日刊サイゾー トップ > カルチャー  > 「今回はお祭です!」脚本家・中島かずきが”男のドリル”に託した熱すぎる想い
DVD『劇場版 天元突破グレンラガン 螺巌篇』発売記念インタビュー

「今回はお祭です!」脚本家・中島かずきが”男のドリル”に託した熱すぎる想い

nakashima_main.jpg「自分たちが受け取ったバトンみたいなものを、次の世代に伝えたい」
と語る脚本家・中島かずき氏

 ゼロ年代が終わり、この10年で一番「熱かった」アニメとは? そう問われれば、『天元突破グレンラガン』と答えるしかないだろう。ドリルに想いを込めて、ひたすら未来に向かって突き進む。そんないまどき珍しいくらいのド直球な熱血ロボットアニメ『グレンラガン』は、2007年のテレビ放映終了後も根強い人気を誇り、08年から09年にかけて2本の劇場版が制作されるに至った。

 そして、2010年1月27日。真の完結編となる『劇場版 天元突破グレンラガン 螺巌篇』のDVDが、満を持して発売される。テレビシリーズの再編集版、という枠には収まりきらないほどの密度と勢いを秘めた『螺巌篇』に込められた想いとは一体何なのだろうか。作品の完結を記念して、前作『紅蓮篇』に続き今作『螺巌篇』でも脚本を担当し、またその他にも編集者、「劇団☆新感線」の座付作家など多方面で活躍する中島かずき氏に、その全てを語ってもらった。

■『螺巌篇』は「東映まんがまつり」だ!

──全26話のテレビシリーズを、2本の劇場版にまとめ直す作業は相当大変だったと思うのですが。

中島 そうですね。特に『螺巌篇』は想像以上に大変でした。クライマックスに関しては、テレビシリーズでやりきった感覚があったので、あれ以上のものは出てこないと最初は思ってたんですよ。

──ラストで全員天元突破しちゃう。あの展開は本当に予想外でした。

中島 スタッフ一同悩んでいた時に、メカデザインの吉成さんが「『紅蓮篇』は東映まんがまつりだったよね」って言ったんです。その一言で、今回は一番最後のお祭りだからとにかく派手にいけばいいんだと開き直りました。その答えが天元突破祭りです。劇場アニメはお祭りだ、という所に立ち返った感じですね。

──それが舞台挨拶の時に言われていた「お祭り感覚」ですね。その時に「ドラッグ・ムービー」という発言もありましたが。

中島 『螺巌篇』を試写で見た時に、情報量が多すぎて僕でも脳が作品に追いついていかなかったんです。でも、エモーションだけは感じたんです。それでドラッグ・ムービーを見ているような感覚がしたんです。圧倒されるというかね。

──それは毎週放送するテレビシリーズと違い、120分1本勝負の映画ならではのドライブ感ですよね。

中島 そうです。確かに話の持っていき方としてはテレビ版の方が正しいっていうのはあると思うんですが。

──『螺巌篇』一番の見どころはどこですか?

中島 やっぱりロージェノム・ヘッドのハッキングシーンですね。後はグレンラガン0巻ってコミックスがついてきます。嘘です(笑)。真面目な話、お祭り感覚と、作品全体のドライブ感を楽しんで欲しいです。『グレンラガン』って基本的には、お腹いっぱいなところに、さらに口に突っ込むみたいなところがあるので(笑)。

──そうですね。特に最終決戦のスケール感はお腹いっぱいどころか、どこから食べようか、みたいな。

中島 最後に宇宙を投げるというのは、絶対やろうって思ってたんですよ。それを(副監督の)大塚さんに話したら、本当に渋い顔をされましたが(笑)。ただ、銀河の八艘飛びを見たときには、今石監督に「あなた、宇宙ってものを間違って捉えている」って言いましたけどね(笑)。あれは彼のアイディアでした。

nakashima_sub.jpg

■熱い魂を次世代に繋ぐために

──『グレンラガン』のテレビシリーズは4部構成で、70年代からゼロ年代までのアニメ文化を追いかけていったという裏テーマがありますが、これは最初から最後まで意識して作られましたか?

