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映画『グワシ!楳図かずおです』公開記念インタビュー

噂の”まことちゃんハウス”大公開! これが楳図かずお先生の最新作なのら(後編)

umezu_03.jpg楳図ワールド全開です

■前編はこちらから。

──楳図作品を読んで育った若手映像作家たちが、最近では次々と楳図作品を映画化していますが、なかなか会心作が生まれません。オムニバス映画『楳図かずお恐怖劇場』(05)の中の清水厚監督作『ねがい』や井口昇監督作『まだらの少女』はいい出来だったと思いますけど……。

umezu_07.jpgインテリアもかわいい

「そうですね、『恐怖劇場』にはなかなか面白い作品がありましたね。ボクとしても、いつかボクの漫画を越える映像作品が出てくるんじゃないかと、期待しているんです。ひとつでも原作を上回る映画ができれば、それに続く作品が続々と出てくると思うんです。今後の課題でしょうね。でも、他人に期待ばかりしていたらいつになるかわからないので、自分でもやってみようと準備をしているところなんです」

──それは、楳図先生自身がメガホンを執る映画の企画のことですね?

「はい、自分のカラーをもっと押し出すんだったら、自分で監督するしかありませんから。でも、予算とか色々と制約があるので、どのくらいのものになるのかはまだわかりません。ここにある絵が、そのイメージ画です」

──バラの花に刺さったペン、そして美少女……。あぁ、美と創作(フィクション)がテーマの怖~いお話になるんですね。

「それ以上は言わないで(笑)。まぁ、勝手に推測される分には止められませんけど。でも、今まで描いてきた漫画とは違った、オリジナルの新作になることは確かです」

──映画制作が実現した際は、ぜひ取材させてください。でも、ファンは恐ろしく残酷。楳図先生は『漂流教室』『わたしは真悟』『14歳』(すべて小学館)と途方もない大傑作長編漫画を発表しているにも関わらず、「漫画の新作は?」とつい期待してしまいます。1995年の『14歳』の連載の完結を最後に休筆されていますが、腱鞘炎が治った際には漫画家として再開する予定はあるんでしょうか?

umezu_08.jpg巷で噂のクローゼットはこちら

「漫画で全てを描き切ったつもりはないんですが、机に向かって描く仕事はもうしたくないんです。仕事のオファーが今来ても、受けないでしょうね。漫画だけが世界の全てではないわけです。もちろん、ボクの中では漫画というのは一番基本になっているものであり、創造力を培ってきた大切な表現手段です。でも、ボクは歌やダンスも好きなので、体を使って表現するのも、創造のひとつだと考えているんです。今後も漫画家としての精神は持ち続けるつもりですが、机に向かって頭の中だけで作業を続けるのが当たり前になっているのは、良くないと思うんです。頭で仕事をする人は、つい体があることを忘れがち。頭で考えたことに体を無理矢理従わせるのは間違っているんじゃないでしょうか。無理をするから、みなさん職業病にかかっちゃうと思うんです」

──楳図先生がウォーキングをされたり、歌やダンスに励んだり、外国語のヒヤリングをしているのも、体のために重要なことなんですね?

「そうなんですよ~! 仕事の合間に体を動かしているというよりは、バランスを取りながら、楽しみながら体を動かしているんです。漫画以外にも面白いことがあれば、やっていきたいですから。頭の中で難しいことばかり考えるのでなく、普通に生きていって、その人の生き方全体がひとつの作品になれば、それがいちばん自然だし、楽しいんじゃないかと思うんですよ~」

umezu_09.jpgまことちゃんにお見送りいただきました

──まことちゃんハウスで、こんな深イイ話が聞けるなんて幸せ♪ 人類は”恐怖”を克服することで文明を築いてきたわけですが、楳図先生にとって”恐怖”とは一体どのような存在なんでしょうか?

「ボクにとって”恐怖”とは、一番楽しめる”夢の世界”なんです。現実の世界をそのまま描いても面白くないわけで、漫画の世界では現実ではありえないところまで飛んでいかないと、面白くならないんです。”恐怖”はそのための手段とも言えますね。現実でいちばん起きてほしくないことが、お話としては最高に面白いわけです。人間は”恐怖”を楽しみながら生きながらえている、想像する生き物なんだと思いますよ~」

 日常の衣食住をエンタテイメント化しちゃえば、人生が最高にハッピーになるという楳図先生からの素敵なメッセージ。まことちゃんハウスで企画が練られているオリジナル映画も楽しみ。楳図先生、どうもお邪魔しました!
(取材・文=長野辰次)

『グワシ!楳図かずおです』
漫画家・楳図かずおにとって、初となるドキュメンタリー映画。現在休筆中の楳図先生がイラストを仕上げていく過程をはじめ、”まことちゃんダンス”の練習に励む姿、五カ国語のラジオ講座に耳を傾ける様子など、天才クリエイターの日常生活に密着。”まことちゃんハウス”の通称で親しまれている自宅が造られていくメイキング映像としても興味深い。
監督・撮影・編集/伊藤弘二 音楽/大内勇太 出演/楳図かずお、祖父江慎、竹熊健太郎 配給/トリウッド 11月23日(月)より下北沢トリウッドにてロードショー公開。初日には出演者による舞台挨拶あり。
http://gwashi.com/

うめず・かずお
1936年和歌山県高野山生まれ、奈良県育ち。14歳のときに描いた『森の兄妹』と高校2年のときに描いた『別世界』が1955年に出版され、プロデビュー。以後、『へび少女』(小学館)『半魚人』(講談社)など数多くの恐怖漫画で絶大な人気を得る。長編『漂流教室』『わたしは真悟』『14歳』(すべて小学館)は”現代の予言書”と称したくなるほど時代を先取りした内容。また、1975年にはLP『闇のアルバム』(ソニーミュージック)をリリースするなど、ミュージシャンとしての才能も発揮している。楳図作品を原作にした映画に『蛇娘と白髪魔』(68)、アニメ『まことちゃん』(80)、『漂流教室』(87)、『洗礼』(96)、『楳図かずお恐怖劇場』(05)、『猫目小僧』(06)、『神の左手 悪魔の右手』(06)、『赤んぼ少女』(08)、『おろち』(08)がある。

楳図かずお恐怖劇場「まだらの少女」&「ねがい」セット

すんげぇ!

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最終更新:2009/11/21 11:00
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