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「暴力団抜きでは興行も打てない!?」ボクシング界の重鎮による実名暴露の余波

boxing000000.jpg写真はイメージです

 ボクシング界が暴力団問題で大揺れとなっている。暴力団排除条例(暴排条例)の全国施行に伴い、業界執行部が暴排の動きを強める最中に、突如、業界の長老が、暴力団と業界との歴史的なつながりを週刊誌誌上で赤裸々に暴露したからだ。

 都内の中堅ジム会長が「この時期、実名であんな暴露話をする意図がまったく分からない」と戸惑いを隠せないのは、JPBA元会長で業界の重鎮として知られる新日本木村ジムの木村七郎会長の独白に基づいて、「週刊現代」(講談社)が11月28日発売号までの3週にわたって連載したスクープ記事「ボクシングと暴力団 その真実」についてだ。

 この連載で木村会長は、業界と暴力団との、これまでのつながりについて、渡辺二郎や亀田兄弟、辰吉丈一郎、薬師寺保栄といった歴代の世界王者にまつわる裏話などを語り、それに関わっていた暴力団幹部の実名まで多数明らかにした上で、「ボクシング界は、あの人たちに何十年と世話になってきたんだ。チケットの販売なんかで。なのにいきなり暴力団と付き合うなでしょ。それはやっぱり申し訳ない」などと、まるで暴力団を擁護するような姿勢を見せたのだ。

 JPBAや東日本ボクシング協会は、10月の暴排条例の全国での施行を受け、これまであいまいな部分も残されていた暴力団対応について「違反をしたら一発でアウト(業界追放)になる」(業界関係者)という厳しい規約を定める準備をしている。それに対し、木村会長は「今の理事はみな若いので、歴史を分かっていない」などと憤った。

 この余りにも”掟破り”な暴露に驚いた東日本協会は、連載途中で木村会長を理事会に呼んで事情を聞いたという。ところがその際、木村会長は連載の内容には「自分の意図とは違うところや事実無根な部分もある」などと弁明し、記事を書いたノンフィクションライターに「抗議する」とまで話していたという。

 にもかかわらず、その後に発売された連載3回目では、連載の余波に戸惑う業界の様子に触れたうえで、木村会長が自らの告白について「ボクシング界がこれからどうしていけばいいのか、それを考える上で、誰かが言わねばいけないことと自負しています」などと、改めて言い切っている。業界関係者は「何を考えているのか、まったく分からない」と戸惑い、「木村会長に何らかの責任をとってもらわないと混乱は収まらないのではないか」と語るジムの会長まで出てきているのだ。

 とはいえ、木村会長が”本当のこと”を語ったからといって、JPBAなどが木村氏を処分をするのもおかしな話。今の業界は想定外の暴露に困惑し、身動きできずにいるのが実情だ。あえて業界側の本音を要約すれば「木村会長、あなたの言う本音も分かる。けれど、それを今言っちゃおしまいでしょう……」ということのようなのだ。

 今の業界執行部は、建前として暴力団排除を厳格に進めざるを得なくなっており、今年中には、違反が判明したら即ライセンス停止や業界追放にするといった厳しい規約を定める方向で動いている。JPBAでは、年末に臨時総会を開いて規約の改正など行う見通しになっているという。

 ただ、厳格な規約を作っても、木村会長が暴露したように暴力団と浅からぬつき合いがあるジムが、いきなりすべてを断ち切れるのか疑問視する声もある。実際、木村会長の暴露話のなかで、かつての世界戦では、チケットを1,000万円単位で引き取ってくれていたという暴力団を完全に排除した場合、ヘタをすれば興行ができなくなるジムさえ出てくる可能性はあり、ある老舗ジムの関係者は、厳罰化の動きに「付いて来られないジムも必ずある」と指摘。今後、違反が発覚することも含めて「業界にとっての本当の嵐はこれから来る」と話している。

 一方、厳しい規約を作るなかで、新たな懸念材料も見えてきているという。

 それは暴排条例そのものの問題でもあるが、業界が弁護士らとも相談をしながら話を進めるなかで、誰を暴力団関係者や、その密接交際者と見なすべきのか、暴排条例には厳格な線引きがあるわけではないため、実際に問題が発覚したときに、どう判断し、処理すべきなのか、事前に決められない部分が多々あるのだという。

 たとえば、あるジム会長は、こう疑問を投げかける。

「ここ数年でも業界は暴力団とのつき合いを極力排除してきていた。それでいまどき、あからさまに自分が暴力団だといって近づいてくる人などいない。たとえば、どこかのジムで、健全で有力なスポンサーだと思っていた企業が、後で暴力団のフロント企業だと発覚したようなときまで一発で業界を追放していいものなのか」

 このため、ある業界幹部は「厳しい規約が作られても、それがどう運用するか、実際に何か問題が起こってみないとわからない」とつぶやいている。

 結局、長老が業界に投げつけた本音の爆弾は、業界が抱える矛盾を、より表面化させることになっており、そうした矛盾がある以上、そう簡単に業界の混乱は収まらないと見られる。
(文=ジャーナリスト・杉原章一)

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最終更新:2013/09/10 12:45
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