中島 最初はそれを主題歌でやりたかったんですよ。最初に『マジンガーZ』みたいな王道ロボットアニメ的な主題歌で始まって、次に『超電磁マシーン ボルテスV』みたいな女性ボーカルの主題歌。そして富野(由悠季)さんのアニメ(『重戦機エルガイム』『機動戦士Zガンダム』など)みたいなJ-popっぽい曲になって、最後に今のアニメソングみたいなアーティストとのタイアップ曲にするのはどうだろうと。「4回も主題歌を作れません」って制作サイドににべもなく却下されましたが(笑)。

──その名残が歌詞の1番と2番を切り替えるところですね。

中島 でも、それが結果的にすごく効果的だったと思います。作品の空気を切り替えるという意味でね。ただ、最初のミーティングの時には、コンセプトとして時代性を取り込むという話は存在してはいたんですが、実際に制作していくうちに、途中からは曖昧になっていきました。だから、そこまでコンセプチュアルに作っていたわけではないです。

──主題歌の歌詞が2番になってからの、いわゆる第3部の展開は意外でした。

中島 僕らは最初、3部が一番受けると思ってたんです。逆にカミナっていう(熱血な)キャラクターが、今の時代にどう受け入れられるのかなって不安でした。ところが、予想以上にカミナが若い層に受け入れられたんですよね。だから3部になってから「欝になった」って声が出て驚く一方で、お客さんがああいう「熱さ」をこんなにも受け入れてくれてたんだっていう意外感はありましたね。

──今、「熱血」をアニメや漫画で扱おうとすると、ややもするとギャグやパロディに振れてしまう風潮がある気がします。そんな中で『グレンラガン』は正面突破で熱血を描ききりました。今、あえて泥臭い熱血を描いた理由は何でしょう。

中島 もう自分たちが好きだからです。それに僕たちは単純に「熱血」を描いているわけじゃないです。死ぬ奴はちゃんと死ぬし、人類が正義だと思って戦ってたら、実は人類はもっとひどいことをやってたって分かるし。そういう意味では、かなり客観的な視点で作品を描いている。だからシンプルな熱血ドラマというわけでもないんですよね。でもその中で、人として曲げてはいけないことがあるという事も描いてる。信じた道をまっすぐ進むことで道が開けるというのを熱血というのならば、そういうところを自分たちなりにキチっと描いているから、多くのファンに『グレンラガン』が受け入れられたのだと思いたいですね。

──死を描く、というところで最初にショッキングだったのが、カミナのお父さんの死骸をちゃんと描いていた部分です。

中島 それもそういうメッセージです。何の力もない人間が地上に出たら死んでしまう。決して仮面をかぶって復活なんかもしない。でも、『グレンラガン』はそこから先に進むよ、という。あのエピソードは「この作品はそういう物語だ」という宣言です。結局6話後にはカミナも死んでしまうわけですから。ただ志は残っていく。

──魂の継承を描いているんですね。

中島 そうですね。シモンはカミナの遺志を受け継ぎ、成長して、最後にカミナを乗り越えていく。そして続く世代に、ちゃんとシモンが志を渡して去っていくっていうところまでをやりたかったんです。

──それが視聴者の子どもたちに伝えていきたいメッセージ。

中島 そういう想いを繋いでいきたいっていうのはありますよね。「宝島」とか『ガンバの冒険』などの作品を通じて、自分たちが受け取ったバトンみたいなものを、次の世代に伝えたいという気持ちはあります。だから『グレンラガン』は、中高生辺りに観て欲しいと思っていました。自分の子どももちょうどそのくらいの年代だというのもあって、親父の世代から彼らに投げかけたものが、何かしら響けばいいなと。

──それを受けて10年、20年後に『グレンラガン』みたいな作品を作りたいって世代が出てきたら面白いですよね。

中島 うん。それで、その時もまだ僕らが現役でいたら「じゃあ、こいつら潰すか」って、嫌な先輩として登場したい(笑)。いじめていきたいですね、ロージェノムみたいに。

──(一同笑)。では最後に、ロボット好きとして、中島さんはどのバージョンのグレンラガンが一番好きですか?

中島 超銀河グレンラガンかなあ。肩にドリルがついてるのが面白かったですよね。

──ドリルは、やっぱり男の象徴という捉え方でいいのですか?

中島 うん。ただ、ドリルっていうと男の象徴。熱血って言うとああいう感じっていう、そういう表層で言われている事に対して、『グレンラガン』では中身を詰めたかったんですよ。「所詮ドリルロボットなんでしょ?」っていう人たちに対して、「お前ら、最後まで観とけよ」っていう思いはありましたよ。ドリルを男の象徴というのなら、ここまでやろうよ。26話を徹底的にドリル1本で描いて、宇宙まで貫こうよっていうのはありましたね。

──まさかドリルの話が、宇宙の根源に関わるまでのスケールに発展するとは思いませんでした。

中島 あのスケール感は石川賢さんの担当をしていた頃に(注:中島さんは編集者でもある)「ゲッターエンペラーは大きさが惑星サイズのロボットだから、変形するのに200年かかる」って話を聞いた時の衝撃を表現したくてやったという部分もあります。そういう面白いものを見てきて、割と近くにいる機会もあった自分としては、そういう先達の描くカタルシスみたいなものを、次世代の子どもたちに伝えられればいいなあと思ったんです。『螺巌編』は、その総決算みたいな感じですね。
(取材・文=有田シュン)

