日刊サイゾー トップ > 連載・コラム  > 日本ではミドルネームが認められない? 世界の名前の不思議
のり・たまみのへんな社会学 第15回

日本ではミドルネームが認められない? 世界の名前の不思議

kimurakaera0225.jpg名付け親はおばあちゃんだそうです。

世の中のへんなものをこよなく愛するのり・たまみの、意外と知らないちょっとへんな社会学。

 「木村カエラ」さんの結婚前の本名を知ってますか?

 「木村カエラりえ」さんといいます。苗字が「木村」、名前が「カエラりえ」です。瑛太(本名:永山 瑛太)さんと結婚して、今は「永山・カエラりえ」さんです。

 なんか変だと思いませんか、名前が「カエラりえ」って。

 木村カエラさんは、日本人とイギリス人のハーフです。もともと「カエラ」はミドルネームとして付けられました。ヘブライ語で「最愛の」という意味を表す言葉で、「木村家の最愛の娘、りえ」ということになります。普通なら「りえ」が名前にあたる部分ですが、芸名を決める際に「りえ」をとって「木村カエラ」としました。「カエラ」は日本には馴染みのない言葉なので、デビュー当時はよく、「カエル」と間違えられたそうです。


 ミドルネームは、洗礼名だったり、祖国名だったり、「カエラ」のように親の思いだったりとさまざまな付け方がありますが、付けても付けなくてもOK。ただし、公的機関にも登録される正式な名前の一部です。

 日本の法律では、名前は「苗字」+「個人名」の”二階建て”と決まっています。しかし欧米では、ミドルネームも含めた三階建てが一般的。

 では、アメリカ人女性と日本人男性が国際結婚した場合、三階建ての名前はどうなるんでしょうか? 実は、日本では無理矢理、二階建てになります。本来なら「木村・カエラ・りえ」さんが「木村・カエラりえ」さんになるように、「山田・シューマッハ太郎」とか、「渡辺・ミカエル花子」とか、二階建ての名前になってしまいます。これは、公的な届けに「苗字」と「個人名」の欄しか無く、それに合わせなければいけないためです。

 例えば、「祖国では山田・シューマッハ・太郎だった。意味があってミドルネーム付けたのだから、日本の戸籍上でもそうしてくれ!」と役所で押し問答しても、「山田・シューマッハ太郎」とするしかありません。

 逆に、日本人女性がアメリカ人男性と国際結婚してアメリカ人になる場合、旧姓をミドルネームにいれて三階立てにすることも州によっては可能です。「ジャクソン・木村・加代」のようになるんですね。

 私たちは「苗字」+「個人名」の二階建てに慣れきっているので、それが当然のように感じますが、世界には三階建てや四階建て、また逆に一階立ての文化も存在します。
 
 一階立ての名前で有名なのが、ミャンマー。通常の「苗字」を表す部分はなく、全部「個人名」だけです。日本で言えば、「太郎」「花子」「秀夫」などという名前だけなんですね。「それでは祖先や家族が分からないのでは?」と思うのは私たち日本人の感覚。ミャンマーでは、その個人名だけで充分な文化なのです。

 ノーベル賞を受賞した、日本でも有名な「アウン・サン・スー・チー」さん。日本の報道では、こうやって「アウン・サン・スー・チー」と区切られて書かれますが、それは私たちの感覚。実際は「アウンサンスーチー」という区切りのない一言の単語(名前)です。親や家族などは関係なく、「アウンサンスーチー」が「花子」みたいな個人名なのです。

 三階立ての例だと、先にあげたミドルネームのほか、「父親の苗字+母親の苗字+個人名」と決まっているスペイン。ミドルネームに「父親の名前+ビッチ(子どもの意)」を必ず入れるロシアなどさまざまです。

 他にも「本人の名前+父親の名前+祖先の名前+部族の名前」の四部構成の名前が主流の西アジア。さらに定冠詞がついて、わけの分からないほど長い名前が多い中東……などなど、決して日本のように「苗字+個人名」の二階立てが多いわけではありません。

 欧米でミドルネームや場合によっては四階立ての名前が認められているのは、もともと移民も多く、いろんな文化を取り入れてきた歴史も関係しています。現在のオバマ大統領も、正式名は「バラク・フセイン・オバマ・ジュニア」と四階立てです。

 かつては日本でも、「織田・三郎・信長」とか「源・九朗・義経」とか三階立ての名前が普通にあった時期もありました。それどころか徳川家康の「徳川次郎三郎源朝臣家康」とか、「豊臣秀吉」の「羽柴藤吉郎豊臣朝臣秀吉」とか、何階立てだか数えるのも大変だったり、時期によってどんどん名前が増えたり減ったり変わったりする場合もありました。

