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五輪商業化で誤審が増加!? 冷遇される審判の悲劇

誤審や買収疑惑で国中からバッシングを受けることも──協会も守ってくれない審判の弱さ

■審判への負担が増大 誤審はすべて審判のせい

 また、84年のロス五輪の際に、国際オリンピック委員会(IOC)会長サマランチが、民間企業をスポンサーに迎えて一気に推し進めた五輪の商業化も、審判の立場を苦しめる一因になっていると、早稲田大学スポーツ科学学術院教授の友添秀則氏は分析する。

「アメリカの大手企業がスポンサーに付くと、テレビ放送を盛り上げるため、試合展開をよりスピーディーに、そして勝負を即座に白黒はっきりつけようとする風潮が高まりました。全世界が注目する中、正確ではあるものの時間のかかるビデオ判定はそこそこに、人的ソースによってハイレベルでスピーディーな試合をジャッジしなければならず、どうしても誤審が増えてしまいます」(友添氏)

 それまで手弁当で五輪を運営していた”老舗”のIOCを放映権や企業スポンサーによって”優良企業”に成長させたサマランチだが、それにはアメリカの資本主義が寄与するところが大きいという。ただし、この悪名高き商業主義は”選手”の待遇に関し、一概に悪と言い切れないと、友添氏は言う。

「選手は、五輪でいい成績を収めると、企業がスポンサー契約を結んでくれる。引退後の保証がされていない選手からしたら、セカンドキャリアのため、スポンサーを付けたいわけです。アトランタ五輪体操女子団体で金メダルを獲得したアメリカのケリー・ストラグは一躍国民的スターとなり、大会中に推定5億円の広告契約を企業と結びました。日本選手の場合でも、テレビCM出演料が年間5000万円、大物選手だと1億円ともいわれています」(友添氏)

 さらにメダリストには、各五輪委員会から報奨金が授与されるが、日本の場合は金300万円、銀200万円、銅100万円程度。それに各競技の協会から100~2000万円の報奨金が上乗せされる。一方で、たとえ五輪の場で活躍したとしても、審判にはまったくと言っていいほど報酬はなく、商業化の恩恵にあずかれていない。

「五輪に出場する審判には、交通費、滞在費にごくわずかの手当が支給される程度といわれています。IOCから各国の五輪委員会に渡される分配金も、そのほとんどが協会の運営費と選手への手当で使われるのが現状。商業化によってそれなりに利益が出ているはずですが、その内訳を公にすることはなく、不透明な部分も多い。まして審判に対しての還元はほとんどない。これでは、審判の質の向上も、なかなか望めませんよ」(同)

 このように、低待遇が当たり前の審判に対し、大金と共に不正が持ちかけられた場合、彼らの心は動かないと言い切れるだろうか?

 また、「もちろん誤審をした審判にも責任はありますが、彼らを派遣している各競技の協会にも責任があると思います」と、金銭面以外でも各競技の協会に対して苦言を呈するのは、北海学園大学でスポーツ哲学・倫理学の教鞭を執る川谷茂樹氏。五輪における審判は、種目別に各協会が各国から選定し試合へ派遣しているが、氏はその責任の取り方を疑問視する。

「大きな誤審があった場合、協会や統括団体はその審判を処分するだけで、自分たちの責任は問われない。本来審判の技術向上は、審判個人の努力だけに委ねられるべきではなく、統括団体が組織的継続的に取り組むべきミッションです。批判されるべきはむしろ、技術不足の審判を派遣した統括団体のほうでしょう。審判は選手や観客から憎まれたりメディアで槍玉にあげられることもありますが、その労力やリスクの見返りに得られるものが仮に”名誉”くらいしかないとすれば、そんな割の合わない仕事に優秀な人材が集まるとは考えにくいですね」(川谷氏)

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