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【元木昌彦の「週刊誌スクープ大賞」第97回】

経産省ではスキャンダルは出世に響かない!? 愛人発覚・西山審議官の厚顔無恥ぶり

motoki110627.jpg「週刊新潮」6月30日号 中吊り広告より

第1位
「経産省『美人職員』を弄ぶ『西山審議官』」(「週刊新潮」6月30日号)

第2位
「朝日新聞が『(親)原発』に転向した日」(「週刊文春」6月30日号)

第3位
「ガイガーカウンターでは被曝量は測れない<知っていましたか?>」(「週刊ポスト」7月8日号)

 先週は1本もなかった「ポスト」に、今週は1本だけ放射能関連の記事が出ている。あおり派批判は一貫しているが、内容は、私も以前から触れていることなので興味を持って読んだ。

 通称「ガイガーカウンター(正式にはガイガー=ミュラー計数管)」を持った週刊誌記者たちが日本中で放射線量を測り、特集を組んでいる。

 「現代」は「大反響第2弾 列島縦断 放射能はこんなに出ている」。「AERA」も「放射線量マップ 第3弾」をやっている。

 また県民の不安に答えるために、福島県は子どもたちと妊婦合わせて30万人に、計数管を配るそうだ。

 だが、カウンターの性能は千差万別、オモチャのような計数管も多く売られている。

 GM管式とシンチレーション式でも、測れる放射線の種類が違う。そうしたことは、これまでほとんど報じられてこなかった。

 「ポスト」によれば、計数管(ここではGM計数管のこと=筆者注)が計測しているのは、放射線の数であり、人体が放射能によって受ける影響を表す単位のシーベルトは分からないのだそうだ。したがって、計測値から対象物のベクレルを「推計」するのがせいぜいだという。

 さらに、代表的な放射線にはアルファ線、ベータ線、ガンマ線、エックス線、中性子線があるが、このGM計数管が主に検出するのはベータ線だという。

 したがって、人体への影響を正確に調べるためには、「シンチレーション検出器」や「ゲルマニウム半導体検出器」でなくてはいけないのだが、高価なことと動作環境にも制限がある。

 だが、いま行政がやっているモニタリングポストはシンチレーション方式だから、素人たちがGM計数管で測った値より信用できるとしている。

 週刊誌(ここではそうは書いていないが、「ポスト」はこう言いたいのであろう=筆者注)や市民団体などが公表している数値は、ベータ線を遮断しないなど、測り間違いが多いと、ある技術者に言わせている。

 要は、いまあおり派が放射線量が高い高いと騒いでいるが、安物の計数管を使って、しかも測り方を間違えているから、「無知な者が危険をあおるために用いれば、害にしかならない」と決め付けている。

 確かに私が知る限り、いまのモニタリングポストも県や市町村が独自に測っているやり方も、ベータ線を遮断している。

 こうしないと、さまざまな種類の放射線を計測してしまうため、高い値が出てしまうからだ。そこで疑問なのは、アルファ線やベータ線は測らなくていいのだろうか? これらには危険はないのだろうか?

 放射線に詳しい私の知人によると、アルファ線はガンマ線の20倍、人体への危険性があるという。アルファ線やベータ線は衣服やマスク、手袋で遮断できるかもしれないが、すべての子どもたちが外にいるとき、必ずマスクをしているわけではないから、口などから入って内部被曝する危険はあるはずだ。

 また、GM管方式では、シーベルトが分からないという決め付け方には違和感を持つ。私の友人が開発した放射線量公開システムはGM管を使っているが、アメリカの認証を取り、この中でも書いてあるように、計算式を用いて10秒ごとの放射線量を記録し、シーベルトで表示できる。

 この記事中では、いまのほとんどのモニタリングポストが地上からかなり高いところに置かれ、1日のうち1時間だけしか測定せず、それに24時間かけたものを1日の放射線量としていることに触れていないのは、故意なのだろうか。

