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のり・たまみのへんな社会学 第14回

世界各国にあるのに”祝日天国”日本にはない「教師の日」って?


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イメージ画像 photo by naosuke ii from Flicker.

世の中のへんなものをこよなく愛するのり・たまみの、意外と知らないちょっとへんな社会学。

 世界の中でも、日本は祝日が非常に多いことで有名です。その数、年間15日。先進国の中では断トツで、だいたい他の国の倍近くあるそうです。その分、フランスのバカンスのように法律で定められた連続した休みがなく、「普段、コマネズミにように働かされているから、祝日が多くても素直に喜べない。それよりサービス残業をなんとかしようよ」なんて声もあります。

 年間15日以外にも、皇室関係の冠婚葬祭の日が臨時に祝日になることもあります。たとえば1990年11月12日「即位の礼正殿の儀」、1993年6月9日は「皇太子徳仁親王の結婚の儀」でそれぞれ祝日になっています。一昨年の2009年11月12日も「今上天皇御在位二十周年を記念する日」として特別に休日になるはずでした。あとは法律案を通すだけだったのですが、政局のゴタゴタで衆議院が解散。そのため廃案になってしまいました。

 ともかく世界有数の祝日の多さを誇る日本ですが、多くの国にあるのに無いのが「教師の日」です。「教師の日」って、馴染みのない私たちにはなんかヘンな気がしますね。

 儒教などでは「師を尊敬すべし」という教えがあり、アジアを中心に「教師の日」が存在します。月日は国によってさまざまですが、儒教圏以外でも「教師に尊敬の意を表し、感謝する日」として、マレーシア、ベトナム、インドなどにも存在します。

 多くの国で「教師の日」は祝日で、生徒たちや保護者などが先生の家を訪れて花を贈ったり、感謝の意を表すとのこと。ちょっと良い風習ですね。

 実は日本でもかつて昭和63年を中心として何回も国会で「教師の日」を作ろう! と提案され、当時の竹下登総理大臣が「今後、慎重に検討すべき事柄」として話し合っていた記録が、正式に国会議事録に残っています。結局、制定はされませんでしたが……。

 もし「教師の日」が制定された場合の問題点、また「なぜ制定されないのか」について、次のような点が指摘されています。

「先生以外のいろいろな業種の人や団体が同様な日を制定するように求めてくる可能性がある。たとえば『医者の日』『お米の日』『大人の日』……。こうなると、どの職種を祝日にするか収拾がつかなくなるし、職業差別にもつながりかねない」

 この点に関して、世界の国々では、

・エジプトの「警察記念日(Police Day)」
・アメリカの「復員軍人の日(Veterans Day)」
・イラン「石油産業国有化記念日(The Nationalization Day of Oil Industry)」

 などがあります。

 また、日本では「先生=聖職者」というイメージが馴染まないということもあるようです。衆議院で昭和61年に話し合った際も「先生は専門職という意識が少なく、半分の教師はたんなる労働者と自分の事を思っている」点が問題にされました。

 TBSの名作ドラマ『3年B組金八先生』を見て育った世代の人にとってはちょっと寂しいかもしれませんが、以上のような理由で、日本には「教師の日」は出来なさそうです。

 ところで「教師の日」ですが、麗しい習慣ととらえつつも、場所によっては問題が起っています。一部で、先生への感謝の表し方が「親による先生へのワイロ」にまでエスカレートしているからです。2008年には中国で「教師の日」のプレゼントとして、ある保護者が先生に「日本への旅行」「別荘に1週間招待」をしたと報じられています。これは誠意なのかワイロなのか、微妙な気もしますが、いずれにせよ保護者による「先生への誠意(?)」を見せる絶好の機会として使われているんですね。

 ともあれ、休みは一日でも多い方がいい、というのが人情というもの。次は一体、どんな祝日が生まれるのでしょうか。
(文=のり・たまみ)

●のり・たまみ
世界中の「へんなもの」をこよなく愛する夫婦合体ライター。日本のみならず、世界中の政治の仕組みや法律などをこよなく偏愛している。主な著書に『へんなほうりつ』(扶桑社)、『日本一へんな地図帳』(白夜書房)、『へんな国会』(ポプラ社)、『へんな婚活』(北辰堂出版)などがある。

「国民の祝日」の由来がわかる小事典

なるほど。

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最終更新:2011/01/11 17:22
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