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「No1 in HEAVEN」責任編集・安田理央が語る自主制作DVDマガジンの可能性

rio_body.jpg「No1 in HEAVEN」責任編集・安田理央氏

 東京・中野ブロードウェイ内にある有名サブカル系書店・タコシェにおいて、あるDVDが売れているという。そのタイトルは、「No1 in HEAVEN」。著名フォトグラファーの常盤響や、特殊翻訳家の柳下毅一郎、AV界のカリスマ監督・カンパニー松尾ら、名だたるサブカル文化人が名を連ねる、”完全自主制作アダルトDVDマガジン”だ。

 内容は、二村ヒトシや工藤澪といった個性派AV監督が撮影するエロ動画の合間に、ナゴム系コピーバンド・征露丸Xのライブ映像や、マンガ編集者の竹熊健太郎が「自販機本」について語るなど、サブカル系文化人へのインタビューなどがカオティックに挿入された、映像の洪水。制作は、『エロの敵~今、アダルトメディアに起こりつつあること~』(06年、翔泳社)などの著作でも知られるエロ系ライターの安田理央氏が、たったひとりで手がけたという。

 売り上げ好調の要因は、古き良きサブカルへの郷愁か、はたまた、「DVDマガジン」という聞き慣れないメディアに対するカウンターカルチャーとしての期待なのか? 制作に至った経緯と、「DVDマガジン」というメディアの可能性について、”責任編集者”である同氏に話を聞いた。

──そもそも、なぜ自主制作のDVDマガジンを作ろうと思ったんですか?

安田理央(以下、安) 大きなきっかけになったのは、Tumblr(ブログ機能やWebクリッピング機能を備えたネットサービス)ですね。Tumblrはその人のフォロー(読者登録)によって内容が変わっていくんだけど、友達のライターが「Tumblrはエロ本だ」って言い出したんですよ。フォロー次第で、グラビアやヌードがあってサブカル記事もあるような、自分の好きな”エロ本”が作れると。そう言われて、俺がエロ本に求めていたものをハッキリと再認識させられたのが出発点です。

──この「No1 in HEAVEN」は、「黄金期のエロ本の復興」がテーマなんですよね。

 俺はやっぱり、エロとサブカル記事がごちゃ混ぜになったような、90年代頃までのエロ雑誌が好きなんですよね。今のエロ本をなぜつまらないと思うかというと、「エロしかない」からなんですよ。AVメーカーからの借り画像によって成るいわゆる”ヌキ”目的の裸のページしかない。

 ただ、今、昔のようなカルチャーネタ満載の”雑さ”があるエロ本企画を立てて出版社から出そうと思っても、売れないし、そもそも企画が通らないんですよ。そこで、自主制作で、自分の好きな「面白いエロ本」が作れないかな、と思ったんです。

──そういう情熱は、「No1 in HEAVEN」からものすごく伝わってきました。ですが、今回、紙ではなくDVDという形態にしたのはなぜですか?

 エロをやるなら、やはりカラーじゃないとだめでしょ? だけど、キレイなカラーの印刷物を作ろうと思ったら、すごく金がかかるわけですよ。一方DVDは、モノ自体のコストがものすごく安い。DVD-Rなら、注文が来た分だけ自分で焼けばいいし、本当に自主制作向きのメディアだと思いますよ。だから、形態はDVDだけど、自分としては雑誌を作ったという感覚かな。

──「No1 in HEAVEN」を観ると、豪華な出演者に驚かされます。

 Vol.1は、最初に思いついて2週間で作ったんですね。WEBの仕事をしていると、発売までに数週間から数カ月もかかる雑誌やAVのリリースペースって遅すぎるんじゃないかと感じてしまって。それで、短期間で仕上げるために考えたのが、ありものの動画を利用すること。他人にいちから「○○を撮ってきて」って頼むと、みんな遅いじゃないですか(笑)。だから、使えそうな素材を提供してもらったり、撮り下ろしでも、その場で一緒に撮っちゃうという形を取ったんです。

 例えば、「柳下毅一郎と『ヱヴァンゲリヲン:破』を観に行って、飲み屋で感想を聞く」というコーナーは、たまたま彼が「『エヴァ』を観に行こうかな」って言ってたから、「じゃあ、一緒に行こうよ」って声をかけて、ビデオを回させてもらった。そこは、友達であるとかいう個人的なコネが大きいんですけど、家庭用DVD機器で作ってるようなDVDなのに、わりと有名な人が出てる異質な感じを楽しんでほしいというか、「なんだこれは?」と思って手に取ってもらえたらいいなという狙いはありました。

rio_jacket.jpg

──実際に作り上げてみて、周囲の反響はいかがですか?

