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『ひぐらしのなく頃に 誓』DVD発売直前インタビュー

「制作会社に採用されなくてよかった」原作者・竜騎士07の挫折と下克上(前編)

ryukishi01.jpg同人サークルのクオリティの高さを世に知らしめた竜騎士07氏。

 コミケでひっそりと売られていた同人PCゲームが次々に他メディアへ移植されて大ヒット──『ひぐらしのなく頃に』で竜騎士07が体験したのは紛れもなく、希有なジャパニーズドリームだ。専門学校卒業後にゲーム制作会社への就職を希望するも、あえなく撃沈。諦念を胸に公務員となった彼を、トップクリエイターへと押し上げる原動力とはなんだったのか? 実写映画が解答編にあたる2作目『誓』で完結。そのDVDが発売を迎えて『ひぐらし』にひと区切りがついたいま、7年間の足跡を訊いた。

──『ひぐらしのなく頃に』原作ゲームの1作目『鬼隠し編』から足かけ7年。小説も映画も完結して、集大成的な年になりました。

竜騎士 まさかこうして7年後にも話題にしているとは思いもよりませんでした。書いているときは無我夢中でしたから……。いま「7年経った」と言われて、驚いています。

──ゲーム、マンガ、アニメ、映画と、メディアを替えつつ発表してきました。

竜騎士 マンガになるというだけで十分だったんですが……。自分の引き出しから出てくるものではなく、他のメディアで新たに作られる『ひぐらし』が非常に楽しみでした。

──映画とサウンドノベルである原作の違いは?

竜騎士 『ひぐらし』は『雛見沢停留所』という舞台脚本が原案になっている、もともと生身の役者が演じることを想定した物語だったんです。だからサウンドノベル、マンガ、アニメと来て最後に実写映画になったのは、じつは原点回帰なんですね。7年かけて一周したようで、感慨深いです。

──『雛見沢停留所』のときにイメージしていたものが、今回の実写映画で具現化した?

ryukishi02.jpg

竜騎士 それはありますね。当時の脚本は若い役者さんしかいない小劇団で演じられることを想定して書きましたから、登場人物は若者だけなんです。映画では大石役の大杉漣さんをはじめ、実力ある大人の方々に演じていただけた。その1点において、確実に私の原案を越えています。実年齢が伴うすごみ、リアリズム、と言いましょうか。それに、まだ祟りが祟りとして説得力があった、昭和末期の空気感をよく再現してくれたと思います。

──『ひぐらし』で訴えたかったこととはなんなのでしょうか。

竜騎士 ひとりで考え込んでしまうと、往々にしてよくない結末に陥りやすい。会話をすることで誤解を解き、よりよい解決方法を見つけるべきだというのが、『ひぐらし』に込められたテーマです。映画『誓』では、狂気に取り憑かれたレナと圭一が学校の屋根の上でぶつかり合う。形式的には凶器を交錯させる「バトル」ですが、実は、あれは心と心をぶつけ合う「対話」なんです。本音を思う存分さらけ出した結果、レナの呪縛が解けた。そこが大切なところです。

──それまでの場面とは変わって、怖さやグロさがないですね。

竜騎士 ほんとうに恐ろしいのはむしろ、レナがひとりで膝を抱き、悶々と悩んでいるシーンなんです。暗い妄想が広がっていく。しかし思い悩んでいるのがどんなに物騒な事であっても、口に出して相手にぶつければ、残忍な殺し合いにはならない。ナタとバットを重ねながら、狂気を氷解させるべくコミュニケーションを図っていた。映画の前作では圭一がやはりひとり悩み、陰惨な結末を迎えますが、『誓』はそうはなりませんでした。

──起こった惨劇をやり直せる。そこが特徴ですね。

higu01.jpg(C)2009 竜騎士07/オヤシロさまパートナーズ

竜騎士 ゲーム的世界観ですね。ゲームでしか学べないことがあると思っているんです。取り返しのつかないこと、たとえば殺人です。現実に殺人をしたあとにそれを悔いても、反省を活かせない。殺人者の烙印を押され、自分は刑務所のなか。遺族の哀しみが癒えることもないでしょう。人を殺したらどんなによくない事態が待ち受けているかは、ゲームでしか学べないことなんです。「主人公の圭一=プレイヤーである自分」と考えれば、不可逆的な出来事を起こす前に学習できる。その意味で『ひぐらし』は「ゲーム」なんです。

──本来、人は文学や芸術から人生を学んでいたはずなんですが……。

竜騎士 エンターテインメント性が優先されると、痛快さ、爽快さばかりが求められるようになってしまいますよね。勝ち組のヒーローばかりを追体験するようになる。結果として読者はおもしろくない話を読まなくなり、不幸な人の追体験をしなくなる。もし、5年間引きこもった人が就職面接にこぎつけたらそれだけで偉業ですが、辛い人の気持ちを追体験したことがなければ、その感覚は理解できないでしょう。しかしゲームならそれができる。自分だったらどうなるかと、感情移入をする。ゲームはその度合いが高い表現だと思います。『ひぐらし』は選択肢がなく、アクション性のあるボタン操作もありません。けれども、読み終わったあとに議論をして噛みしめるという行為そのものが「ゲーム」だと言えます。

──売らんかな、という要素が少ない『ひぐらし』が、商業シーンが無視できないくらい大きな作品になったことについてはどう思われますか?

竜騎士 正直、好きなものを作っているだけなんですよ。それを結果としてユーザーの方に気に入ってもらえた。だからこれから先も、売れるためにどうすればいいかを考えて作るのではなく、どうやったら私自身が楽しめるかを考えて作り続けたいと思います。方針を変えずに。
後編につづく/取材・文=後藤勝)

竜騎士07(りゅうきしぜろなな)
1973年、千葉県生まれ。専門学校を卒業後、公務員を経てシナリオライターに。同人サークル「07th Expansion」代表。サウンドノベル『ひぐらしのなく頃に』が04年頃からネット上で口コミを呼び、空前の大ヒットに。以降、同作はマンガ、小説、アニメ、劇場公開映画など多方面にメディアミックス展開され、同人サークルの成功例となる。

劇場版「ひぐらしのなく頃に 誓」スタンダードエディション
発売日:2009年11月6日
価格:3,990 円(税込)
発売元:フロンティアワークス
販売元:フロンティアワークス、ジェネオン・ユニバーサル・エンターテイメント
※メイキング映像やサントラ&ドラマCDなど特典付きの『コレクターズエディション』も同時発売【7,140円(税込)】
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最終更新:2009/11/02 11:59

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