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凶悪犯罪の真相

足利事件から24年 ジャーナリストが迫る、北関東連続幼女誘拐殺人事件の「真実」

 本書において、清水は「ルパン」と呼ばれる男を真犯人として身元までも特定している。けれども、いくら警察に働きかけたところで、一向に捜査が進展する気配はない。菅家氏とDNA型の異なる「ルパン」が真犯人として逮捕されれば、DNA型鑑定に対する神話は完全に崩壊する。そして、それは「飯塚事件」において、国家によって無罪の市民が殺害されたことをも意味しかねない……。

 本書のあとがきで、わずか数行だけ、清水は個人的な過去をさらりと記している。彼自身、娘を事故で失った過去を持っている。もしかしたら、清水はその過去と、ジャーナリストとしての仕事に一線を引きたかったから、本文中ではこの過去について触れていないのかもしれない。しかし、その事実を知って、彼によるこの言葉は重く、深く響いてくるだろう。

「そもそも報道とは何のために存在するのか――。この事件の取材にあたりながら、私はずっと自分に問うてきた。(略)謎を追う。真実を求める。現場に通う。人がいる。懸命に話を聞く。被害者の場合もあるだろう。遺族の場合もある。そんな人達の魂は傷ついている。その感覚は鋭敏だ。報道被害を受けた人ならなおさらだ。行うべきことは、なんとかその魂に寄り添って、小さな声を聞き、伝えることなのではないか。権力や肩書付きの怒声など、放っておいても響き渡る。だが、小さな声は違う。国家や世間へは届かない。その架け橋になることこそが報道の使命なのかもしれない、と」

 本書は、北関東連続幼女誘拐殺人事件の真相を追ったジャーナリストの一冊だ。それは、同時に警察に対して、メディアに対して警鐘を鳴らす一冊でもある。

 5月12日、足利事件によって松田真実ちゃんが殺されてから、今年で24年目を迎える。
(文=萩原雄太[かもめマシーン])

最終更新:2014/05/08 21:00
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