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裁判所・検察・経済界にハシゴを外され続けた末路

なぜ日弁連は、弁護士余剰の元凶・新司法制度改革を推進した?

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なぜ日弁連は、弁護士余剰の元凶・新司法制度改革を推進した? – Business Journal(11月5日)

最高裁判所(「wikipedia」より)

 司法試験合格者の就職難が恒常化する中、今年の司法試験合格者数は2102名。今年もまた約2000人の水準に据え置かれた。

 2002年3月の閣議決定で定められた、「10年度に3000人合格」という目標を大きく下回ったまま、という言い方がある半面、これだけ就職難が深刻化してもなお、2000人を維持したともいえる。

 一般に司法試験の合格者数の増加は、規制改革を進めた「小泉改革の負の遺産」というイメージが強いが、小泉改革で突然合格者が増えたわけではない。
 
 90年まではほぼ500人だが、翌年以降ゆるやかな右肩上がりで増えていく。99年に1000人に達し、04年に1500人弱、そして新司法試験2年目の07年から2000人体制になっている。

司法試験合格者数の推移

 また、「法曹人口の大増員は、それに反対し続けてきた日弁連が、経済界からの圧力に屈した結果」というのも一般的な理解だが、これについても、法曹人口問題の変遷を綴った、小林正啓弁護士の著作『こんな日弁連に誰がした?』(平凡社新書)によると、日弁連自身が推進したものだという。

 その内容をざっと要約すると、次のようになる。

●法曹一元と引き換えに法曹人口増賛同に転じた日弁連

 法曹人口を増やせという社会の声は、60年代頃からあったが、日弁連の反対で司法試験は年間約500人しか受からない時代が長らく続く。よって立つ論拠は弁護士の「経済的自立論」である。

 いわく、人権活動は赤字だから、法曹人口が増えて「食える仕事」が取り合いになると人権活動ができなくなる。つまり経済的に自立できなくなる。人権活動を担う弁護士の経済的自立を実現するには法曹人口は増加させられない、というロジックである。

 潮目が変わったのは90年。平成バブル真っ盛りのこの時期、実入りが良い弁護士に人気が集中、裁判官や検事を志望する司法修習生が減り、危機感を持った裁判所や検察庁は、合格年齢が高いことにその原因を求め、結果司法試験の合格者を約700人に増やし、なおかつ若年志望者を優先的に合格させようという案を出してくる。

 当然、日弁連は抵抗を示し、「700人で若年層の優先合格なし」を主張。裁判所・検察庁連合軍は、「若年優先がないなら1000人」を主張する。司法試験改革の問題は、この頃までは裁判所、検察庁、日弁連の法曹3者が握っていたが、2対1では旗色が悪いので、応援してもらうつもりで外部有識者というかたちで経済界に意見を求めたら、経済界は1500人以上が妥当という回答。日弁連はアテが外れただけでなく、法曹人口問題の決定権も失ってしまう。抵抗むなしく日弁連が1500人体制を受け入れたのは97年である。

 合格者が増えれば、国費を投じる司法修習費用も膨らむ。このため、司法修習期間を短縮してコスト増を回避する一方、司法研修所に代わる教育機関として、法科大学院創設構想が浮上する。

 この法科大学院創設構想には、日弁連の悲願である法曹一元構想がリップサービス的に加えられていた。法曹一元制度とは、経験を積んだ弁護士の中から裁判官や検事を選ぶという制度で、裁判官や検事を司法修習終了後純粋培養で育てる日本やドイツ、フランスとは異なり、英米では採用されている。

 日弁連は1500人体制で法科大学院制度が創設されると当初は勘違いし、法曹一元実現のために1500人への増員もやむなしとして、一転、法曹人口増加賛成に主張を転換するのだが、後に実は合格者数は倍の3000人だとわかってからも、法曹一元の夢を捨てきれず、法科大学院構想に反対できなかった。

●逆算で決めた合格者数3000人

 99年に発足した司法制度改革審議会では、改革を進められない法曹3者はついにオブザーバーに格下げされて発言力を失う。結果、法曹一元も実現しないまま3000人体制も容認せざるを得なくなったーー。

以上、小林弁護士が整理するように、「法曹人口大増員を日弁連が後押ししてしまった」というのは、こういう事情だったのだ。

 日弁連は法曹増員には反対し続けたと考える法曹人も少なくないので、小林弁護士の主張には異論もあろう。だが、法曹人口の大増員のいきさつを断片的に語れる法曹人はいても、これほど史実を踏まえた説得性の高い解説は、ほかに類を見ない。

 ところで、なぜ司法制度改革審議会は合格者数を3000人に設定したのか?

