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【元木昌彦の「週刊誌スクープ大賞」第65回】

「煩悩を涸らしてモノに執着しない」 失われた20年を生き抜くための叡智

gendai1026.jpg「週刊現代」11月6日号 中吊り広告より

●第65回(10月19日~10月25日発売号より)

第1位
「大研究 金持ちでも不幸、貧乏でも幸せ」(「週刊現代」11月6日号)

第2位
「IT企業の給与激変」(「AERA」11月1日号)

第3位
「すればするほど長生きできる『SEXアカデミー』」(「週刊ポスト」11月5日号)

 「朝日」の「検察一家が”でっち上げた”三井裏金事件」の第2弾を期待して読んだ。三井環元大阪高検公安部長が、検察の裏金問題を告発しようとした直前に逮捕された事件は、検察の総力をあげた「国策捜査」だと言われる。

 それも、検察はストーリーをつくり、それに沿って供述をでっち上げた疑いがあることを、元暴力団組長が獄中手記で明らかにしたというのが第1回。

 今回は、特捜部が三井氏を収賄で逮捕するため、接待の見返りに彼が捜査情報を漏らしたというストーリーを作り上げ、三井とともに逮捕した2人から、それに沿った供述を取ろうと躍起になったことが書かれている。

 だが、これを読む限り、2回に分けてやらなくても1回で済んだ内容ではないのか。次号へ続くそうだが、もう少し問題点を絞り込んで、読む側に分かりやすく書いてほしいと、筆者にお願いしておく。

 さて、今週号の「ポスト」VS.「現代」のSEX特集は、「現代」が「他人事ではない『腹上死』その実際」と警鐘を鳴らしているのに対して、「ポスト」は、SEXはやればやるほど健康にいいと、真反対の企画で対抗している。

 昔、女性誌「an・an」(マガジンハウス)が「セックスでキレイになる」という特集を組んで大ヒットしたことがある。こちらは、いっぱいセックスして健康になろうというのである。これまでも類似企画はあるが、今回は欧米の医者のお墨付きがある。

 セックスやマスターベーションをやれば、男の花粉症を和らげる効果があるという。それに、週1回すれば「風邪を予防できる」、週2回で「心臓病の危険が半減」し、週3回で「7~12歳若く見られる」ようになり、週5回以上で「前立腺ガンのリスクが低下」し、セックスをすると記憶力が高まるとまで書いている。ホントかね!

 ま、腹上死の心配をするより、体にいいと思ってセックスするほうが、体にも心にもいいことだけは間違いないとは思うがね。

 第2位は、「AERA」が43社のIT企業の年収を調べた特集。IT企業といえば、ストックオプションで億万長者というイメージが今でも多少はあるが、意外に普通の給与なのである。

 例えば、ヤフーは33.1歳平均で591万円。楽天は31.4歳平均で681万円。高いのは、任天堂の36.3歳平均で893万円。今話題の無料ゲームで急進しているグリーが29.2歳で620万円。

 メディネットグローバルの西野嘉之社長によれば、IT業界ではすでに「クラウド・リストラ」ともいえる地殻変動が始まっていて、「IT機器やサービスの価格に詳しくない担当者が、言われるままにソフトやハードを買い続ける時代は終わった。顧客の企業に張り付いて、ハードウエアの保守をするような人はいらなくなる」し、この業界の給与は「順調に上がることは考えにくい」(西野氏)そうだ。

 これを読むと、IT業界も一般企業と変わらないようだ。

 「現代」が毎週やっている大研究・大特集は出来不出来の差が多いが、今週は、私の好みにピッタリ合ったので、グランプリを進呈する。

 いつの時代でも、景気が悪くなると、カネではなく心豊かに生きようというブームが起こる。

 ドイツ文学者の中野孝次が『清貧の思想』(草思社)を出版したのは、バブルが崩壊した直後の1992年だった。

 中野は「物や金への執着と関心が強ければ強いほど内面生活の豊かさは失われる。だから生活は能うかぎり簡素単純にして、心の世界を贅沢にしようではないか」と主張し、ベストセラーになった。

