日刊サイゾー トップ > 連載・コラム  > 橋本環奈が『銀魂』で新境地
ドラマ評論家・成馬零一の「女優の花道」

ゲロシーンも完全再現! 『銀魂』でイジリ倒された橋本環奈の、コメディエンヌとしての才能

 角川映画40周年記念作品という鳴り物入りで公開された作品だが、“橋本を美少女として撮る”というビジュアルに対する意識は高かったものの、彼女が演じる主人公の星泉がお飾り人形みたいで、あまり物語とリンクしているとはいえず、彼女の魅力を生かしているとは思えなかった

 かつて主演を務めた薬師丸ひろ子と比べるのはかわいそうだが、それを差し引いても、映画としてあまりうまくいっているとはいえなかった。

 彼女が不幸なのは、“美少女”というイメージが定着しすぎていることだろう。そのため、人間として生き生きとした役が与えられず、いつもお客さん的な扱いで終わってしまう。

 そんな中、彼女のイメージをいい意味でぶっ壊したのが、現在公開中の『銀魂』である。

 本作は、「週刊少年ジャンプ」(集英社)の人気漫画を映画化したもので、宇宙人に支配された架空の幕末を舞台にしたSF時代劇コメディだ。

 橋本が演じるのは、宇宙最強「夜兎族」の生き残りの少女・神楽。神楽は三つ編みにチャイナ服を着て、語尾に「~アル」「~ヨ」と話す漫画的なキャラクターだ。ジャンプ史上初のゲロを吐いたヒロインであるため“ゲロイン”といわれているのだが、そこもしっかりと再現されていた(モザイクはかかっていたが)。

 原作通り、下品なセリフも多い。今までの美少女的イメージからは大きく逸脱しており、こっちが心配になるような不細工な顔も披露している、
何より、フルショットが多いため、今までごまかしていたもっさり感が際立っている。だが、そんなもっさり感が、なんともいえない愛嬌につながっている。

 監督はコメディの名手で、役者の魅力を引き出すことに長けた福田雄一だ。美少女という神棚に上げられて息苦しそうにしていた橋本を、福田は地べたに引きずり下ろして徹底的にイジリ倒すことで、今までにない魅力を引き出すことに成功した。

『銀魂』の後にも、同じく福田が監督するジャンプの漫画の映画化『斉木楠雄のΨ難』主演が決定しており、今後が楽しみである。

『銀魂』ほどではないが『警視庁いきもの係』の圭子も、渡部篤郎とのやりとりを見ていてクスッと笑わされることが多く、コメディエンヌとしての片鱗を少しずつ見せ始めている。

 ドラマ自体はあだ花として終わりそうだが、橋本にとっては、大きな飛躍となる作品に違いない。
(文=成馬零一)

●なりま・れいいち
1976年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

◆「女優の花道」過去記事はこちらから◆

最終更新:2017/09/04 12:51
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