日刊サイゾー トップ > エンタメ > ドラマ  >  月9『いつ恋』第5話レビュー
構成作家・相沢直の“スナオなドラマ考”

震災前日、“真実の場所”で暴かれた想い――ウソと本当を見分ける方法『いつ恋』第5話

 好きよ、という連呼は、小夏がずっと練に言いたくて、それでも言えずに隠していた言葉だ。ここは本当の場所なのであり、だから好きよという言葉も隠し通すことができない。彼女は練と音と木穂子のウソを告発しながら、自分自身のウソにも気付いてしまう。場所の力はそれほどに強い。人は誰だって、いつかは自分のウソと向き合わなければならないのだ。

 そして彼らが向き合わなければならないのは、自分がついたウソだけではない。ドラマ内の日付は2011年3月。タクシーの運転手が「おめえ知ってたが? 坂上二郎さんが亡ぐなっちまったんだってよ」と、2011年3月10日にこの世を去ったコメディアンの話をしている。東日本大震災という圧倒的な現実は、原発の安全神話という大きなウソを丸裸にした。誰もが自分の生き方と向き合ったあの日、練は、音は、果たして何を思うのだろうか。

 第5話の中で、音が静恵ばあちゃんと話していた。音は「いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう」と語り、「私、私たち今、かけがえのない時間の中にいる」とつぶやいた。我々視聴者もまた、ドラマ『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』という、かけがえのない時間の中にいる。
(文=相沢直)

●あいざわ・すなお
1980年生まれ。構成作家、ライター。活動歴は構成作家として『テレバイダー』(TOKYO MX)、『モンキーパーマ』(tvkほか)、「水道橋博士のメルマ旬報『みっつ数えろ』連載」など。プロデューサーとして『ホワイトボードTV』『バカリズム THE MOVIE』(TOKYO MX)など。
Twitterアカウントは@aizawaaa

最終更新:2016/02/25 16:10
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