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【元木昌彦の「週刊誌スクープ大賞」第31回】

放逐された朝青龍、残った小沢、トヨタの呆れた対応……週刊誌はどう読む!?

motoki0209.jpg「週刊朝日」2月19日号

●第31回(2月2日~2月9日発売号より)
第1位
「『見込み捜査』が残した『醜い汚点』」(「週刊朝日」2月19日号)

第2位
「トヨタを追い詰めた月刊誌」(「AERA」2月15日号)

第3位
「内館牧子が語る”天敵”の素顔と闘争」(「週刊朝日」2月8日号)

 月曜日発売の週刊誌は、小沢一郎と朝青龍の話題で競っている。私もそうだったが、大方は、小沢在宅起訴はありえるかもしれないが、朝青龍は今回も逃げ切るのではないかと思っていたのではないか。それが一転、小沢は元秘書が3人も起訴されたのに、本人は不起訴。朝青龍は知り合いの暴力団まで使って示談にこぎ着けたのに、引退に追い込まれた。

 まず、朝青龍問題から見ていこう。朝青龍の八百長問題を告発し、朝青龍ら30人から名誉毀損で訴えられ、一審では4,260万円の賠償金を払えとされた「週刊現代」は、これまでの朝青龍のご乱行の数々をおさらいし、モンゴルに帰った彼が、八百長問題などを暴露してくれるのではないかと期待しているようだが、とてもそんなタマではないだろう。だが、引退式終了後にでも(「現代」の)武田記者がモンゴルへ飛んで、インタビューしてみる価値はあるはずだ。

 「週刊ポスト」は引退を決めた理事会での一部始終として、新理事・貴乃花が、朝青龍が辞めることに同意したことで、引退への流れができたとする。採決は7対5で引退すべし。

 しかし、「朝青龍が退職金と祝儀を手にした後に、”協会の暗部を暴露するぞ”と、さらなるカネを無心してきたらどうするつもりなのか。断固たる姿勢を示さなかったことで、今後も朝青龍に弱みを握られ続けることになりはしないか……」(若手親方)と、うやむやに決着したことが、禍根を残すのではないかと書いている。

 やはりこの問題では、朝青龍の「天敵」といわれた前横審委員の内館牧子さんの感想を聞いてみたい。「週刊朝日」で内館さんが引退の記者会見で、朝青龍の、品格、品格といわれてきたが土俵に上がれば鬼にならなければという気持ちだった、という言葉に対して、「この言葉にグッと来たファンの方も多いと思う(中略)土俵の上で鬼になった力士は数々いた。だが朝青龍は、土俵上で髷はつかむ、行司に文句を言う、ダメ押しをするなど乱暴を尽くしている。土俵の外でも狼藉を繰り返した。それを『鬼』という言葉で語るのは詭弁以外のなにものでもない」とまたもや一刀両断。

 一番思い出に残る相撲が、横綱武蔵丸を倒したことだと語ったことにも触れ、強くなりたいという思いが強かった朝青龍を「周囲がもう少ししっかり教育してあげられなかったのか、という思いが胸をよぎった」と語っている。

 小沢問題へいく前に、日本の根幹をなす超大企業トヨタがリコール問題で揺れているニュースに触れたい。

 トヨタの横山裕行常務が2月4日に行った緊急記者会見の際、ユーザー側の微妙な感覚のずれであって、新型プリウスは欠陥車ではないと発言したのを聞いて、その傲岸不遜な態度に呆れた。トヨタまでもが「危機管理」ができなくなってしまったのだ。

 案の定、翌日、あわてて豊田章男社長が名古屋市内で記者会見を開き、お詫びし、国内で販売したプリウスについては、今週中にもリコール(回収・無償修理)する意向を販売店などに伝えたが、対応が遅すぎる。

 「AERA」は「トヨタを追い詰めた月刊誌」というタイトルで、アメリカにトヨタ批判が巻き起こっていると伝えている。

 トヨタの現地法人がアクセルペダルの不具合で、米国内で約230万台のリコールを発表したが、マスメディアに先駆けてトヨタの品質問題を詳細に報じてきたのが、米消費者のバイブルといわれる「コンシューマー・レポート」だった。

 1936年創刊で、非営利団体、記事の公平性を保つために一切広告は掲載しない月刊誌だ。自動車から電器製品まで、自ら購入した製品を自社でテストし、結果を公表している。トヨタ車に関しては、昨夏の死亡事故以来、ウェブ版で頻繁に報じているという。

 トヨタ批判が大きくなっている背景には、GMを抜いて首位に立った「環境の変化」があることは間違いない。「長年、品質の完璧さで業界トップの座を謳歌してきた企業が、一転して大きな問題を抱え、苦悩している。メディアはそれをドラマチックに報じたいのではないか」(ペンシルバニア大ジョン・ポール・マクダフィー教授)。地に墜ちたGMにはドラマがないようだ。