 シンチレーション方式は、アルファ線やベータ線を測るのには適さないようだ。だが政府や行政がこの方式を使うのは、ガンマ線だけに特定すれば、値が低く抑えられるからではないのか。

 一番大事なのは、放射線の影響を受けやすい子どもたちが生活している高さや周辺で、正確に計測して公表することであるはずだ。

 年間20ミリシーベルトが人体に影響があるかないかは、10年、20年後までフォローしてから決めるべきもので、少しでも健康に影響があると予想される被曝量なら、即刻子どもたちだけでも、そこから安全なところへ集団疎開させるべきである。

 先ほど情報が入った。数日前、福島市の廃棄物処理業者が市民の説明会で、公園の廃棄物の中からプルトニウムが検出されたと発表したそうである。

 「ポスト」の記事は、目の付けどころ、問題提起としての意味はある。「ポスト」から批判されるあおり派週刊誌は黙殺しないで、批判や論争を挑むべき記事である。これからの論議を期待したい。

 第2位は、「文春」の小さな記事で、自社の宣伝臭が強いが、重要な意味を持っていると思うので、取り上げた。

 読売新聞の正力松太郎社主(当時)が「原子力の父」と呼ばれることは、さまざまなところで書かれてきた。

 正力の政治的な野心から、原子力の平和利用という名目で、ノーベル賞受賞者・湯川秀樹まで巻き込み、読売の紙面でも原発を礼賛し、次々に原発をつくる世論を形成していった。

 それに対して、朝日新聞は反原発派の牙城であった。だがやがて現実に押し流され、原発には「No,but」(基本的には反対)というスタンスでようやく踏みとどまっていたが、1973年の石油危機をきっかけに、原発容認派が大勢を占め、ついに74年7月に1ページの3分の2を占める原子力のPR広告が、朝毎読の三大紙の中でいち早く掲載された。それを契機に、原発に対して「Yes,but」(基本的に賛成)へと大転換していく。

 79年には、原子力問題を担当する記者21人が集められ、記者個人が原発に反対するのは自由だが、その記事をボツにするかどうかの権限は編集局にあると、当時の編集担当専務が言い放ったと書いてある。

 この「東電帝国 その失敗の本質」を書いたのは元朝日新聞電力担当記者の志村嘉一郎(69)。先の朝日新聞への原子力広告は、読売が2番目で、反原発の連載などをやっていた毎日が、再三毎日側がお願いしても出してもらえず、だいぶ遅れて出広してもらったと本にある。

 この朝日の原発容認への転向は、反原発運動にも大きな影響を与えた。原発関連のPR費用は年間3,000億円と志村氏は書く。その莫大なカネを使って政治家、官僚、マスコミからマスゴミまでをたらし込み、安全神話が何の批判にもさらされず、歯止めのきかない原発大国への道をまっしぐらに突き進んできたのである。

 その朝日の現在の紙面に、原発批判、東電の責任問題、復興増税問題への追及がゆるいと感じるのは、私だけではないはずだ。

 さて、今週の文句なしのスクープ賞は「新潮」の記事。

 福島第一原発事故以来、原子力安全・保安院のスポークスマンを務め、日本中に顔が知れ渡ってしまった西山英彦審議官(54)が、あろうことか「経産省の美人職員を弄んでいる」というのだから、驚いた。