 以来、20年も続く失われた時代をどう生き抜くかは、若者だけではなく、年金世代にとっても最重要課題である。

 こうした特集で出てくる定番は、「私は会社を辞めて独立するとき、『いくらあれば公園のホームレスにならずにすむか』を真剣に考えました。答えは3,000万円でした。(中略)ずいぶん少ないと思うでしょうが、日本を捨ててタイやフィリピンなどの東南アジアに移住すれば、3,000万円で一生それなりの暮らしができると分かったからです」(作家の橘玲氏)。「資産を守るには、収入を増やす方法と支出を押さえる方法がありますが、今の時代は、支出を減らすことを第一に考えるべきです」(家計再生コンサルタントの横山光昭氏)というものだろう。

 私はこの中で、宗教学者の植島啓司氏や戦場カメラマンの石川文洋氏の話しに、しっくりくるものがあった。

 植島さんは56歳で「隠居宣言」して、年収180万円を切ってしまったそうだが、お金がないからと節約に走らず、ないならないで済む生活を楽しむことを考えたという。その一つが激安海外旅行だ。

「僕は年間200日ぐらい旅行をしているんです。行くのはエチオピア、アルメニアなど滞在費が安い国ばかり。一泊1,000円以下の宿ばかりなので、お金のない僕でも、楽勝なんです。貧乏くさい格好だから、泥棒にもあわない」。買わずにレンタルするという発想も大事だという。「本に限らず、海外では物を貸し借りしたりリサイクルする思想が浸透しています。他人が使ったものは嫌だと考える日本人は多いけど、その考えを捨てれば低予算で豊かに暮らしていけます」(植島氏)

 石川氏は有名な戦場カメラマンだが、現在使っているのは5万円のデジカメだそうだ。「今は妻と合わせて月16万円弱が定期収入」(石川氏)だという。それに雑誌の原稿料で十分幸せに生きているという。

「たとえば旅行をしたければ、極端な話、歩けば交通費はかからないんです。実際、私は65歳の時、日本列島3,300kmを徒歩で縦断しましたよ。のんびり歩きながらの旅行だから、電車移動では見逃してしまうような景色を発見できて、これが意外によかった」(石川氏)

 幸せの達人たちから見ると、多くの人は必要のないものを抱え込みすぎて、かえって不幸になっているという。頷けるね。

 作家の佐藤愛子さんの言葉が印象に残った。

「欲望を涸らしていくことは、かえって楽な生き方だと私は思います。そうすれば、一緒に恨みつらみや嫉妬、見栄な負けん気などのもろもろの情念も涸れていく。情念がなければ物質的な何かに執着しないで済みます。とても自然体で生きることができるんですよ」

 チャップリンが『ライムライト』(1952年/米)のなかで、「人生に必要なのは、勇気と想像力とほんの少しのお金」だといった。

「世の中は いつも月夜と米の飯 それにつけても金の欲しさよ」と歌ったのは太田南畝だったか。煩悩の間をさまよっている凡人には、時折、こうした特集を読むことが必要だと、つくづく思う。晩飯は「すき家」の牛丼にしよう。
(文=元木昌彦)

motokikinnei.jpg撮影/佃太平

●元木昌彦(もとき・まさひこ)
1945年11月生まれ。早稲田大学商学部卒業後、講談社入社。90年より「FRIDAY」編集長、92年から97年まで「週刊現代」編集長。99年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長を経て、06年講談社退社。07年2月から08年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(2006年8月28日創刊)で、編集長、代表取締役社長を務める。現「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催、編集プロデュースの他に、上智大学、法政大学、大正大学、明治学院大学などで教鞭を執る。

【著書】
編著「編集者の学校」(編著/講談社/01年)、「日本のルールはすべて編集の現場に詰まっていた」(夏目書房/03年)、「週刊誌編集長」(展望社/06年)、「孤独死ゼロの町づくり」(ダイヤモンド社/08年)、「裁判傍聴マガジン」(イーストプレス/08年)、「競馬必勝放浪記」(祥伝社/09年)、「新版・編集者の学校」(講談社/09年)「週刊誌は死なず」(朝日新聞社/09年)ほか

森の生活〈上〉

できるモンならやってみたいが。

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最終更新:2010/11/01 21:11
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