●なかしま・かずき
1959年、福岡県生まれ。85年より「劇団☆新感線」に座付き作家として参加。03年、『アテルイ』で第47回岸田國士戯曲賞受賞。本業は双葉社の編集者でありながら、映画、舞台、テレビアニメ、小説など様々なエンターテインメント分野で精力的な活動を続けている。

nakashima_sub02.jpg
amazon_associate_logo.jpg

●「劇場版 天元突破グレンラガン 螺巌篇」
・発売日 2010年1月27日
・税込価格
完全生産限定版:7,140円/通常版:5,040円
・品番
完全生産限定版:ANZB-2787/通常版:ANSB-2787  
・仕様(予定)
完全生産限定版:DVD2枚+CD1枚+縮刷版パンフレット+ピンナップ+錦織敦史描き下ろし三方背BOX+吉成曜描き下ろしデジパック
・ディスク3枚組 詳細
【本編DVD】本編+オーディオコメンタリーを2本収録
1)キャストコメンタリー出演:柿原徹也(シモン役)・井上麻里奈(ヨーコ役)・福井由佳梨(ニア役)・檜山修之(ヴィラル役)・中島かずき(脚本)他
2)スタッフコメンタリー出演:今石洋之(監督)・大塚雅彦(副監督)・錦織敦史(キャラクターデザイン・作画監督)・吉成曜(メカニックデザイン)他
【特典DVD】
1)スタッフインタビュー集「VOICES~26人の証言~」:3年以上に渡って制作が続けてられてきた「グレンラガン」全てを総括して関わった多くのスタッフ達へのインタビューを実施
2)初日舞台挨拶ドキュメント:公開初日の舞台挨拶の様子を収録
【特典ドラマCD】
中島かずき書き下ろし「男組だよ! グレンラガン」

※通常版:本編DVDのみ(オーディオコメンタリー収録)
※特典・仕様は予告なく変更になる場合がございます。ご了承下さいませ。
(C)GAINAX・中島かずき/劇場版グレンラガン製作委員会

【関連記事】 『マイマイ新子と千年の魔法』地味すぎるアニメ映画が起こした小さな奇跡
【関連記事】 絶賛と拒否反応が渦巻くハイブリッドアニメ『空中ブランコ』の果てなき挑戦
【関連記事】 「ゼェェェット!」アニソンの帝王・水木一郎が見据える世界への道程

最終更新:2010/01/26 11:00

「今回はお祭です!」脚本家・中島かずきが”男のドリル”に託した熱すぎる想いのページです。日刊サイゾー芸能最新情報のほか、ジャニーズ/AKB48/アイドル/タレント/お笑い芸人のゴシップや芸能界の裏話・噂をお届けします。その他スポーツニュース、サブカルチャーネタ、連載コラムドラマレビューインタビュー中韓など社会系の話題も充実。芸能人のニュースまとめなら日刊サイゾーへ!

ページ上部へ戻る

絶対的満足度の至宝店すべて見る

人気連載すべて見る

元木昌彦の『週刊誌スクープ大賞』

「週刊現代」「FRIDAY」の編集長を歴任した"伝説の編集者"元木昌彦による週刊誌レビュー

“キング・オブ・アウトロー”瓜田純士、かく語りき

“キング・オブ・アウトロー”瓜田純士の最新情報をお届け! 嫁・麗子も時々登場。

テレビウォッチャー・飲用てれびの『テレビ日記』

テレビの気になる発言から、世相を斬る!

じゃまおくんのWEB漫クエスト

マンガレビューブログ管理人じゃまおくんが、インターネットに埋もれる一押しマンガを発掘!

腹筋王子カツオ『サイゾー筋トレ部』

“腹筋インストラクター”腹筋王子カツオさんが、自宅でも簡単にできるエクササイズを紹介!

イチオシ企画

【PR】DYM・水谷佑毅社長の野望とは?

医師免許を持つ、ベンチャー経営者の異色の半生!
写真
特集

志村けん急逝――悲しみ広がる

お笑い界のレジェンドが残した偉大な功績の数々を振り返る!
写真
人気連載

『ポップスター』無垢な少女の変貌

 炎上タレントと呼ばれる人たちがいる。一般モ...…
写真
インタビュー

モラハラ夫がそれに気づくまで(3)

 農林水産省の元事務次官の熊澤英昭容疑者が44歳の長男を殺害した事件では、息子による...
写真