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テレビウォッチャー・てれびのスキマの「テレビ裏ガイド」第104回

なぜ、日本のマンガはこんなにも豊かなのか? Eテレ『浦沢直樹の漫勉』が映すもの

urasawa0917NHK『浦沢直樹の漫勉』公式サイトより

「マンガ界が騒然となるんじゃないですかね」

 浦沢直樹が、そう興奮しながら収録に向かうのが『浦沢直樹の漫勉』(Eテレ)だ。この番組は『YAWARA!』『MONSTER』『20世紀少年』など、数多くのヒット作を世に放った人気マンガ家・浦沢直樹が立ち上げたプロジェクトだ。

 マンガ家の原稿執筆現場に密着し、そのペン先を映像に残そうというのだ。企画の着想は、かつて浦沢が見たNHKのドキュメンタリー番組『手塚治虫・創作の秘密』がキッカケだった。マンガの神様・手塚治虫の作品制作の過程を追ったこのドキュメンタリーが、「衝撃的で新鮮」だった。

「世界のマンガファンって、みんな日本人の描き方を見たがってますよね。世界に配信されるような話だと思うんですよね。日本人のマンガ家のペン先って」

 だが、マンガ家の現場は繊細な“聖域”だ。そこにカメラが入っていくのは難しい。そこで浦沢は自らが実験体になり、小型無人カメラを使った撮影システムの開発・構築を行っていった。

 試行錯誤の末、番組として初めて放送されたのが、2014年11月9日のパイロット版だ。『沈黙の艦隊』『ジパング』などのかわぐちかいじと、『天才柳沢教授の生活』『数寄です!』などの山下和美に密着したこの放送は、文字通り視聴者を“騒然”とさせ、大反響だった。

 そして、今年9月から第1シーズンが始まり、これまで東村アキコ、藤田和日郎に密着(いずれも20日に再放送予定)。今後も18日に浅野いにお、25日にさいとう・たかをがラインナップされている。さらに、来年3月から第2シーズンが始まる予定であることも、すでにアナウンスされている。

 この番組の大きな魅力のひとつは、「カリッ、カリッ、シュッ!」というペン先の音だ。
真っ白の紙に時に大胆に、時に繊細にペンを走らせ、登場人物が描かれていく光景はとても気持ちがいい。

「元はやっぱり、白い紙だったってこと。マンガ家さんたちが描くことで、その白い紙に世界が現れる」と浦沢が言うように、そのペン先の音は、世界が生まれる音なのだ。

 だが、作業現場もさまざま。その音がほとんど聞き取れない現場もある。たとえば、藤田和日郎の現場だ。

「ムクチキンシ(無口禁止)」と描かれたポスターが貼ってある現場で、藤田は終始アシスタントたちと談笑しながらマンガを描いている。作業中は静かな現場が多い中、異質だ。

「同じ業種として見られてるけど、ひとり1業種なんですよ。ひとり1ジャンル」

 と浦沢は言う。

 その言葉通り、密着した映像を見ると、同じマンガを描いているのに、現場の雰囲気だけではなく、そのやり方も十人十色だということがわかる。ネームや下描きの描き方、使うペンの種類、コマの枠線の引き方、修正液の使い方など、それぞれのマンガ家が、多種多様なやり方で行っている。

 浦沢が冒頭で「騒然となる」と言ったのは、藤田の下描きの描き方、いや、描かなさだ。

 通常、マンガ家は、原稿用紙にまず鉛筆などで「アタリ」を描く。これは大まかに人物などの位置関係を示し、構図を決めるものだ。そして、それを元に「下描き」を描く。この「下描き」をペンでなぞる「ペン入れ」をすることで、作品を仕上げていくのだ。

 だが、藤田は違う。「アタリ」を描いただけで、なんと「下描き」を飛ばして、いきなり「ペン入れ」をしてしまうのだ。そして、そこに何度も何度もホワイト(修正液)を入れることで、線を彫り出すように描いていく。

「あのホワイトは、魔法の道具ですか?」と驚愕しながら尋ねる浦沢に、藤田はサラッと答える。

「魔法の道具っていうか、こっちが筆記具っていう感じです。要するに、ホワイトとペンの両方でペン入れしていくわけです。線を削って成形している感じが、自分は好きなんですよね」

『漫勉』のもうひとつの魅力は、やはり浦沢の存在だ。作業現場に密着しているだけでは、実際にマンガを描いた経験がある人しか、それがいかにすごいか、いかに特別なやり方か、はわからない。そこに浦沢という“解説者”がいるから、それがよくわかるのだ。

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