 法科大学院構想をスムーズに実現させるため、当初は、法科大学院の設置数や定員の上限を設けなかった。そうすると、東大などこれまで司法試験で大量合格者を出してきた大学が希望する枠だけで相当人数を食うので、総定員を4000人と想定し、その7~8割を合格させるには合格者数を3000人にしないと計算が合わなかったのである。

 しかし実際にはその想定をはるかに上回る、74大学が法科大学院を設置、総定員も5800人を超えてしまった。だが、裁判官や検事の採用人数は増えないし、弁護士事務所が雇いきれる人数を大きく上回る人数の合格者が毎年送り出される。

 現在日弁連は、1500人体制への削減を主張しているが、これほど就職難が問題になっているにもかかわらず、07年度以降ずっと2000人体制が維持されたままだ。その理由もまた諸説あり、中には有力政党との関係が深い、宗教団体系の法科大学院への配慮だとする説もある。

●進む両極化、合格率引き上げに下位校は必死

 新司法試験が回を重ねるごとに、実績は残酷に積み上がる。合格率が高い上位校への志願者が増えるのは当然で、下位校との差は開く一方だ。姫路獨協、神戸学院、明治学院、大宮、駿河台の5校が撤退を決めたが、それ以外の低合格率校25校への補助金削減も決まっている。

 毎年法務省から公表される、法科大学院別合格者数を独自に集計している弁護士のブログもいくつかある。中でも秀逸なのは、社会人経験がある新司法試験組の弁護士のブログ「JAPAN LAW EXPRESS」である。法科大学院修了者は5年以内3回の受験が可能なので、修了年度別に集計した合格者の延べ人数を、受験者の延べ人数で割って、累積合格率を出しているのである。

 結果はというと、上位12校くらいまでは、12年度の合格率と概ね同じ順位なのだが、それ以下になると、12年度の合格率が20位以内なのに、累積合格率だと40位以下という不思議なケースが出てくる。個別に見てみると、受験者数が近年極端に少ない。 

 こういうケースを見てしまうと、合格率を上げるために合格水準に達しない学力の修了者には受験を踏みとどまらせる法科大学院がある、という噂話が信憑性を帯びてくる。

 逆に、累積合格率は比較的高いのに直近が低いというケースもある。新司法試験開始当初1~2年の合格率が高いので、直近が低くても累積だと高く出る。年々、優秀な学生が上位校に流れていった結果がこれなのだろう。

 500人時代に社会人から司法試験に挑戦し合格した知人の弁護士が、以前「司法試験受験はバクチみたいなもの。合格は宝くじに当たるようなもの」と言っていた。合格者が2000人に増えたことで、合格ではなく法律事務所に就職できることが宝くじに当たるようなものになったのかもしれない。

●当事者は意外なほど気丈

 だが、先輩弁護士や社会から気の毒がられている新司法試験合格者本人たちは、意外なほど気丈だ。「法科大学院修了者の25%しか司法試験に合格できないことも、司法修習を終了しても就職先は容易に見つからないであろうことも、新司法試験3年目の受験者あたりからは織り込み済み」だという。

 弁護士は生身の人間を相手にし、実務経験を積み上げてはじめて機能する。だから法律事務所に就職し、先輩から指導を受けることが絶対条件になる。だが、中途半端な事務所に就職すると、誤った指導を受けてしまうリスクもある。きわどい案件に手を染めざるを得なくなることもあるだろう。

 その一方で、就職がかなわず、やむなく即独(即、独立の略)を余儀なくされても、弁護士会の分野別の研究会にこまめに参加し、先輩弁護士に教えを請い、時には案件を手伝わせてもらいながら経験を積んでいるという弁護士は少なからずいる。弁護士は他の業界ではまず見られないほど、同じ事務所でもなんでもない、縁もゆかりもない後輩の面倒をよく見る傾向にある。

「自分は2000人体制だからこそ合格できた、だから自力で研鑽を積むのは当然なのだ」という若い弁護士に出会うと、「これから淘汰されるのは、研鑽を積むことを忘れた、年配のロートル弁護士のほうだ」という思いを強くするのである。
(文=伊藤歩/金融ジャーナリスト)

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最終更新:2012/11/06 07:00

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