人間のたくましさとは!?　3・11のリアルを胸に刻み、今日を生きる術を見つけろ！

　日本、いや世界中を驚かせ悲しませたあの東日本大震災からちょうど半年。節目とも呼べる今日がくしくも”アメリカ同時多発テロ”が起きた9・11とは、まるで神様が与えた皮肉のようである。

　こんな日にネットの中で更なる不吉な予言をしている女性がいる。「9Nania」というハンドルネームで9月11日、9月26日、10月17日、11月23日、12月28日、1月2日に、また世界が驚く何かが起こると断言している。彼女はかの震災が起きる3日前に「3月11日から15日の間に何かが起こる」と予言する動画をYouTubeにアップしていた。実際彼女の予言は国内だけでなく、海外ネットユーザーの間でも話題になっている程だ。天体の動きから危険な日を予知するらしいのだが、果たして……。

　とは言え、実際、今年の今日この日、9・11には何も起こらないのかもしれない。もちろん何も起こらないことに越したことはないが、半年前のあの災害を自分には関係ないことだと忘却してしまうのではなく、経験として胸に刻み、次に起こるかもしれない震災のための教訓として活かす方法はないものだろうか？　それを知るのにうってつけな本が『河北新報　特別縮刷版』（竹書房）である。東北の宮城県仙台発の新聞である”河北新報”の震災後1カ月の主要紙面をそのまま掲載した本書は、あの日起こってからの事実を鳥肌が立つくらいシビアにリアルにかつ冷静に伝えている。

　例えば3月12日の紙面、震災翌日の写真では、家々が津波に飲み込まれ、大量の木片がその周りをたゆたっている宮城県名取市の様子が写っている。さらに一部の家が燃え上がり、もくもくと黒い煙が上がるその様は、水の恐怖と火の恐怖、両方が同時に襲いかかる様子が掲載されている。

　他にも、がれきの中で呆然と座り込む少女、波に飲まれて屋根の上で漂流していた男性、教え子を津波で亡くし悲しみにくれる教職員など、ページをめくるたびに映画やドラマの出来事ではない、リアルで悲惨な現実がそこには刻み込まれている。これが実際に起きたことなのかと目を覆いたくなるような写真が並び、１ページ１ページから被災地の当時の絶望感が伝わってくる。

　また「避難所いま」という、避難所の人々のメッセージを紹介するコーナーでは、これからどうやって生きていけばいいのか、途方にくれる人たちが漏らす本音が生々しく記されている。

　もちろん、今回の震災に関する報道は全世界から記者やレポーターが送られ、さまざまなマスメディアで取り上げられている。そのどれもが震災の恐怖と悲しみを伝えているのは確かだ。しかし、長年東北の地に根を張り、地元のことを伝え続けてきた”河北新報”の記者たちが自らも被災者の視点で報道した震災の様子は、それでも日々生き続ける東北人の強さ、潔さ、奥深さをしっかりと伝えている。

　また、希望の光が垣間見られるような記事も目に付く。間一髪、津波から脱出した児童、再会を果たし抱き合う老夫婦、震災12時間後、避難所で産まれた新しい命を抱きかかえる母親……。小さいけれど、確実に復興へと向かう人々の前向きな意志を感じさせる記事には、生命の力強さと素晴らしさに感動し目頭が熱くなる……。

　また、ここに1冊の新書版がある。『逆境を超える知恵』（同）は震災後、変わってしまった価値観、時代の空気の中で、いかに良い人生や生き方を探し出せばよいのか？　今という瞬間をどの様に過ごせば、充実した今日に変えることができるのか？　という根本的な問いに桜井章一氏が明快に答えてくれる1冊である。

　震災から半年がたった9・11という日を、恐怖の記憶の日として迎えるのではなく、なお、それでも生きようとし、前に進む人間のたくましさの記憶として心に刻み込んでみてはいかがだろうか。

●河北新報特別縮刷版　3.11東日本大震災1ヵ月の記録
http://www.takeshobo.co.jp/book_d/shohin/5527701

●逆境を超える知恵
http://www.takeshobo.co.jp/book_d/shohin/5528101

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