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「国民作家の地位は、宮崎駿から宮藤官九郎へ」中森明夫が論じる『あまちゃん』の震災描写

【リアルサウンドより】

 中森明夫氏がNHK連続テレビ小説『あまちゃん』と、ヒロイン天野アキを演じた能年玲奈について語り尽くす集中連載第2回。第1回「中森明夫が『あまちゃん』を徹底解説 NHK朝ドラ初のアイドルドラマはなぜ大成功したのか?」に引き続き、今回は『あまちゃん』で震災を描いた脚本家・宮藤官九郎への評価から、アイドル史における能年玲奈の”可能性の中心”まで、中森氏が縦横無尽に語った。インタビュアーはアイドル専門ライターの岡島紳士氏。

――『あまちゃん』が震災を描いたこと自体についてはどうでしょうか。

中森:NHKの朝ドラというお年寄りも東北の人も見ている場で、まだ2年半しか経っていないセンシティブなテーマを取り上げる。これは、宮城県出身の宮藤さんと、音楽を担当した福島育ちの大友良英さんというコンビでなければできなかったと思います。これまでサブカルチャー的な若者主体のドラマの書き手だった宮藤さんにとっては、まだ傷の癒えていない震災を描くのは大変なことだったでしょうね。僕は宮藤さんをポスト・モダンの代表的なクリエイターだと思っていました。つまり、戦争、学生運動などの大きな物語ではなく、“小ネタ”をうまく描く作家だと。宮藤官九郎は初めて「大きな物語」を書いた。作家としてジャンプしたんだと思います。

 アイドルは大したものじゃないとか、サブカルチャーで軽いものだとか言われますが、AKB48はいまだに震災のチャリティーをやっているし、震災後の東北を励まし続けてきた。作中では「GMTなんて偽善じゃないか」「でも、元気にしてくれるよね」というやりとりもありましたが、毎日2000万人が観ている“テレビ小説”の影響力は圧倒的です。新聞の連載小説に近いものだし、司馬遼太郎でも、村上春樹でもなく、宮藤官九郎こそ現在の最大の国民作家だと思います。

 『あまちゃん』で震災が描かれたのは、関東大震災の90年後の翌日でした。奇しくも前日には、『風立ちぬ』で関東大震災を克明に描いた宮崎駿が引退宣言をしている。去年亡くなった僕のおふくろは毎日NHKの朝ドラを観ていて、夏の時期になると戦争の場面で決まって涙を流しながら自分の戦争体験を語っていました。僕は戦争を知らない世代なので、その涙の本当の意味は分かりませんでしたが、しかし東日本大震災を経験し、それが『あまちゃん』で描かれるのを観て、「こういうことだったのか」と理解ができた。これが国民作家のやることであって、その地位が宮崎駿から宮藤官九郎に移ったのではないかと思います。彼はクドカンと呼ばれて飄々とした人ですが、『あまちゃん』でそういう役割を担ったのではないかと。

――宮藤官九郎は時代を描ける作家になったという意味でしょうか?

中森:「時代」という大きな話で見ると、例えば戦前までは軍国主義で領土を拡大していったが、それは大失敗だった。これは宮崎駿のテーマでもあるでしょう。その後、日本は『三丁目の夕日』的な高度成長期を経て、経済大国になりますが、その果てにはバブルの崩壊があり、何が豊かなのかがわからなくなった。

 そんな中で『あまちゃん』を観ていて、面白かったのはアキの祖母、宮本信子が演じた“夏ばっぱ”の言葉です。母の春子はアキがアイドルになることに反対するのに対し、夏ばっぱは「観光海女は人を喜ばすのが仕事。アイドルも同じだからやればいい」と言う。ここで貫かれている価値観は、“人を喜ばせること”です。僕は『アイドルにっぽん』という本で、軍事大国になるとか、経済でバブルになって浮かれて騒ぐのではなく、「日本はアイドルになるべきだ」と書きました。アイドルは歌がうまいわけではないが、周りの人が元気になる。北三陸では、人を喜ばせて自分も喜ぶという社会が見事にできています。


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