 今やクルマはテレビや冷蔵庫と同じように品質は均一化され、長持ちするようになった。それでも、多くのユーザーがトヨタ車を購入するのは、性能がいい、安全だという、ある意味では漠然とした「安心感」からである。そうしたものは一夜にして崩れる、砂上の楼閣のようなものかもしれない。

 トヨタは国家なりという驕りが、このところの対応の遅さに結びついたのではないか。日本にも、「コンシューマー・レポート」と同じように、1946年に花森安治氏によって創刊された「暮らしの手帖」という雑誌がある。だが、かつてのような「力」はないように思う。日本でもNPOのようなものを立ち上げ、電器製品や自動車、食品までを、消費者の側にたって徹底的にテストする雑誌またはウェブが、今こそあってもいいと思うのだが。

 第1位はどれにしようか迷いに迷った。各誌の小沢関連のタイトルを列挙してみよう(「週刊新潮」、「週刊文春」は先週4日発売だから除く)。「『小沢抹殺攻防』黒幕は『小泉』だ!」(ポスト)「特捜『完敗』で始まる検事総長『クビ切り』」(サンデー毎日)「脱税容疑で捜査続行!小沢対検察 第2幕」(週刊現代)「緊急アンケート 東京地検特捜部は体質改善しろ」(AERA)「『見込み捜査』が残した『醜い汚点』」(週刊朝日)

 当然ながら、これまで強引とも思える捜査をしてきた特捜部への批判が多い。「週刊ポスト」は、検察の裏金問題が発覚した01年当時、時の原田明夫検事総長らが政治家ルートを使って、人事を凍結していた小泉首相に承認を求め、小泉首相は検察に恩を売って生殺与奪の権を握ったという。自分の時代にやったことをひっくり返そうとしている小沢に対して、小泉が怒り、小沢を政治的に抹殺しようと動いたのではないかと「推測」する。

 「AERA」の緊急アンケートで、検察の説明は十分だと思いますか? という問いに、説明不十分132人、説明は十分21人。小沢の説明も不十分だが、もっと検察は不十分だと思っているのが大多数だとしている。

 東京地検特捜部の小沢捜査は、これからが本番だとするのは、今や小沢批判の総大将「現代」である。検察は、政治資金規正法違反ではなく、押収した資料を国税と洗い出し、脱税を視野に入れているというのだ。

 多くの週刊誌で言及しているのが、今回の玉虫色決着の裏では、次の検事総長人事をめぐって、民主党はこれまでの人事を変えないということで、検察と小沢は手を打ったという見方だ。

 検察批判の急先鋒「朝日」は、先週、地検が石川議員の女性秘書を10時間も取り調べ、恫喝したという上杉隆氏の記事で、山口編集長が、東京地検から事情聴取のために出頭要請を受けたそうだ(結局、出頭には応じないで、地検から抗議書が送られてきた)。

 「不起訴」はしてやったりだろうが、今週の記事は、タイトルは検察に厳しいが、内容は検察批判ばかりではなく、小沢にも切っ先が向けられている。

 「小沢氏周辺のカネの流れは複雑で、いまも”疑惑”は渦巻いている」とし、検察の執念は、4日に会見した佐久間特捜部長の「小沢氏からの借り入れと認定した。陸山会に入る前に、いったん小沢氏に帰属している」という言葉のなかに表れていると読む。

「つまり、小沢さんの所得になったということ。所得税がどう処理されているか見ていると暗に言っているんです。間違いなく検察は第2幕を狙っています」(検察OB)

 おいおい、これでは「現代」と同じじゃないかと思わせるが、ここに山口編集長の動物的な勘がある。「朝日」は徹底的に検察批判で押してくると思わせて、小沢幹事長へもジャブを放つ。大方の国民も、これで小沢疑惑が決着したとは思っていないはずだ。いつ風が変わっても対応できるようにしておくのが週刊誌というものだから、この姿勢は正しい。よって第1位に推す。
(文=元木昌彦)

motokikinnei.jpg撮影/佃太平

●元木昌彦(もとき・まさひこ)
1945年11月生まれ。早稲田大学商学部卒業後、講談社入社。90年より「FRIDAY」編集長、92年から97年まで「週刊現代」編集長。99年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長を経て、06年講談社退社。07年2月から08年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(2006年8月28日創刊)で、編集長、代表取締役社長を務める。現「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催、編集プロデュースの他に、上智大学、法政大学、大正大学、明治学院大学などで教鞭を執る。

【著書】
編著「編集者の学校」(編著/講談社/01年)、「日本のルールはすべて編集の現場に詰まっていた」(夏目書房/03年)、「週刊誌編集長」(展望社/06年)、「孤独死ゼロの町づくり」(ダイヤモンド社/08年)、「裁判傍聴マガジン」(イーストプレス/08年)、「競馬必勝放浪記」(祥伝社/09年)、「新版・編集者の学校」(講談社/09年)「週刊誌は死なず」(朝日新聞社/09年)ほか

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最終更新:2010/02/10 20:41
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