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ラジオ批評「逆にラジオ」弟9回

笑いと文学をつなぐ究極読書芸人の隠れ家的ユートピア『ピース又吉の活字の世界』

matayoshiradio_.jpg『第2図書係補佐』(幻冬舎)

しゃべりと笑いと音楽があふれる“少数派”メディアの魅力を再発掘! ラジオ好きライターが贈る、必聴ラジオコラム。

 ピースの又吉直樹は、今もっとも売れている芸人の一人である。そんな彼が、華やかなテレビのゴールデンタイムの裏で、驚くほど静かに、ひっそりと文学を語っている。芸人ラジオのゴールデンタイムといえば、テレビの喧噪がすっかり遠のいてからの時間帯、つまり『JUNK』(TBSラジオ)や『オールナイトニッポン』(ニッポン放送)が放送されている、深夜1:00~3:00である。今ピースがラジオをやるならば、まさしくそのどちらかの枠がふさわしいだろう。しかし、又吉にとってラジオ初のレギュラー番組となる『ピース又吉の活字の世界』(ニッポン放送 水曜20:00~20:30)は、そのどちらの枠でもなく、時間も短く、コンビでもなければ、お笑い芸人然としたハイテンションでもない。30分間、又吉が本の魅力をただひたすら語るという、それだけの番組だ。しかしこれが、妙に面白い。その面白さの中に含まれる「妙さ」こそはまさに、優れた文学作品を読んだときに感じる面白さである。

 お笑い芸人が、お笑い以外の趣味を核とした枠組みで番組をやることは、テレビでもラジオでも時にあるが、多くの場合、その芸人の持つ面白さは、扱っているジャンル自体の持つ面白さの枠内に押し込められてしまう。車好きの芸人が自動車の番組をやっても車自体の面白さには勝てず、競馬やパチンコの番組をやっても、その中でその芸人ならではの特長を出すのは、とても難しい。しかし、この『活字の世界』という番組においては、むしろテレビでの又吉よりも面白いといっていいくらい、彼の本領が発揮されていると感じる。それはきっと、本というものが、又吉にとって趣味という領域をはるかに越えてしまっているからだ。

 初回放送で又吉は、「本が好きな人が世の中に増えて、どんどんみんな小説を書いて、その面白い小説が読める世の中になれば、最高の人生を過ごせるんじゃないかと思ってる」という、本好きのユートピア幻想ともいうべき理想論を掲げた。まるでこの世には本と人間以外には何も存在していないような、恐ろしくピュアでロマンティックな理屈である。又吉にとって本とは、すでに趣味の領域を越えて、イコール世界になっている。そんなことをいうと、「書を捨てよ、町へ出よう」と寺山修司のような、リア充目線のお説教がどこからか飛んできそうだが、本は人が書いたものである以上、それは人の思考回路そのものであり、さらには人の発想が組み立ててきた世界そのものであるということも、またひとつの事実ではないか。

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