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スカトロAV、ホモ映画、『サザザさん』 アブノーマルな道を歩んできた活動弁士・坂本頼光とは?

raiko01.jpg古典芸能界の”異端児”として活躍中の坂本頼光さん。

 ネットを中心にカルトな人気を誇るオリジナルアニメ『サザザさん』。のほほんとした展開は一切なく、ブラックでダークなユーモアに貫かれた本作にファンも急増中だ。このアニメの製作を手掛けるのは坂本頼光さん。とはいえ、彼の本職はアニメーターではなく映画に解説や台詞を与える活動弁士なのだ。チャップリン作品や鞍馬天狗などの名作映画を真面目に説明する傍ら、お笑いライブなどでは、『サザザさん』に声をアテる坂本さん。『サザザさん』の他にも、「世界一ウンコを食べている」と言われるカルトAV男優・山本竜二さんへの弟子入りや、ホモ映画への出演など、アブノーマルな道を歩んでしまった「カルト弁士」の彼にお話を伺った。

■水木しげるファンの少年が活弁に出会う

――まず、坂本さんが活動弁士を志したきっかけを教えてください。

「中学生の時、先生に連れられて全校生徒で映画を見たんです。それが無声映画の弁士付き上映会で、チャップリンの『キッド』でした。もちろん、無声映画も弁士も初めて。こんな変わった世界があるのか、とカルチャーショックに近いものを感じましたね」

――それがきっかけになって活弁の世界にのめり込んで行ったのでしょうか?

raiko02.jpgときどき竜二さんが経営する居酒屋「竜ちゃん」
に顔を出し、竜二さんのマシンガントークに耳
を傾けているという坂本さん。

「いえ、そのときは面白い仕事もあるもんだなと思った程度です。僕は幼稚園の頃から漫画家になりたくて。水木しげる先生の作品が大好きで、模写ばかりしていました。その後、高校に進学したんですが、話題や趣味の合う友達が出来ず、中退してしまいました。その頃は漫画より映画が好きになっていたので、この際だから映画関係、しかもとりわけ珍しい仕事に就きたいと考えましてね。弁士のことを思い出し、無声映画の興行をやっていた会社を訪ねたんです」

――どなたかへ弟子入りされたんですか?

「いえ、弟子にはしてもらえませんでした。当時、活動弁士は日本に2、3人ほどしかおらず、食える職業じゃないからやめなさいと言われたんです。でもその会社が一般向けの活弁研究会を主宰していたので、そこに参加して勉強していました。20歳のときに、鶯谷に東京キネマ倶楽部という無声映画専門劇場がオープンすることになり、出演弁士のオーディションを受け合格、プロデビューすることが出来たわけです。ただ、いざ開館しても残念ながらお客さんが来なくて。こっちもまだ根性がないから、ノイローゼみたいになっちゃいましてね。結局数カ月後に出番をしくじってクビです……お恥ずかしい」

■変態AV男優・山本竜二に弟子入り

――そんな坂本さんが、一体どんな経緯で山本竜二さんに弟子入りすることになったんですか?

「僕が人生で最初に活弁をしたのは18歳の時、研究会の舞台で演目は嵐寛寿郎主演の『鞍馬天狗』だったんですが、同じ頃、落語家の快楽亭ブラック師匠の会を聴きに行ったら、山本竜二さんが客演していたんです。竜二さんは寛寿郎さんの縁戚で、往年の映画界の裏話やらAV現場での体験を漫談風に喋っているのがおかしくて。もっといろんな話を聴きたくて楽屋を訪ね、以後、ファンとして追っかけ出したんです。そのうちブラック師匠も『なついてるようだし、竜ちゃん、面倒みてあげなさいよ』と口添えしてくださり、現在まで何やかやと……本当に、お世話になっております」

――山本竜二さんからは何を学ばれたんですか?

「その頃、竜二さんはアロマ企画というマニア向けのAV会社で自らの監督・主演作品を撮っていました。僕はその現場で、カメラマンのバイトをやらせてもらいました」

――山本さんと言えば、数々のスカトロ作品やホモ作品を手掛けていますよね。

「普通のAVだったらアイドル系の女優さんの裸が拝めるのに、アロマ山本組はお婆さんやお爺さんや黒人さんとかなんで、もう眼の前がクラクラしました。スカトロの現場では飛び散ったウンコを片けたりね。今となっては懐かしいトラウマです。実際のところ何の弟子だかよく分からないんですが、人生の師匠だと思っています。芸よりももっと大きなことを学んでいますね」

――ちなみに、ホモ映画に出演されたというのは本当ですか?

