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アイドル映画専門映画監督・梶野竜太郎の【アイドル映画評】第19幕

男装女子から漏れる少女の可愛さ『1999年の夏休み』

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アイドル映画をこよなく愛する「アイドル映画専門」映画監督が、カントク視点でオススメのアイドル映画を、アノ手コノ手で解説します。

●今回のお題
男装女子から漏れる少女の可愛さ
『1999年の夏休み』
監督:金子修介
女性主演:宮島依里、大寶智子、中野みゆき、水原里絵(現:深津絵里)

 この映画は1988年に公開された作品なんですが、これ以上、現代のアイドルメディアに適切な作品はないでしょう。

 今はBL系(ボーイズ・ラブ)や、昔でいうところのヤオイ系などは定番になっていますが、中には、女装指南書ともいえる『オンナノコになりたい!』(一迅社)なんつー本も売れてたり、”こんな可愛い子が女の子なわけない”なんつーキャッチのアダルトゲームがあったりと、も~、本当が嘘で、マニアがメジャーで、男が女で、女が男なことが面白くなってきたという変化球な世界が秋葉原から世界へ発信されているわけです。

1999natu.jpg『1999年の夏休み』
舞台はある全寮制の学院。初夏、
悠(宮島依里)が湖に飛び込んで
自殺し、そして夏休み。和彦(大寶
智子)、直人(中野みゆき)、則夫
(水原里絵=現・深津絵理)の3人
だけが家に帰らず寮に残った。
悠は和彦に想いを寄せていたのだ
が、それを拒絶されたために自殺した
のだと自分を責める和彦を、リーダー
格の直人が優しく包み込む。そして
下級生の則夫もまた、和彦を慕って
いた。そんなある日、悠そっくりの薫
(宮島)という転入生が彼らの前
に現れた……。
(Amazonより引用)DVD発売中/
4,725円(税込)/ 販売元:SME・
ビジュアルワークス

 この映画公開時に、まさか現在がここまで男と女が混在するようになっているとは、金子監督も思っていなかったでしょうね。

 舞台は森の中にある世間から隔絶された全寮制の学校。夏休みのため、全校生徒は郷里に帰省していたが、3人の生徒だけは寮に残っていた。彼らは、少女のように美しい14~15歳の少年だった。そこへ夏休みにも関わらず、ひとりの生徒が転入。3人は彼を見て驚きを隠せなかった。なぜなら、3人の共通の友人にそっくりだったからである。しかもその友人というのは自らの命を断ったのだ。転校生は美しく、無邪気な性格だった。見た目はウリ二つだが、自殺した少年とは正反対の性格だ。彼ら4人が学校で繰り広げる思春期ならではの恨みと妬みと友情と、そして恋愛が絡み、物語は意外な方向へ向かう──。

 ここに登場する”少年”とは、説明するまでもないのですが、みんな女の子。しかも若かりし頃の深津絵里様や大寶智子、中野みゆきなど、今見ても、十分すごいキャスティングです。その女の子たちが、男装ではなく、本物の少年として物語を進めていくわけですが、このままBL映画として紹介しちゃうと、アイドル映画監督としてアイドル映画を評論したことになりません。

 なので、アイドル映画監督的に言うと、同作の面白さは、途中微々たるところに女の子らしさが漏れてるのを察するのが醍醐味なんですよ~♪ 女の子がどんなにがんばって男の振りをしても、しゃべり方の語尾とかに、女の子の可愛さの残骸が零れ落ちます。

 この時、なんか背伸びをしている小中学生の女の子の強がってる的な声のしぐさが、通常以上に女の子らしさが出てしまい、かわいさ倍増なんです。声同様、動きに関しても同じで、転がり方、走り方など、しぐさ萌えな箇所が多々あるんです。

1999-1.jpg

 格好が男の子なのに、内股でひょろっとなよった感じの可愛い女の子が見え隠れするんですよ。そんな男装女の子たちが、見つめ合って顔がやたら近いシーンなんて、まさに”違う世界”にいっちゃいますね。出演者の力量ではなく、女の子である以上、女の子のしぐさはしょうがないですからね。

 こんなにBL的な映画の中に、ちょい漏れする女の子っぽさの美学。

 極めつけは、いくらサラシを巻いても、軽く胸が出ちゃうところ。制服の最中はさすがにほぼ感じませんが、パジャマになった時が狙い目! さらしのおかげで貧乳ファンにはたまらん状態が見れます。

 ……と、ここまでいろいろ書きましたが、やはり、キャスティングに女の子を使っている時点で製作側の意図だろ~な~って気はします。どうして女の子に男役をやらせたか。美少年の話なら、美少年役はたくさん居たはず。けど、あえて女の子を使う。ここら辺の漏れ加減が、逆に女性……いやいや、少女っぽさを堪能できるのではないでしょうか。でも、男も女も可愛さとかを表現する時代っていうもの、面白いような、怖いような、複雑ですね~。と言いつつ、この映画で少年たちを「かわいい!」と思ってしまった自分は、その世界へつま先くらいは入ってしまったということなんでしょうか。次回からこのコーナーは「男子アイドル評」へと……変わりませんよ!
(文=梶野竜太郎)

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●かじの・りゅうたろう
映画監督・マルチプランナー。1964年東京生まれ。
短編『ロボ子のやり方』で、東京国際ファンタスティック映画祭の部門グランプリを受賞。08年に長編『ピョコタン・プロファイル』でメジャーデビュー。第2回したまちコメディ映画祭 in 台東にて、新作『魚介類 山岡マイコ』を上映。2010年に長編版として劇場上映が予定されている。現在、ニコニコ動画チャンネル『魚介類TV』(毎週日曜日20時~)に出演中。
詳しくは→http://mentaiman.com/
ブログは→http://ameblo.jp/mentaiman1964/

1999年の夏休み

ふかっちゃん!

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●アイドル映画監督梶野竜太郎の【アイドル映画評】INDEX
【第18回】無気力露出系マニア必見! ペ・ドゥナをとことん味わう『空気人形』
【第17回】ヴァーチャル監督視線体験ムービー『テレビばかり見てると馬鹿になる』
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【第8回】トップアイドルの制服(もちろんミニ)とM男君の快感『ときめきメモリアル』
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【第6回】『インストール』──女の子が部屋でひとり。何をしているのか、見たくないか?
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【第3回】『リンダ リンダ リンダ』──王道的傑作に潜む”多角的フェチズム”
【第2回】『妄想少女オタク系』──初心者歓迎!? BLの世界へご案内
【第1回】『すんドめ』──オナニー禁止とチラリズムの限界点

最終更新:2010/08/25 11:00
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