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DVD『玉袋筋太郎のナイトスナッカーズ』発売記念インタビュー

肩肘張らず、心をフリチンに! 玉袋筋太郎が推奨する「夜のコミュニケーション」

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 夜の酒場に紫の明かりを灯すスナック。どんな小さな町にもある「夜の社交場」の扉を開け続けるスカパー! の人気番組『玉袋筋太郎のナイトスナッカーズ』のDVDが発売される。そこで、新宿生まれ新宿育ち、両親はかつてホモスナックを営んでいたという生粋のスナッカー・玉袋隊長に、スナックにかける熱い想いからコミュニケーション術まで、さまざまなお話を伺った!

■心をフリチンにしないとダメな場所

――DVD発売おめでとうございます。もともとテレビ番組として開始した『ナイトスナッカーズ』ですが、この番組では企画から手掛けられていますね。

「もともとは”夜の毒蝮三太夫”みたいな番組をやりたくて始めたんですよ。スナックに行くことで自分の腕も上がるしね」

――DVDで改めて拝見すると、スナックへの愛が溢れていますね。

「AVを見たら抜きたくなるのと一緒で、このDVDを見たら呑みに行きたくなるという効果・効能があります。スナックは個人的にも頻繁に行くんで、この番組は普段の自分にカメラがついてきた、という感じです」

――週にどれくらい行かれるんですか?

「週2、3回くらいかな。全国どこでも行った先のスナックに入ります。すでに数百軒は入ってるんじゃねえかな」

――数百軒! その中でもいちばん印象に残っているスナックは?

「いっぱいあるよね。その土地によってそれぞれいい思い出をくれるんだけど、最近じゃ奄美大島の先にある喜界島という場所にロケで行って、スナック3軒くらいはしごしたんだよ。ママと仲良くなって空港まで見送りに来てくれたんだけど、ローカル駅みたいな空港でさ、涙ぐみながらプロペラ機に向かって手を振ってくれるんだよ。『ウルルン滞在記』(TBS系)どころじゃないよ、うれしかったね~」

――DVDを拝見すると、ママやお客さんともすぐに打ち解けていますね。

「溶け込むことは大事。お店の空気を壊しちゃいけないんだよ。カラオケボックスのように自分の好きな歌を歌っているだけではお店の空気を壊しちゃうよね。一見(いちげん)さんなんて、外来魚”ナイルパーチ”みたいなもんなんだから。そこの水に馴染むように溶け込むことが大事なんだよ」

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――お店に馴染むコツはありますか?

「肩肘張らず、威張らずに心をフリチンにしないとダメだよね。構えないってことが一番の方法かな」

――玉さんがスナックに行き出したきっかけは何でしょうか?

「昔から飯も飲み屋もマニュアルでやっているところには行きたくないんですよ。マニュアルなんかに乗せられねえぞ、っていう信念があるんです。それを突き詰めていったらスナックになったんだよね。だから、普段からチェーン店の居酒屋も行かないしファミレスにも行きません」

――スナックというと一見さんお断りというイメージがあると思いますが、このDVDではアポなしでどんどん入っていってしまいますね。

「もちろん一見さんでも大丈夫なんですよ。だってそこに扉があるんだから! 俺、スナックのドアは『どこでもドア』だと思ってんだよ。異次元に行けるドアがあるのにそれを開けないのはもったいないと思うな。もちろん威張って入ったらダメだよ。向こうもお客を見ているんだから。ちゃんと礼儀正しく『呑ませてもらっていいですか?』って入ってったら『いいよ』っていう話になる。そっから始まるんだよ」

――撮影で思い出深いエピソードは?

「下北沢の『北花』のマスターなんか始めは『出ない出ない』って言ってたんだけど、最終的には1時間30分べらべら喋ってたからね。行き当たりばったりなんだけど、ドラマが生まれるんだよ。そういう意味では、この番組には『田舎に止まろう』(テレビ東京系)と『ウルルン滞在記』と、『ちい散歩』(テレビ朝日系)と『ぶらり途中下車の旅』(日本テレビ系)と『いい旅夢気分』(テレビ東京系)すべてのエッセンスが詰まってる」

■”クリック”よりも”スナック”

――このスナック巡りによって玉さんが見せたいのは、やはり「人間ドラマ」なんでしょうか?

「『マニュアルがないところがマニュアルだ』っていう楽しさを若い人に知ってほしいんだよ。今は客が楽しさを与えられて当然になっちゃってるよね。でもマニュアルに乗っけられて喜んでいたら、喜びを自分で見つけるセンサーが鈍っちゃう。スナックでは自分でも楽しさを与えなきゃならないし、与えてもらえる。相互でやりあうよさ、気持ちよさがあるんです。『お客もママを気持ちよくさせて当然じゃん』っていうのが俺の考えだね。場の雰囲気をよくするのもお客がやらなきゃいけない。そうやってお店の空気が出来上がってくるんだよね」

――スナックに行くことは芸の肥やしになってるんでしょうか?

「芸については分からないけど、人間力だろうな。気持ちいい男になりたいっていうのがあるんだよね。『あいつ気持ちいいやつだな』って言われるようになりたいんだけど、40歳なんてまだ鼻っ垂らしなんだから。だけど、少しは近づけるのがスナックなのかもしれない」

――修行の場所ですね。

「だからスナックは人間力アップのための教室だよね。今はクリック一つで友達ができる世の中になっているけど、それじゃ物足りないんだよ。だから”クリックよりもスナック”だと思うよ」

――以前にも、「会社の新人研修にスナックで働け」と書いていましたね。

「スナックで働けば、一方通行の応対じゃなくて縦横無尽に動けるようになるんだよ。いろんなお客さんが来るからすごいいいと思う。本気で言ってるんだけどな」

――社会人としての人間力も身に付きそうですね。

「スナックで働けば、たとえ気が合わない人だったとしても、商売だから仏頂面なんかできないわけよ。そこでまたそういうテクニックを覚えたら、人間としてのステージが上がるよね」

――玉さんにとって、スナックとはどういう場所でしょうか?

