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視聴率続落5.2%でも『僕たちがやりました』に、どんどん期待が高まるワケ

■追っ手がいなくなったことで追い詰められる逃亡者

 飯室は、これ以上捜査するつもりはないと言いました。「真実を訴えても、最悪、俺が消される」と。つまり、警察からのオフィシャルな回答として、4人を追う者はもう誰もいないということです。『僕たちがやりました』が逃亡劇だとすれば、もう追っ手がいないので、物語としては一件落着となります。

 しかし、トビオはこの日を境に、さらに追い詰められることになります。家に帰ればスキヤキが用意されていて、母さんも妹もなんだかんだ優しくしてくれる。蓮子からは「カラオケいつ行く?」とLINEが入る。そのすべてに吐き気を催す。「幸せが気持ち悪い」トビオはトイレでゲロを吐き続けます。

 蓮子へのLINEに返信できないままのトビオ。学校に行けば、マルは平気な顔でクラスの女子に逃亡トークを面白おかしく話している。友だちから金を盗んでもヘーキ、10人殺してもヘーキ、誰にも言わなければヘーキ、それはマルのクズさであり、生き抜く強さでもあります。

「あいつみてえには、なれねえなあ」とトビオ。

 廊下の向こうから、伊佐美が来ました。爆破事件の直後に首吊り自殺を図ったこともあった伊佐美は、やっぱりマルよりずっとナイーブです。笑顔で友人と話しながら歩いてきますが、トビオとは目を合わせることもありません。まるで、トビオとコンタクトすることであふれ出てしまいそうな何かにフタをするように、シカトして通り過ぎていきます。

 この日、フットサル部の部室には、トビオしか来ませんでした。部活が終わる時間を告げる校内放送が鳴っています。トビオはいつものように、家に帰ろうとします。

 画面からはエンディングテーマが流れています。

「♪生きろー、死ぬな、生きろ、生きろ」

 夕陽に魅入られるように、トビオはカバンを捨てて駆け出します。その顔には、笑みさえ浮かんでいました。

「♪自由を追いかけてー」

 そのままの勢いでトビオは屋上の腰壁を踏み越え、虚空に身を投げてしまいました。というところで、今回はおしまい。

 まあ歌詞とシーンのシンクロがびしっと決まって、シーンとして実に気持ちいいラストでした。

■シーンとして気持ちいいんですけど

 今回、パイセンの出番が多かったこともあって、特に前半はだいぶコメディ寄りでしたが、パイセンと飯室の告白以降のシークエンスは心理的に超えぐかったです。

 そもそも自分が真犯人だと知っていたのに、作品世界がコメディ寄りに見えてしまうくらい普通にハシャいでいたパイセンもえぐいですし、真相を知った後でもヘーキでいられるマルもえぐい。平静を装いながら全然平静じゃない伊佐美の心中も察するにあまりあるところですし、衝動的に屋上から身を投げてしまうというトビオもえぐいし、それに「♪自由を追いかけてー」という歌詞をかぶせる演出もえぐい。

 ポップなフリしてますが、物語は、罪を犯し、その罪を償う機会が与えられないがゆえに苦しむ人間が、それぞれに心の血を流すパートに入ってきました。痛快青春ドラマのように見えて、実にえぐい。

 原作がドラマ向きじゃないのは、エログロよりむしろ心理的なグロさだと思うんですが、ここまでは寄り道しつつも本質的な部分はちゃんとトレースしてきているような気がします。なので、そういう心理的ホラー、もしくは心理的スプラッターともいうべき作品が視聴率30%とかの国民的ドラマになるようだと社会がヤバい感じがするので、まあこの程度の視聴率でいいんじゃないかと思います。むしろ、変にライトにならずにちゃんと面白くなりそうなので、期待が高まるところです。
(文=どらまっ子AKIちゃん)

最終更新:2017/08/23 20:00
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