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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.188

行き詰まった人生の扉を開く鍵は“銭湯”にあり? 内田けんじ監督のオリジナル作『鍵泥棒のメソッド』

kagidorobo1.jpg内田けんじ監督、4年ぶりの新作『鍵泥棒のメソッド』。
ままならない人生は環境のせいではないことを、
じんわり教えてくれます。

 パチパチパチンッとパズルのピースがハマっていく面白さが内田けんじ監督の作品にはある。時間軸を組み替えた『運命じゃない人』(05)、誰の立ち場に立つかで世界が違って見えてくる『アフタースクール』(08)と凝りに凝ったオリジナル脚本で独自のポジションを築いている。堺雅人、香川照之、広末涼子の3人をメーンキャストに迎えた最新作『鍵泥棒のメソッド』はビンボーアパートで暮らす売れない役者と高額報酬を受け取る裏社会の仕事人が生活環境を交換したらどーなるかという人生入れ替え喜劇だ。さらに男2人の物語に婚活中の女性編集者が加わることでラブコメ的要素もブレンド。オセロゲームと知恵の輪を同時にクリアするような爽快感がラストに待ち受けている。

 30歳なかばで夢破れた男の悲劇がオープニングのシークエンスとなっている。桜井(堺雅人)は舞台役者として地道に頑張ってきたが、生活力が追いつかない。所属していた劇団は解散してしまい、いつかは売れっ子俳優になって籍を入れようと考えていた元同棲相手は別の男との結婚を決めた。このまま役者を続けても、桜井のサイコロからは“勝ち目”が出てくる可能性はない。桜井はオンボロアパートでの自殺を思い付くが、自殺すら満足にできない。財布の中にはもう小銭しかないものの、ふと銭湯の回数券が1枚だけ残っていることに気づく。もったいないから銭湯に行ってから自殺の続きをしよう。自殺を先送りにしたことから、桜井の人生は大きく変わっていく。銭湯に出向いた桜井は、脱衣場で自分の新しい人生のキーマンとなる男・コンドウと出会う。

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