「ライフワークであり、居場所であり、源泉掛け流しってのは温泉だけど、『人間掛け流し』の場所かな。その湯加減の気持ちよさったらないんだよ!」

■『かっちゃんすげえよ』って言ってやれる男になりたい

――『キッドのもと』(学習研究社)でも「心で握手」と語られていましたが、玉さんのそういう熱い考え方はどのようにして培われたんでしょうか?

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「昔からそういう仲間がいたからだろうな。だからガキの頃の友達にはすごく感謝してるよ。いい奴らばっかりいたから。貧乏な奴もいたし、勉強ができる奴もバカな奴もいろいろいた。その中の友情みたいなもので人付き合いを学んだんだよね。例えば俺がいくら走ったってかっちゃんの足には適わない。だからって妬むんじゃなくて『かっちゃんすげえよ』って言ってやれる男になりたいと思ってたんだよね」

――キッドの芸風にも通じるところがありますね。

「自分がいかに神輿の上に乗らないで神輿を担ぐかっていう芸風でやって来たわけだね。いろんな人にスポットを当てて、”わっしょいわっしょい”って。そういう仕事にプロフェッショナルな誇りもある。ただ、よく考えたらそれってスナックでいつもやってることなんだよね」

――玉さんが求める熱いコミュニケーションのよさは何だと思いますか?

「何だろう……ご褒美くれるよね。それは物じゃなくて言葉とかになるんだけど、絶対にお金じゃ買えないご褒美だよね」

――そういったご褒美は、例えばSNSやインターネット上の関係では難しいですね。

「そんなの嘘だぜって思うもん、やっぱり。いざっていう時に助けてくれねえよ」

――玉さん自身も助けられた経験はあるんでしょうか?

「あるんじゃねえかな。免許事件で謹慎していた時もそうだし、謹慎明けもお金ねえからってタダで呑ませてもらったりしたからね」

――キッドの漫才にも濃密なコミュニケーションが広がっていますよね。玉さんと博士の間然り、キッドと客席の間然り。

「紀伊国屋ホールで550人しか入らないすごくミクロな世界だけどね。でも俺はそれでも構わないと思うんだ。あれはあれで一つの形として成立しているんじゃないかな」

――トーキョーカルチャーカルチャーで行われている「スナック玉ちゃん」のイベントも1周年を迎えましたね。

「1周年イベントの時に高田文夫先生が来てくれたんだよ。楽しんでくれてカラオケまで歌ってくれて。で、次の日に高田先生が『お客さんがちゃんと出来上がっている、あれは立派だよ』って言ってくれたんだよ。それはうれしかったね。俺もお客さんに育てられてるし、お客さんも一緒に育っているイベントだと思う。ちょうどこの日は台風が直撃して、『誰も来ないだろ』って思ってたらみんなちゃんと来るんだよね。あの一体感は奇跡的だったな。スナックにもそういう出会いがあって、大雨とか嵐の日にスナックに行っても誰もいないじゃん。そういう時に行くとママは嬉しいんだよ。それにママを独り占めできるでしょ。……って思ってると同じ考えの奴が入ってくるんだよな(笑)」

――玉さん自身もいつも濃密なコミュニケーションをしようと心がけていますか?

「殿に『お前は人を好きになりすぎる』って怒られたことがあるんだけどね。俺、好きになっちゃうと全部軸足をのっけちゃうんだよ。それで思いっきり裏切られて、結構落ち込んだこともある。だから端から見ると熱いようだけど、今は50/50なんだよね。もちろん、困ってる奴だったら軸足を全部乗っけて助けようと思うよ」

――玉さんが今、一番愛している人は誰ですか?

「それはもう家族だろうな。73才のおふくろともう2年くらい暮らしているんだけど、一緒に暮らしてくれるっていうことは本当にありがたいよね」

――殿に対してはどうでしょうか?

「殿は……俺にとっては永遠に輝き続ける星だからさ、ずっと見上げっぱなしだよね。……何か本当にスナックで喋ってるみてえだな(笑)」
(取材・文=萩原雄太[カモメマシーン])

●DVD発売記念サイン会
日時:12月18日(土)19:00スタート
会場:タワーレコード新宿店10階

●たまぶくろ・すじたろう
1967年東京生まれ。高校時代からビートたけしの「追っかけ」として名を馳せ、86年に弟子入り。浅草フランス座での修業を経て、翌年、水道橋博士とお笑いコンビ「浅草キッド」を結成。月に1回、お台場で「スナック玉ちゃん」を開店し、マスターを務める。近著に『絶滅危惧種見聞録』(廣済堂出版)、浅草キッドの共著として『キッドのもと』(学研)。

玉袋筋太郎のナイトスナッカーズ
スカパー!にて放送された伝説の人気バラエティー番組。毎回、玉袋筋太郎を隊長として、東京近郊のさまざまな駅に降り立ち、秘境の地「スナック」を探し、突入取材を敢行。ママさんやお客さんとの愉快なおしゃべりを中心に、店の自慢や歴史、そこに集う人間模様などを紹介していく。コレを見ればスナックが分かる!
12月15日発売/定価:3,675円(税込)/販売元:アミューズソフトエンタテインメント
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最終更新:2018/12/10 19:10
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