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“売春島”は本当にあった!? 消えていく外国人娼婦たちの声なき声『娼婦たちから見た日本』

 日本のどこかに“売春島”と呼ばれる島がある――。半ば都市伝説のようにささやかれるそれは、本当に存在するらしい。フォトジャーナリスト八木澤高明の『娼婦たちから見た日本』(角川書店)では、著者がその“売春島”をはじめとする色街の隆盛と没落を見つめ続けた10年間のルポ。横浜・黄金町、沖縄、はては海外タイなどの色街を訪ね、そこに生きる娼婦たちとのやり取りや色街の成り立ちなどをしたためている。

 “売春島”こと三重県の渡鹿野島は、江戸時代以前より存在し、漁業で賑わう島だったという。江戸と大阪を結ぶ海路上にあることもあり、船乗りたちが風を待つために立ち寄ることが多かった。島の人々は、8人ほどが乗れる小舟「はしりがね」で停泊する帆船に近づいて、娼婦が男たちの相手をすることから、そのまま娼婦たちのことを「はしりがね」と呼んだそう。

 島と対岸が船で埋まるほどの人の往来があったそうだが、明治になると、蒸気船が登場し、風を待つ必要がなくなった。娼婦たちは次第に姿を消していく。多い時は島に350人ほどいて、一晩で何百万と稼いだとされる渡鹿野島の娼婦は、現在は18人とされる。ほとんどがタイなどの東南アジアの女たちだ。彼女たちは、紛れもなく1970年代に現れた“じゃぱゆきさん”の名残だ。

 明治末期、外貨獲得のために海外の娼館に売り飛ばされた日本の女性たちがいた。“からゆきさん”と呼ばれた彼女たちは、文字通り体を張って外貨を稼いだという。中には騙されて海を渡ったという話もあるが、日本が国際社会に進出していくにつれ、「国家の恥」としてないものとされ、忘れられていった。今現在、色街の街頭に立つ娼婦の多くは、“からゆきさん”の逆輸入版の“じゃぱゆきさん”たち。経済的理由や、祖国の家族を養うために、日本にやってきて身を挺して働く彼女たちの言葉には心を打たれるだろう。

 八木澤が横浜・黄金町で出会ったタイ人女性は、父親の病気の治療費を稼ぐために日本に来たという。娼婦を「悪い仕事」と語る彼女は、黄金町の浄化とともにいなくなった。過去250軒ほどのちょんの間があった黄金町は、2005年の摘発により全店舗が営業停止に追い込まれ、現在アートの町として生まれ変わっている。

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