raiko03.jpg

「はい、20歳の頃の話です。3人兄弟で上の2人がホモで、その事実に末っ子の僕が胸を痛める。しかし最後には自分もそうなって……というストーリーでした。竜二さんの知人が監督だったので、『坂本くん、映画出ぇへんか?』という話になったんです。『ピンク映画はアフレコやさかい、活弁の勉強になるで~』『君ナ、守備範囲が広ないとええ芸人になれへんで〜』と。とどめに『大蔵映画さんの創立者は君、大蔵貢やで。あの人、元は活動弁士やないか! 同業の大先輩が創った会社の映画に出られるんやで〜』と。他にも竜二さんの素晴らしい導き(?)によっていろいろなことを経験しました。僕、竜二さんみたいな、父親くらいの年齢の人に弱いんですよ。しかもまだ若いうちにそういうアクの強い人と出会ったために、自分もアブノーマルにならなきゃとかぶれちゃった、というのはあります。でも、アブノーマルにならなきゃと思っている時点で、アブノーマルじゃないんですよね」

■怪作シリーズ『サザザさん』の誕生

――そういうことと並行し、活弁もやっていたんですか?

「干されていたのであまり仕事はありませんでしたが、やっていました。ただ、ライブをやっても、昔の映画だとどうしても自分と同年代の人の集客が厳しい。どうしたらいいんだろうと考えていた頃、知り合いからパソコンをもらったんです。アニメ編集のソフトも入っていたので『自分で絵を描いて、新作の無声映画を作ろう』と思ったんです」

――漫画家を目指していた経験も活かせますね。

「それで2004年に創ったのが『桃太郎』です。それが東京国際ファンタスティック映画祭で入賞し、ミラノ座で上映されました。桃太郎が小泉純一郎風、おじいさんが大滝秀治風、おばあさんの代わりのおじさん役が田中邦衛風で、桃太郎を鬼が島に行かせたくないおじさんが、桃太郎を毒入りのきびだんごで殺すというお話です」

――シュールですね……。

「それがわりと面白いという評価を頂いて、自主映画のイベントやお笑いライブから声がかかるようになりました。ただ一作だけでは次がない、新作がいるなと思い『サザザさん』をつくったんです。現在、ライブでかける自作アニメは何本かありますが、そのうち6本はサザザさんです」

――坂本さんの活動によって若い人への認知も上がっているんじゃないでしょうか?

「あんまり実感はないです。僕のネタを見て知った人は、僕をお笑い芸人だと思っているんじゃないかしら。活弁は本来お笑いではなく、僕だけその部分が濃い、ということなんですね」

――本来の弁士としての活動で、お客さんを増やしていきたいという気持ちはありますか?

「あります。自作アニメと両刀で来ているから悩みも多いですが、やっぱり弱火でも種火でも良いから長ーくしぶとーく燃え続けて、幅広い層のお客さんに見て頂きたいです」

――今の坂本さんの野望は何ですか?

「野望というか希望ですが、サザザさんのようなキツめなものではなく、普通のアニメをつくって説明したいですね。サザザさんもシリーズで続けている内に、アナ◯さんが会社の金を横領するとか、◯平がシャブ中とか、タ◯オのお腹に寄生虫が湧くとか、内容がエスカレートしてしまっていましてねえ」

――ファンの期待に応えるのも難しいですね。

「普通の活弁より、サザザさんでの依頼の方が多くなっちゃいましたからね。ただ、アレがきっかけで普通の声優や、他分野のお仕事も頂いているので……良し悪しですよ」

――けれども活動弁士をしながらアニメ制作は大変なんじゃないでしょうか?

「一人でやっているので、1作つくるのに3カ月近くかかっています。制作に集中したいので、その間は活弁の仕事を断っているってのが馬鹿な話でね。どっちが本業なんだという感じでしょ?」
(取材・文=萩原雄太[かもめマシーン]/撮影=菊地一馬)

さかもと・らいこう
1979年、東京都出身。97年にマツダ映画社主催の話術研究会に入り、弁士修行を開始。20年12月、正式デビュー。以降、小劇場や単館系映画館、福祉施設、神社仏閣等で、時代劇作品を中心に活弁ライブを続け、現在に至る。これまでの説明作品は、『鞍馬天狗』『瞼の母』『剣聖荒木又右衛門』『子宝騒動』『カリガリ博士』『チャップリンの冒険』『眠るパリ』『のらくろ伍長』他、約50本。
http://blogs.yahoo.co.jp/qfdsj940

・イベント「山本竜二 空前絶後の喋り倒し新年会!」
【日時】1月21日(金)OPEN18:30 / START19:30
【場所】阿佐ヶ谷ロフト
【出演】山本竜二、坂本頼光、川上ゆう(AV女優)
【チケット】前売\2,000/当日\2,300(共に飲食代別)
前売りチケットはローソンチケット【L:34756】&下記ウェブ予約&電話予約にて発売中!
TEL 03-5929-3445
http://www.loft-prj.co.jp/lofta/reservation/reservation.php?show_number=567

活弁士、山崎バニラ

バニラさんとは同期です。

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最終更新:2012/04/13 11:56
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