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アスリート列伝 第19回

【アジア大会マラソン 銅メダル】市民ランナー・川内優輝の使命感とマラソン愛

519BZgrOicL.jpg『走れ、優輝』(中央公論新社)

 埼玉県庁の市民ランナー・川内優輝が大きくメディアに取り上げられるようになったのは、2011年の東京マラソンがきっかけだった。この大会で、2時間08分のタイムを叩き出し、日本人としては最高位となる3位に入賞した川内。まさか、実業団にも所属しない「市民ランナー」がここまで脚光を浴びるとは、誰も考えていなかった。

 以降、国内大会のみならず、シドニーマラソン、エジプト国際マラソン、オーストラリア・ゴールドコーストマラソンなど、海外の舞台でも優勝を収めてきた川内。ロンドン五輪こそ出場できなかったが、2011年の世界陸上テグ大会、2013年の世界陸上モスクワ大会にも出場を果たしている。

 公務員としてフルタイムの仕事をこなしながら、市民ランナーとしてトレーニングを積む川内。いったいどうして、川内だけがこのような好成績を残すことができたのだろうか? 彼の母親が執筆した『走れ、優輝』(中央公論新社)を元に、その秘密をのぞき見てみよう。

 春日部東高校で陸上部に所属し駅伝を走っていた高校3年生の川内は、学習院大学への進学を決意する。これは、駅伝をする高校生にとって異例の決断だった。学習院の陸上部は、箱根駅伝に出場したことがない、いわば弱小校。けれども、川内は強豪大学に進学して厳しい環境に身を置くことよりも、「楽しく走る」ことを優先した。

 だが、学習院大学陸上部に入部した川内の胸には、「本当にこんな練習でいいのだろうか?」という戸惑いが広がる。

 高校時代は、春日部東高校で毎日厳しい練習に取り組んできた川内。しかし、大学では朝練もなく、週に2回も休みがある。高校では週に3~4回行われていたハードな「ポイント練習」も、大学では週に2回。監督は「無理をするな」「競り勝たなくていい」とアドバイスを送る……。

 だが、意外にも、川内はこの環境でグングンと成績を伸ばしていったのだ。高校時代は厳しい練習によってケガに苛まれていた川内。大学の少ない練習時間は、入念な準備運動や体のケア、少ない時間で効率よく練習することを彼に教えた。高校時代は県大会レベルだった記録は、関東大会で戦えるほどに向上。川内は箱根駅伝の関東学連選抜として、学習院大学初の箱根駅伝出場選手に選出される。

 在学中には、2回の箱根駅伝出場で、それぞれ区間6位、区間3位という成績を収めた川内。普通のランナーであれば、実業団に入り、次なるステージに進むのが常識だが、川内が選択したのは「国家公務員試験」だった。実業団からも誘いがあったが、陸上だけでずっと食べ続けられる実力はないと考えた川内は、公務員として勤務しながらマラソンを続けていくことを選択した。

 だが、川内は自信がないわけでも、楽な道を選んでいるわけでもない。彼ほどマラソンを愛している人間もいないだろう。当初から、川内の目標は「継続して楽しみながらやっていくこと」と「生涯現役を貫く」こと。彼にとって、マラソンは若い間のスポーツではなく、一生をかけて取り組むものなのだ。試験をパスするも、国家公務員になると陸上の練習時間を確保することは難しいと考えた川内は、内定を辞退して地方公務員に就職する。彼は、マラソンのために埼玉県庁を選んだのだ。

 社会人となった川内は、埼玉県立春日部高等学校定時制に埼玉県職員として勤務しながら、毎日2時間ほどを練習に充てている。もちろん、ほかの選手に比較して練習は少なく、実業団選手が月に1000km走るところ、川内は600kmほど。また、実業団では1日に2回、3回と練習を重ねるが、川内の練習は1日に1回のみ。1回きりの練習に集中して取り組むことで、長時間の練習にも勝る成果を上げている。常に限界を超えながら走るのではなく、抜くべき時にしっかりと抜き、メリハリをつけることこそが、川内にとって最も大事な練習メニューなのだ。

「フルタイムで仕事をしているからこそ、常に“走りたい”と思える。一日中練習をしていると、なかなかそうはなりづらいかもしれない」

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