 「俺もやってみようかな」という人が結構いてうれしかった。でも、面白いのが、そんなこと言ってくれるのって、ライターの人ばっかりなんだよね(笑)。たぶん、俺が感じている危機感と同じようなものを、みんなも感じてるからだと思うけど。

──今回、僕が安田さんにインタビューしたいと思ったのも、そこなんです。特に今、僕のような20代の若い世代のライターって、署名原稿を書いたって名前が売れるわけでもないし、出版社からの依頼をこなして細々と食いつないでいるような人が多いと思うんですね。つまり、職業ライターとしてのアイデンティティの置き場を模索しているところに、この「No1 in HEAVEN」を見つけて、熱をもらったような気がしたんです。

 僕らコンテンツを作る側の人間って、今かなり厳しいじゃないですか。雑誌だけじゃなく、本もCDもDVDも売れなくなってきてる。特に本なんて、印税率も部数も下げられて、いくら書いても赤字ですよ。「じゃあ、どうすればいいか?」って考えた時に、自分の取り分を増やす、つまり出版社とかに中抜きをされない「直販」をすればいいなと思ったんです。

 今回のDVDマガジンは、最初は本当に勢いだけで作ったんだけど、作るにあたって新たに買い足した機材もないし、経済的コストだけでいったら、1枚200円もかかってないですからね。制作費がほとんど出てないから、売れた1枚目から利益が出るというのは大きいですよ。

 もうすでにそうなりつあるけど、ライターは、純粋なライター業だけでは食っていけなくなるでしょう。そのときに、ライターと関係のないバイトをするよりは、自分で作ったDVDの袋詰めをしたほうが、楽しいんじゃないかと思うんだよね。

──出版の現状に対するアンチテーゼというだけでなく、ビジネスとしても可能性があると?

 はい。例えばマンガの同人誌って、あんなに薄っぺらいのに、800円で売れたりするじゃないですか。それは、買うこと自体がひとつの体験というか、面白さだからなんですよね。同じ内容のモノが編集されて大手の出版社から単行本として出ても、あまり売れない。

 バンドやアイドルもそうなりつつあるけど、アーティストが直に売るのが、利幅が大きくて一番いいんですよ。何万部、何十万部は難しいけど、何百、何千っていう話なら、大手企業による既存の流通システムを利用しなくていいわけだし、ちゃんと利益も出る。今は実験段階だけど、真面目に考えたら、ビジネスとしても十分に可能性があると思いますよ。

 「No1 in HEAVEN」みたいなものがきっかけになって、どんどんみんなが自主制作DVDを作って大きなムーブメントになって、「なんだか分からないけれど面白いもの」がたくさん出てくればいいなと思うんですけどね。
(文=エリンギ)

安田理央(やすだ・りお)
1967年、埼玉県生まれ。雑誌編集プロダクション勤務、コピーライター業を経て、94年よりエロ系フリーライターとして独立。風俗、AVなどのアダルト系記事を中心に、一般週刊誌からマニア誌まで、幅広く執筆。その一方で、AV監督やハメ撮りカメラマンとしても活動する。主な著作に「デジハメ娘。」(マドンナ社、03年)、『日本縦断フーゾクの旅』(二見書房、04年)、『エロの敵~今、アダルトメディアに起こりつつあること~』(翔泳社、06年)など。

『安田理央責任編集「No1 in HEAVEN」 Vol.1』
収録時間:DVD-R:120分+DVD:50分 2枚組
販売価格:2000円

『安田理央責任編集「No1 in HEAVEN」 Vol.2」
収録 時間:DVD-R:120分+CD1枚 2枚組
販売価格:2000円

中野タコシェ、アリババ秋葉原店、安田氏公式サイト<http://no1inheaven.tumblr.com/>で販売中。

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最終更新:2009/12/21 11:29
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