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最終回6.0%の『僕たちがやりました』 原作以上の残酷さに痺れる「物語が主人公を救わない」物語

■じゃあ、どこが面白かったのか

 テンポのいい演出と劇伴がいいね、ということは何度も書いていますが、『僕たちがやりました』の最大の長所は、やっぱり俳優だと思います。

 主演の窪田正孝は、初回のボンヤリ感からして見事に高校生だったと思いますし、中盤の逃亡シーンでも、そのボンヤリ感をずっと残したまま、過酷な状況に身を置いていました。

 ボンヤリ感がクライマックスまで残っていたことにより、最終回の屋上での演説の必死感、たどり着いた感がより際だつことになったと思います。“キャラが薄い”ことが個性だったトビオという役を、キャラが薄いまま最終局面まで運んできたのは明らかに計算された演技プランのはずですし、第1話の冒頭と最終話のラストで、まるで別人のような顔に見えたことは、主役が物語を演じきったことの証左だと思います。

 間宮祥太朗と葉山奨之は、このドラマを見ていた人からすると、しばらくは「伊佐美の人」「マルの人」というイメージが抜けないのではないでしょうか。ともにマンガ的なデフォルメを残しつつ、デフォルメのないトビオとの対話を違和感なくこなしていました。その上で間宮は根っからのヤリチンに見えたし、葉山はクソ野郎に見える。そして、間宮は最終話でも基本いい奴であまり変わってないし、葉山はクソ高校生からクソ度合が増したクソ大人に成長しているように見える。振る舞いひとつにも、彼らに流れた10年が見えたような気がします。

 永野芽郁はすごいですね。17歳でこの落ち着き、この存在感。セリフ回しにリアリティあるし、表情の変化も大きくて、見ていて楽しい女優さんです。川栄李奈は役回りの関係で振り幅が少なく、能力全開とはいきませんでしたが、安定感あってよかったと思います。

■そして何より、パイセンなんです

 第1話のレビューも書きましたが、この物語のキーになるのは、明らかにパイセンだと思いました。キャラも顔面もセリフも、まったくリアリティが考慮されないマンガキャラ。普通に考えて、実写にしたらスベるし、冷めるし、画面から浮くし、演じる俳優が損をする役回りです。そういうキャラが、物語の中心に立ってる。難役だし、重い仕事だと思いました。

 今野浩喜、最初から最後まで、まったくスベってません。画面上でスベりながら、役柄としてスベらない。こんなことをできる役者って、日本に何人いるのかってレベルだと思いました。ホメ過ぎでもなんでもなく、すげえー! と思ったのです。

 というか、白状してしまえば、わたしは今野くんとは古い知り合いで、彼のキャリアについてもよく知っていますので、今野くんが校舎の壁を乗り越えたり護送車に乗せられたりしているシーンには変な笑いが出てしまいましたし、最終回で「俺には笑いしか残ってない」とか言われたら変に泣きそうになってしまったりしちゃうわけですが(このセリフは今野への当て書きではなく原作通りです)、そういうの抜きにしても、この作品での当たり役は俳優としてのさらなる飛躍のきっかけになると思うし、なってほしいと願うのです。

 独特な顔面に加え、長年コントで培った独特な会話リズム、ナレーション仕事もこなす意外に独特な美声、奇妙に整った独特なスタイルなど、使われようによっては、まだまだ新しい今野浩喜が見られると思いますので、みなさま何卒よろしくお願いいたします。
(文=どらまっ子AKIちゃん)

最終更新:2017/09/20 20:00
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