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『SRサイタマノラッパー~マイクの細道~』第6話 1シーンに凝縮されたIKKUらが東北を旅する意味

sr0501テレビ東京系『SRサイタマノラッパー~マイクの細道~』番組サイトより

 東北道を縦断するロードムービー『SRサイタマノラッパー~マイクの細道~』。自分たちに直接関わること以外には関心のなかった「SHO-GUNG」のメンバーが、被災地にどう向き合うのか気になっていた視聴者も多かったはずだ。2011年4月、入江悠監督は『SRサイタマノラッパー』(09)、『SRサイタマノラッパー2 女子ラッパー☆傷だらけのライム』(10)に続く新作『劇場版 神聖かまってちゃん ロックンロールは鳴り止まないっ』(11)の劇場公開を控えていた。大震災の直後であり、公開は延期すべきという声も上がるピリピリした緊張感の中で、『ロックンロールは鳴り止まないっ』は上映された。先行き不透明な社会状況に不安を感じている人たちへ、ほんの少しでも励ましになれればいい―そんな想いでの上映だったと思う。

 その後、入江監督は『SRサイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者』(12)で震災後ますます経済格差が顕著になっていく下流社会を描いているが、メジャー系の作品では震災について直接的に触れる機会はなかった。震災から6年。入江監督、そして入江監督の分身でもある「SHO-GUNG」の3人はようやく被災地に立つことになった。

 トラック運転手・カブラギを演じる皆川猿時は、岩手を舞台にしたNHK朝ドラ『あまちゃん』(13)では磯野先生役を好演した。そんな皆川をはじめとする『マイクの細道』のメインキャスト5人が「がんばろう!釜石」と大きな看板が立てられた被災地で黙って手を合わせる姿が遠景で映し出される。わずか数秒のシーンだったが、津波に遭った湾岸部はまだ更地のままで復興途上なことが伝わってくる。『マイクの細道』の後半戦の始まりとなる第6話は被災地から幕を開けた。

 今回もシリーズ序盤の恒例となっていた夢はじまりはなし。IKKU(駒木根隆介)やTOM(水澤紳吾)たちはクラブチッタのステージに立つという現実的な夢の実現に向かって一直線なことが分かる。そして才能がなければ、努力する根性もないダメ人間の集まりでもある「SHO-GUNG」だが、唯一の長所といえるのは他人の痛みをきちんと感じることができるということ。表現者として、また人間としていちばん大切なことだろう。

 前回の終わり、『SR1』で死んだはずの伝説のトラックメーカー、タケダ先輩は実は双子で、お兄ちゃんが福島にいることが判明。IKKUたちはカブラギ(皆川猿時)に頼んで福島に立ち寄ることに。周囲に憚ることなく、遠野のドブロク屋の看板娘・雪(中村静香)に猛烈にアプローチしていたカブラギは、前回見事に振られてしまった。泣きたいときは泣いたほうがいい。雪景色で美しい猪苗代湖で入水自殺を図ろうとするカブラギ。「古池や蛙飛び込む水の音」という名句を江戸時代の俳人・松尾芭蕉は残しているが、裸になって泣き叫びながら湖に飛び込もうとするカブラギはカエルというよりも、ゾウアザラシ。しかも盛りの付いた。ここまで見苦しさを全身で表現できる人間はそういない。

 泣き叫ぶゾウアザラシを、懸命になだめるIKKUやトーコ(山本舞香)。ウマの合わなかった顔ぶれだったはずが、苦楽を共にして次第に旅の仲間となってきたようだ。気分転換に猪苗代湖の遊覧船に乗る一行。MIGHTY(奥野瑛太)たちが船内で兄タケダはどこにいるのか売店のおばちゃんに聞き込みをしていると、甲板ではまだ落ち込んだままのカブラギへトーコが思い切りシェイクしたコーラ缶を手渡している。ヤンキー娘なりの歪んだ励まし方である。船の室内と室外で2つの小さなドラマが1シーン1カットの長回しで同時に進行する。何げないけど、深夜ドラマならではのおかしみを感じさせる演出シーンだ。

 いよいよ一行は兄タケダがいるらしい竹田寺へ。ここはなんと世界で唯一のヒップホップ寺であり、ラップ音楽で己を見つめ、世界と向き合うために若者たちが修業に励んでいた。もはやここは東北ではなく、日本でもない、『少林寺三十六房』(78)の世界。香港カンフー映画が大好きな入江監督らしい。IKKUが『西遊記』に出てくる猪八戒に見えてくる。まぁ、後はネズミ男と前科もののヤンキーだけど。孫悟空のいない『西遊記』だな。


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