルを越えたひとつの音楽として世界から評価されたんです。

──今年は、昨年のデビュー40周年を経ての41周年です。ちょっと気は早いのですが、2009年はどんな1年だといえるのでしょうか。

水木 40周年の時に一生懸命に皆さんに恩返ししよう、という気持ちでできる限り多くのみなさんに声を届けるよう努めたのですが、そのときまいた種にさらに皆さんが水を与えてくれたおかげであちこちで実を結んでいます。

──シンガポールでライブをやるのもそのひとつ?

水木 そうです。実は昨年の40周年の時よりも今年の方が忙しいんです(笑)。今年は2月に香港公演もありましたけど、海外の状況も変化してきていますよね。まず昔は世界に行けるなんて考えてもなかったからね。かつては坂本九さんの『SUKIYAKI』くらいでしょ。日本人が海外に通用するなんて夢のまた夢だと思っていたんです。

──それが現実になってきたと。

水木 そう。しかも日本語のアニメソングで。俺のホームページを見てくれればわかると思うんですけど、もう10年くらい前から「アニキ維新」として俺の意志を掲げているんですよ。世界中がアニメソングを日本独自の文化として認めている、その日本の宝ともいえるアニメソングを世界に、そして次の世代に伝えていかなくてはいけない。そんな岐路に立たされている今、俺がまだまだアニソン業界を引っ張っていかなくてはいけないんですよね。

──水木さんにとってアニメソングとは何なのでしょう。

水木 俺をここまで育ててくれたものです。アニメソングと出会ってなかったら俺もここまでポジティブになれなかったしね。月並みですが、アニメソングって宝箱みたいなもので、ふたを開けるといろんな夢がどんどん出てくるんですよ。歌い手はヒーローになりきればいい。そう考えると、1,000曲ライブ(※2)が成功したのもアニメソングだから、1,000通りのヒーローの気持ちを歌うことができたからだと思うんです。本当にありがたいことです。

──ありがとうございました!
(取材・文=有田シュン)

●水木一郎オフィシャルウェブサイト
http://www.mizuki-spirits.com/

※1)
フランスを拠点に世界中で活躍するハウスDJ。2004年にはアニメ『月詠-MOON PHASE-』主題歌「NEKO MIMI MODE」を発表。オシャレ系電波ソングとしてアニメソング界を騒然とさせた。

※2)1999年8月30日から31日にかけて河口湖ステラシアターで催された「水木一郎24時間 1000曲ライブ」のこと。「日本で一番多くの曲を歌った単独ライブ」として音楽史に足跡を残した伝説のライブ。

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最終更新:2009/09/19 00:12
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