 書き出しは6月17日の23時過ぎ。20代後半と思しき清楚な女性と西山審議官が、ホテルオークラのオーキッドバーに連れだって現れた。

 女性が飲んだのはアマレットなどのカクテルで、西山審議官はテキーラや赤ワインを注文したとある。これほど詳しいのは、目撃していたのだろう。

 午前0時半過ぎにホテルから出てきた二人は、アメリカ大使館の前を通り、坂を歩き始める。その間に、西山審議官は彼女の手を握り腰に手を回す。

 あるマンションの前、オープンスペースに彼女を引き込むと、西山審議官が嫌がる彼女に迫り、唇を二度三度と奪った。

 ぬぬ、ここからは、ホテルへ一直線かと思ったが、期待に反して、彼女はホテルへ戻り、そそくさとタクシーで帰ってしまうのである。

 日本を代表する有名官僚の一夜だけの御乱行か。そう思って読み進めると、二人の仲は経産省の仲では有名で、1年前から「特別な関係」が続いているというではないか。

 特にデートの回数が増えたのは昨年11月からで、11月7日から1週間開かれたAPECの高級実務者会合で議長を務めていた西山審議官は、何と彼女と6回も夕食を共にしたという。

 さらに12月のデートの回数は10回にも上り、1日、3日……27日、28日だとある。しかし、これほど詳しい日にちは、当事者のどちらかが明かさなければ分かるはずはない。

 はてどちらか? 二人は食事の後よくカラオケに行ったそうだが、歌も唄わず、ラブホテル代わりにしていたという。さらに、こんなことまでバラされてしまうのだから、有名にはなりたくないものだ。

「西山さんは古いカツラを使っているので、激しい動きをすると、カツラがズレてしまうとか。だからゴルフとかはやらない。笑っちゃいけないけど、セックスする際、上の肌着を脱ぐとカツラが引っ掛かってズレてしまう。そのため、パンツは脱いでも上は着たまま、しちゃうそうです」(事情通)

 経産省のスーパーエリートは、原発事故以来のそつのない答弁で、次官の目も出てきていたようだ。彼の長女も東京電力に入社、清水正孝社長ともじっこんで、東電ベッタリ人間だった。

 こんな人間が、原発をチェックする側にいたのでは、まともなことができるわけはない。

 西山審議官は「新潮」の取材に対して、

「いつもの冷静さを失い、当初、中村さんと(愛人の仮名=筆者注)カラオケ店に行ったことを認めたものの、なぜか直ぐに前言を撤回。最後は『ノーコメント』を連発し、開き直るのであった」

 この記事で西山審議官はスポークスマンを外れ、エリート転落かと思っていたら、そうではないというのだから、二度ビックリである。記者に問われた西山審議官は、こう言ったそうだ。

「こういう記事が出ること自体が私の至らなさを示している。深く反省している」

 古い流行語だが、反省はサルでもする。聞けば、経産省というのは元々不倫の多いところで、こうしたスキャンダルは出世に響かない伝統があるのだそうだ。

 いくら厚顔無恥な御仁でも、この国難の時、これほどのスキャンダルが表沙汰になれば、身を引くのが筋ではないか。そんな常識さえもわからない経産官僚たちに、原発の安全など任しておいたのが間違いだった。つくづくそう思わざるを得ない。
(文=元木昌彦)

motokikinnei.jpg撮影/佃太平

●元木昌彦(もとき・まさひこ)
1945年11月生まれ。早稲田大学商学部卒業後、講談社入社。90年より「FRIDAY」編集長、92年から97年まで「週刊現代」編集長。99年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長を経て、06年講談社退社。07年2月から08年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(2006年8月28日創刊)で、編集長、代表取締役社長を務める。現「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催、編集プロデュースの他に、上智大学、法政大学、大正大学、明治学院大学などで教鞭を執る。

【著書】
編著「編集者の学校」(編著/講談社/01年)、「日本のルールはすべて編集の現場に詰まっていた」(夏目書房/03年)、「週刊誌編集長」(展望社/06年)、「孤独死ゼロの町づくり」(ダイヤモンド社/08年)、「裁判傍聴マガジン」(イーストプレス/08年)、「競馬必勝放浪記」(祥伝社/09年)、「新版・編集者の学校」(講談社/09年)「週刊誌は死なず」(朝日新聞社/09年)ほか

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ヅラより不倫より、やることがあるでしょうが。

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最終更新:2013/09/12 17:13
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