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JASRACとファンキー末吉問題

JASRACに突撃取材!! 著作物使用料の徴収方法と分配方法の真実(後編)

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――さて、巷で話されている都市伝説の真偽を教えてください。「筋肉少女帯の大槻ケンヂが自分のエッセイに自身が作詞した筋少の曲『高円寺心中』の歌詞を載せたところ、JASRACから歌詞の著作物使用料を徴収されてしまい、しかもその金額が印税としてまったく還元されなかった」というウワサがあります。2008年にこれは大槻さん自身が、雑誌「ぴあ」で単なるウワサだと否定しましたが、一般的にこのような事例はありえるのでしょうか? また、本に歌詞をどの程度引用した場合から申請が必要になるのでしょうか?

JASRAC 出版物に歌詞を載せる場合、歌詞を書いた方が自身の曲を載せたとしても、著作権の手続きを取らなければならないのは、出版の責任者である出版社になりますので、ご自身が著作物使用料の請求を受けることはありません。歌詞の「引用」などは、法律上認められています。引用の判断は、著作権法の第32条に「公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない」という引用の規定があります。歌詞を1行ならいい、2行ならいいという話ではなく、引用の仕方が問題で、この対応はケースバイケースにならざるを得ません。でも、丸ごと歌詞を載せる、楽譜を載せる場合は、通常の利用になるので手続きは間違いなく必要です。このような引用の問題については、個別の具体事例を法文上に盛り込むことはできませんから、裁判で争われることもあります。

――「Twitterで歌詞をつぶやいたら、著作物使用料が発生する」とニコニコ動画のニコニコ生放送でJASRACの菅原常務理事が発言されました。今後、Twitterにはどのような対応を取られるのでしょうか?

JASRAC Twitterについては現在検討中です。管理する可能性もあります。

――使用料を徴収するとしたら運営会社でしょうか? 個人でしょうか?

JASRAC どなたに手続きをお取りいただくかは、未定です。でも、個人の方にお願いするのは難しいでしょうね。

――既存のネットサービスにはどのように対応されているのでしょう?

JASRAC ネットで許諾を得ていない歌詞が掲載されている場合はJASRACで調査し、見つけたものには連絡して、契約の手続きを求めています。個人でホームページに歌詞を載せる場合は、1曲あたり1カ月150円、1年の契約で1200円で掲載することが可能です。

――JASRACは権利者のことを考えて公明正大に職務を全うされているように思えます。ですが、世間のJASRACを見る目は非常に厳しい。この点はどのようにお考えですか?

JASRAC 飲食店などの社交場の契約で、支払いを長年にわたって拒否されていた利用者の方が、法的措置になった場合に多額の金額を徴収された、という報道に対して反感を持たれてしまっているように思います。Aという店には長年支払ってもらっているのに、その隣にある店のBが拒否されては、Aとの公平性を欠くのでBを放置できません。社交場から著作物使用料を支払ってもらうのは、粘り強く交渉するしかありません。実は、JASRACの職員が著作物使用料の徴収に出向いて、危険な目にも遭うことがあります。それでも、権利者に著作物使用料を分配することが目的なので、著作物使用料の支払いを拒否している人を放って置くわけにはいきません。

――ネットユーザーというのは、YouTube、ニコニコ動画など、無料で音楽・動画を利用することに慣れています。包括契約で、ニコニコ動画やYouTubeはJASRACに支払う契約を結んでいますが、今後、Twitter、USTREAMなどさらに新たなネットサービスが台頭することは予測されます。この状況の中でJASRACはどのような対応を取っていくのでしょうか?

JASRAC ネットでの音楽配信などのビジネスが成り立たないと、今後、音楽業界は崩壊する可能性があります。JASRACのような管理事業者が著作物使用料を決める場合には、著作権等管理事業法にもとづいて、利用者団体などからあらかじめ意見を聴取するよう努めなければなりませんので、こちらで勝手に届けを出して、勝手に管理することはできません。NMRC(ネットワーク音楽著作権連絡協議会)などネットを使った新しいビジネスを行う人達と、意見交換できる窓口は常に設けているので、スピーディーに決めていきたいと考えています。そのほか、ネット配信で著作物使用料を正当に評価できる仕組みを考えないと、最終的にユーザーが不利益をこうむることになります。

――やはりもっと、JASRACの職務内容を世間に周知徹底する必要がありますね。

JASRAC ユーザーに著作権の大切さをどう理解してもらうか、広報していくかは常に模索しています。役員がニコニコ動画に出演したり、誰もが来てもらえる公開シンポジウムを開いたり、努力はしている。ほかにも、ラジオCMを流しているほか、中学生、高校生の訪問を受け入れたり、大学の講座で話もしています。若年層に向けたアプローチを今後もっと考えていこうと思っています。

 * * *

 作詞、作曲者が作った楽曲がテレビ、映画、カラオケなどで利用された際に、その利用者から著作物使用料を徴収し、その作家に正当に分配するJASRACの存在は、作詞、作曲者には非常に貴重な存在だ。音楽を愛する人であれば、自分が利用した音楽の著作物使用料が作詞家、作曲家に分配されるなら文句を言う人はいないだろう。だが、JASRACの著作物使用料の徴収方法などはまだまだ世間に浸透しておらず、今後もJASRACのあり方については、時代に即した制度にするべく議論が必要だ。JASRACによって、日本の音楽文化がさらに発展することを願いたいものだ。

 そんな中、今回のファンキー末吉とJASRACの議論を記事にするのは、今回の取材をもって終結させようとしていた矢先、ファンキーがまたも自身のブログで激昂した。「今回の私の申し出をJASRACが断ったとしたら、お話しには行きたいが、客を入れたりネット中継されるのは勘弁してくれ、と言うならば!! そしたらワシはJASRACに出向いて行こう!! 来てくれないならワシから出向いて行くしかない!! ワシは著作権料を支払いたいのだ!!」(文章一部略)

 どうやらファンキー氏、JASRACに自ら乗り込むつもりだという。JASRAC VS ファンキー末吉、第2章。事態の進捗にご期待あれ。
(文=本城零次<http://ameblo.jp/iiwake-lazy/>)

JASRAC概論―音楽著作権の法と管理

著作権って、大事なのよ。

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最終更新:2010/06/19 11:00
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