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ゆうばり4冠『くそガキの告白』が凱旋上映! “キンコメ”今野と田代さやかが見せたプリミティブな輝き

 主役の馬場大輔を演じたのは、キングオブコメディの今野浩喜。中村義洋監督の『ちょんまげプリン』(10)でヒロイン・ともさかりえを相手に軽妙な芝居を見せていたが、コントのスペシャリストだけあって1シーン1カットの本作のクライマックスで本領発揮。ヒロインである木下桃子を演じたのは田代さやか。“Vシネ界の良心”城定秀夫監督のヒット作『18倫』(09)、『18倫 アイドルを探せ!』(10)で爽やかなコメディエンヌぶりを見せた彼女が、本作ではさらに踏み込んだ演技に挑んでいる。馬場も桃子も夢や妄想だけが頭の中でパンパンに膨らんで、いつまでもブレイクできずにいる存在だ。カメラを前にして、それこそ童貞と処女のようにモジモジしてしまう。そんな2人がバチーンと正面衝突するクライマックスは、今野と田代の俳優としての潜在能力が覚醒した至福の瞬間と言えるだろう。

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 4月22日の先行上映の舞台挨拶には、本作がデビュー作となる鈴木太一監督ほか主要キャストが集結。映画初主演を飾った今野によると、ついつい口ごもる馬場大輔というキャラクターは鈴木監督自身がモデルとなっているらしい。実際のところ、鈴木監督は母親と2人暮らしとのこと。田代さやかによると、クライマックスの8分間に及ぶ長回しは、もっともっと長いシーンとして撮影していたそうだ。鈴木監督いわく「その中から、最も濃厚な部分を抜き取った」ことで、珠玉のシーンとして完成した。また、馬場とは映研時代からの仲間であるイケメン監督を演じた辻岡正人の言葉も印象的だった。「馬場は変わった男だけど、いずれは映画監督になる人なんだろうなと思った。監督を目指しているという今どきの若い子にはない、エネルギッシュさがある」と語った。洗練されていない、インディーズ映画らしい闇雲なエネルギーが込められた作品であることは確かだ。

 鈴木太一監督のデビュー作『くそガキの告白』は原石の輝きを秘めている。ただし、本作がただの原石で終わるか、ダイヤモンドの輝きを放つかは、今後どれだけの人の目に触れるか次第だろう。観た人の想いの分だけ、この作品は磨かれ、より輝きを放っていくはずだ。
(文=長野辰次)

『くそガキの告白』
監督・脚本/鈴木太一 出演/今野浩喜(キングオブコメディ)、田代さやか、辻岡正人、今井りか、仲川遥香(AKB48)、北川ひろし、高橋健一(キングオブコメディ)、石井トミコ 6月30日よりテアトル新宿ほか全国順次公開 <http://kuso-gaki.com>

最終更新:2012/07/02 02:04
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