日刊サイゾー トップ > 社会  > 「選挙費用は5,000万円」「コアターゲットは60代」選挙のプロが参院選を振り返る

「選挙費用は5,000万円」「コアターゲットは60代」選挙のプロが参院選を振り返る

 民主党の大敗、みんなの党の躍進、タレント候補の大惨敗──。悲喜こもごも、さまざまなドラマを生みながら、第22回参議院選挙は幕を閉じた。当選した議員は今後6年間、年額2,193万1,607円の歳費(期末手当含む)が保証されるが、落選候補は運動費用の元をとる(?)ことなく散ったことになる。

「勘と経験だけで闘っていた昔の選挙と違い、今は選挙コンサルの力が大きなウエイトを占める」と言うのはあるベテラン政治記者。委託を受けた候補者を当選させるために、さまざまなリサーチや選挙戦略の立案、ポスターやチラシのディレクションなど、選挙全般のコーディネートを行なうプロフェッショナルな「選挙プランナー」の力が不可欠なのだと言う。

「今でも田舎の選挙に行くと、地縁や血縁だけで『あの親分を抑えたから20票』みたいなやり方してるけど、都市部に行くほど思想信条も多様化して浮動票も多い。合理的なマーケティング抜きでは正確に票が読めないし、票が読めなきゃ選挙も勝てない」というわけだ。

 そこで、選挙コンサルティングを行なっている「株式会社ダイアログ」(中央区銀座)代表の松田馨氏に、昨今の選挙事情と実際にかかる費用について聞いてみた。

「たしかに、マーケティングの徹底と票読みは、ここ4~5年でかなり広まりました。具体的にはオートコールという方法で、テレビ局や新聞社の世論調査と同じやり方です」

 オートコールとは、あらかじめ作成したアンケートメッセージを、対象とする地域住民の固定電話へ自動的に発信し、回答があった録音記録を集計する手法。大手メディアの世論調査の他、各種市場調査やイベント告知などにも利用されている。”生身”のオペレータがいきなり電話をかけるよりも警戒心が解かれ、回答率が高いのだという。

「偏りが出ないように選挙区全域に調査をし、有権者数と投票率に基づいて選挙区を分析しながら、1,000以上の有効サンプルを集めます。これにより、A候補が○○○票、B候補が△△△票と実数を算出し、調査時点での票差や、投票を決めていない浮動票の数を把握します。選挙調査とは、言い換えれば選挙運動の効果測定。毎日の駅立ちやビラの折り込みなど、活動の効果をデータに基づいて正確に知ることが当選確率を高めることになります」

 また、選挙区の住民動向によっても闘い方は変わってくるという。

「新住民が多いベッドタウンでは、地縁がないから投票率も低くなりがち。そういうエリアでは女性票の獲得に走ります。主婦層が家にいる曜日や時間を狙ってポスティングをしたり、スーパーの特売チラシが入る日に合わせて、こちらも折込みを入れたりします」

 いわゆる「ネット選挙」については一定の効果を期待しながら、やや懐疑的だ。

「公職選挙法が改正されてネット選挙が解禁になれば、USTREAMなどの街宣ライブや自前の政見放送という試みが増えそうですが、それが即ち票につながるものでもない。HPやポスターなど既存メディアと連動させたトータルな戦略がないと自己満足に終わるでしょう。結局、選挙は20~30代より、投票所に足を運ぶ50~70代が狙いめ。特に60代の票をいかに獲得するかが鍵です。今の60代がiPhoneでUST見ますか? 選挙民の多くが普通にネットで選挙情報を仕入れる時代になるには10年かかる。それまではチラシやポスターも並行して必要ですから、コストは減るどころか、しばらくは逆に増えるでしょうね」

 さて、そのコスト。先の参議院選挙では何にどのくらいの費用が実際にかかったのか?

「個別事例により金額の差がありすぎるため、あくまでも一つのサンプル」(松田氏)として聞いた数字は以下の通りだ(選挙区候補、党公認あり、運動期間3カ月とした場合)。

【事務所費】
参議院の選挙区候補は、都道府県全域を網羅する必要があるため、十数カ所の事務所が必要。一カ所の家賃が30万円として、30万円×3カ月×10カ所+α=1,200万円

【広告費】
ポスターやチラシの印刷、折込み、ポスティング、ホームページ・動画コンテンツなどの作成など 2,000~3,000万円

【人件費】
事務所スタッフ、運転手、ウグイス嬢など 800~1,000万円

【その他雑費】
通信費(郵便代や電話代など)、食費、調査費用 500~1,000万円

【コンサルタント費用】
全費用の10%程度 500万円

 以上を単純に合計すると、最低でも5,000万円が必要となる。さらに前述した通り、事例により金額は千差万別。選挙区の規模に応じてチラシの費用一つとっても大幅に変わる。

「小さいエリアなら1枚3円で50万枚刷っても制作費込みで150万前後。これが1,000万人規模の東京なら500万世帯分として1,500万円。広告費だってかけようと思えば青天上です。一概には言えないですが、5,000~8,000万円前後が一般的と見ていいでしょう」

 「一夜にしてなれる職業は政治家と売春婦だけ」と言ったのは、推理作家・原りょうの作品に登場する名探偵・沢崎だ。しかし、一夜で成り上がるためにも5,000万円の自己投資がいるのも事実。さらに、公職選挙法第93条1項で定めた得票数に達しなかった場合は、供託金300万円まで没収されてしまう(参議院・選挙区の場合。比例は600万円)。言わば、政治家は全てリスクテイカー。それほどのリスクを負って国会へ飛び込んだ以上、当選した議員各位には、身命を賭して国益に尽力していただきたいものだ。
(文=浮島さとし)

●「株式会社ダイアログ」
<http://www.dialogue.bz/>

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最終更新:2010/07/16 18:00

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