 国際結婚率が5%になるなど、かつてないほど国際化が進んでいる日本。夫婦別姓など、名前を巡る論議も盛んですし、今後法律が変わって「三階立て」「四階立て」が可能になってくるかもしれません。
(文=のり・たまみ)

●のり・たまみ
世界中の「へんなもの」をこよなく愛する夫婦合体ライター。日本のみならず、世界中の政治の仕組みや法律などをこよなく偏愛している。主な著書に『へんなほうりつ』(扶桑社)、『日本一へんな地図帳』(白夜書房)、『へんな国会』(ポプラ社)、『佐藤・鈴木・高橋讃歌』(北辰堂出版)などがある。

佐藤・鈴木・高橋讃歌―名字のルーツおもしろ解析
「へんな社会学」でおなじみの、のり・たまみの新刊が発売になりました。佐藤さん、鈴木さん、高橋さんたちは日本に何故たくさんいるのか? 最も多い名字ベスト10を歴史・雑学・名前占いを交えてユーモアたっぷりに紹介します。
北辰堂出版刊/1365円(税込)/好評発売中
amazon_associate_logo.jpg

■へんな社会学 バックナンバー
【第14回】世界各国にあるのに”祝日天国”日本にはない「教師の日」って?
【第13回】 女性サンタからブラックサンタまで 世界のクリスマス事情
【第12回】 長崎県の18歳未満にコンドームを売ってはいけない!? 時代に取り残されたへんな法律
【第11回】 人生の一大事にはぜひ使いたい! じゃんけん必勝法
【第10回】 「イソジン」は風邪予防にならない!? 意外と知らない世界の”うがい”事情
【第9回】魚◎と書いてなんと読む? あなたの知らない漢字予備軍
【第8回】「ち●こ祭り」と「ま●こ祭り」がまさかのコラボ 愛知県の奇跡とは……
【第7回】一時の流行語で終わる可能性も…… 実はテキトー&曖昧な「メタボ」の実態
【第6回】未成年だけじゃない!? 知られざる日本の不自然な養子縁組
【第5回】世界でも日本だけ!? 血液型にこだわる日本人の国民性
【第4回】読み方は自分で決められる!? あなたが知らない日本人の名前の秘密
【第3回】“交通事故死減少”は真っ赤なウソ!? 軍事国家時代から続く「大本営発表」のカラクリ
【第2回】あの阿久根市より凄い! おっぱいで勝負をかける山口県光市
【第1回】皇居、ディズニーランド、甲子園球場……好きな場所に勝手に住み込む方法とは?

最終更新:2011/02/27 19:25

日本ではミドルネームが認められない? 世界の名前の不思議のページです。日刊サイゾー芸能最新情報のほか、ジャニーズ/AKB48/アイドル/タレント/お笑い芸人のゴシップや芸能界の裏話・噂をお届けします。その他スポーツニュース、サブカルチャーネタ、連載コラムドラマレビューインタビュー中韓など社会系の話題も充実。芸能人のニュースまとめなら日刊サイゾーへ!

ページ上部へ戻る

人気連載すべて見る

元木昌彦の『週刊誌スクープ大賞』

「週刊現代」「FRIDAY」の編集長を歴任した"伝説の編集者"元木昌彦による週刊誌レビュー

“キング・オブ・アウトロー”瓜田純士、かく語りき

“キング・オブ・アウトロー”瓜田純士の最新情報をお届け! 嫁・麗子も時々登場。

テレビウォッチャー・飲用てれびの『テレビ日記』

テレビの気になる発言から、世相を斬る!

じゃまおくんのWEB漫クエスト

マンガレビューブログ管理人じゃまおくんが、インターネットに埋もれる一押しマンガを発掘!

腹筋王子カツオ『サイゾー筋トレ部』

“腹筋インストラクター”腹筋王子カツオさんが、自宅でも簡単にできるエクササイズを紹介!

イチオシ企画

[月刊サイゾー×LINE LIVE]誌面掲載争奪オーディション結果発表

人気ライブ配信アプリと「月刊サイゾー」がコラボするオーディション企画開催中!
写真
人気連載

石橋貴明、鈴木保奈美との関係性

ベテラン芸能リポーターの城下尊之氏が、とかく...…
写真
インタビュー

徳井・小沢と暮らした放送作家が予言する「第7世代の次」

 チュートリアルの徳井義実とスピードワゴン小沢一敬が、ルームシェアをしていたことを、...
写真