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「もう、お前死ね……」貧困が招く悲しき老後生活『万引き老人』

 テレビの特番などでたびたび取り上げられる“万引きGメン”。スーパーや家電量販店でのさばる万引き犯を、ジッと監視し決定的な瞬間を待って捕まえる。現在も万引きGメンこと保安員として日夜窃盗犯の捕捉につとめる、伊東ゆうの著書『万引き老人』(双葉社)は、万引き犯となった高齢者、“万引き老人”の実態にせまったルポだ。
 
 特売品が売り切れていたことに腹を立て、万引きをした老女。保安員の手から逃れるため、車を急発進させた。思わず保安員をひいてしまうところだったが、「なんなんですか?」と言ってのける厚顔ぶりだ。最終的に警察に引き渡された老女は、翌日夫と思われる男性と店に謝罪に来た。
 
 ところが、老女は今回の件で仕事がクビになったと怒鳴り散らす。保安員を危うくひきそうになったことを初めて知った夫は、長年連れ添った妻に対して「もう、お前死ね……」とうなるようにつぶやいた。

 窃盗は共犯になると罪が重く、即時逮捕となる。伊東が捕捉した実行犯のとある老婆は、見張り役の男性を「ご主人様」と呼んでいた。話を聞くと、老婆は少し前までホームレスで、見張り役の老人に拾われたという。拾ってやった見返りに万引きを強要されたと語る。「ほんと、奴隷みたいな生活なのよ……」。証拠不十分で逮捕にならなかった老婆は、男性に引き取られた。

 また、この老婆のようなホームレスを利用して収入を得る“万引き商人”も存在する。ホームレスが万引きした商品を安く買い取り、それを別のホームレスに高く売ることで収入を得る。その地域では、スーパーよりも安く購入できると主婦たちも盗品を買っていたそうだ。

 万引きの動機は、「生活の困窮」、「店舗への腹いせ」「寂しいから」などがおおよその理由だが、伊東が出会ってきた万引き犯の中にはそうではないケースもある。

 出刃包丁を万引きした60代の女性は、自殺を図るために包丁を盗んだと語る。嗚咽をもらす女性に伊東が事情を聞くと、仕事一筋で生きてきた彼女は、会社が倒産したことに絶望し自殺を決意。「ここで自殺したら、生命まで会社に捧げることになっちゃうじゃない」伊東はそう言った。

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