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日本"未解決事件"犯罪ファイル

“白昼の惨殺劇”母親が刺殺される一部始終をトイレの中で聞いていた娘……

hannin01.jpg長女・やす子さんの証言をもとに作成された犯人
の似顔絵

何かが狂ってしまった現代社会。毎日のようにニュースに流れる凶悪事件は尽きることを知らない。そして、いつしか人々はすべてを忘れ去り、同じ過ちを繰り返してゆく……。数多くある事件のなかでも、未だ犯人・被疑者の捕まっていない”未解決事件”を追う犯罪糾弾コラム。 

【第12回】
堺市西区神野町における母娘殺傷事件(2006年1月)

 2006年1月10日午後2時50分頃、弁理士・沢喜代治さん(当時58歳)の留守中に自宅玄関のベルが鳴り響いた。妻・真喜子さん(当時51歳)がドアを開けると、見知らぬ背の高い痩せた男が立っていた。「どちらさまですか?」「何かご用かしら?」……おそらく、真喜子さんはこのような問いかけをしたのではないだろうか。しかし、すぐに異常事態であることに気付く。男の手に握られていた衣類の中から、鈍く光る刃物が覗いていたのだ!

「キャアーーーーッ!!」

 真喜子さんの悲鳴を聞き、トイレの中にいた次女・やす子さん(当時21歳)が驚いてドアを開けると、真喜子さんの上に覆いかぶさって刃物を振りかざす男の姿が見えた。やす子さんの視線に気付いた男は、すぐに立ち上がってトイレの方に駆け寄り、持っていた刃物でやす子さんの顔を切りつける。恐怖と痛みから無我夢中でトイレのドアを再び閉めたやす子さんは、そのあと悪夢のような時間を過ごすことになる。男の気が逸れた瞬間、真喜子さんは力を振り絞って立ち上がり、何とか逃げ出そうと試みたが、執拗に追い回され、やがて力尽きてしまう……。その一部始終をドア1枚隔てた狭いトイレの中で聞くしかなかったやす子さんの胸中を察すると、心が痛んで仕方がない。

 やがて物音がしなくなり、やす子さんが恐る恐る外に出てみると、玄関先で血だらけになって倒れている真喜子さんを見つけた。玄関に鍵をかけ、真喜子さんに近寄ると、かすかに息があった。やす子さんはすぐに119番通報して救急車を呼んだが、病院に運ばれてから約1時間後、真喜子さんは帰らぬ人となってしまった……。やす子さんも顔に切り傷・刺し傷など全治10日間の傷を負ったが、それ以上に心に負った傷は当事者にしか計れないほど深いだろう。

 その後の警察の調べで、庭先から刃渡り17cmの包丁、家の中からは包丁をくるんでいたと思われるグレーのトランクスが発見された。包丁は刃と柄の間に粘着テープが何重にも巻かれていたことから、人を刺したときに自分の手を傷付けないように細工していたことが窺え、一部計画的な犯行だったことを裏付けている。しかし、やす子さんの証言から犯人が素手だったことも分かっており、粘着テープからは複数の指紋、トランクスに付着していた垢からはDNAが検出され、持ち主の血液型がAB型であることが判明するなど、かなり大雑把な性格と見て取れる。また、母娘2人の傷跡が身体の右側に集中していることから、犯人が左利きである可能性が高いと判断されている。

 これだけの証拠や犯人特定に繋がる情報が多数揃っているにもかかわらず、未だ犯人逮捕には至っていない。実は事件現場付近では、以前から刃物を持った男の姿が度々目撃されていて、被害者の家族も身を震わせていたという。しかしながら、警察は有効な対策を取らず、犯人を野放しにしていたと言っても過言ではない。もう少しパトロールを厳重に行ってもらえていれば、近隣住民への警戒の呼びかけが浸透していれば……そう思うと歯痒さが止まらない。返り血を浴びた犯人は、昼間の住宅街を誰にも目撃されることなく去って行ったのだから。

 警察が威信をかけて捜査を継続し、犯人が逮捕され、法で裁かれ、遺族の心が少しでも安らぐ日が訪れるのを待ち続けたい。
(取材・文=神尾啓子)

haninin03.jpg犯人が現場に残していったトランクス
(コンバース/グレー/Mサイズ)

<情報>
【犯人の特徴】
・20~30歳代
・身長約170cm
・痩せ型
・ボブカット
・色白、ひげが濃い
・頬がこけている

【犯人の服装】
・薄手のジャンパー(ベージュ)
・ジャンパーの袖を絞っている
・スウェットのようなズボン
・運動靴

【遺留品】
・包丁(刃渡り17cm/100円ショップなどで販売)
・コンバースのトランクス(グレー/Mサイズ)

<連絡先>
大阪府西堺警察署捜査本部
TEL 072-274-1234(内線615/617番)
FAX 072-273-2230

未解決事件ファイル 真犯人に告ぐ

逃げられないんだから。

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最終更新:2010/06/02 15:00
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