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好評だった『刑事ゆがみ』主人公のキャラ崩壊とミステリー構築の失敗で残念な最終回に

 そのレイプ事件から13年後に発生したのが、少女・和美による父親殺し事件でした。ちなみに旧強姦罪の時効は10年ですので、この時点で横島が伊代さんへのレイプで罪に問われることはありません。

 しかし、和美による殺人を隠ぺいすることを決めた弓神は、横島を脅し、犯人に仕立て上げます。「罪をかぶって、作品通り再現したカルト小説家として名を残すか、強姦魔として世間にバラされるか」を選べと迫るのです。

 横島は現場にいたわけでもないし、アリバイがありそうなもんですが、なぜか捜査線上に浮上しました。そして、弓神がでっち上げた「ベストセラーにするため」という動機だけで容疑者とされてしまいます。弓神以外、まったく誰も捜査しなかったのでしょうか。

 レイプの時効が成立しているのに、今さら殺人の罪をかぶることにした横島の気持ちもよくわかりませんが、弓神の工作についてはさらに不可思議です。

 偶然、管内で焼身自殺を図ったハタチそこそこの青年に、ちょっと焼いた横島の免許証を持たせて「ハイこれが横島です自殺しました、ロイコ事件は終わりです」との報告書を上げ、それが通ってしまいます。殺人事件の重要参考人が焼死体で見つかったというのに、司法解剖もしてない。身長、体重、歯型、血液型、その他もろもろ遺体の身元特定を何もせず、免許の物的証拠だけで断定してしまう。なんと杜撰なのでしょう。警察不信になってしまいます。

 こうして弓神という刑事は、父親を殺した少女を守るために、ひとりのレイプ犯を“私刑”に処したのです。横島を社会的に殺したのです。

 ここまで、弓神のやっていることは明らかに倫理に反しているし、職権の私的な濫用です。警察権力を振りかざして横島という人間を殺したのです。到底、共感できるものではありません。

 また、武がヒステリーを起こして伊代を殺し、和美が武を撲殺したという単純で突発的な事件の、どこがどう小説『ロイコ』になぞらえられていたのか。「現場にカタツムリの絵が残されていた」以外、どんな共通点があったのか。ドラマは、それを語ることを放棄しました。最終回まできて、「ロイコ事件」の「小説『ロイコ』と事件との関係」を投げ捨ててしまったのです。最初から、この仕掛けそのものが成立していなかったということです。

 

■そして7年後

 

 氷川と苗字を変えた和美に“ヒズミ”というニックネームを与え、生活の面倒を見続けてきた弓神は、横島の不穏な動きを察すると、ヒズミに「南の島に行こう」と提案しました。どうやら警察も辞めるつもりのようでした。

 12歳で父親を殺し、そのショックで記憶喪失と失語症を患った少女は確かに不憫です。しかし、最終話でも語られた通り12歳の児童が殺人罪に問われることはありません。

 そんなヒズミの「記憶を戻してはいけない」というのが弓神の考え方でした。記憶を失ったまま、言葉を失ったまま、南の島で自分が一生面倒を見ればいい……弓神のその考えも理解不能です。ヒズミに必要なのは適切な治療とカウンセリングでしょう。弓神が事件に関わりさえしなければ、心の回復を経て違う人生を歩んでいたかもしれない。少女の父親殺しの、その罪ともいえない罪をもっとも強く断罪したのも、また弓神だったということです。「俺が一生、面倒を見ればいい」という判断は、和美という少女から自由な人生を奪う行為でもあると思うのです。ここも設計として失敗していると感じさせる部分です。

 そういう刑事で、そういうドラマを作ろうとしたわけではないことは、重々承知しています。いろいろ考えてドラマチックなシーンを頭に描いて、整合性を取ってみたら弓神がひどい人物になっちゃっただけだとは思うんです。

 でも、だったら、ちゃんと作れないなら無理にミステリーを構築しようとしなければいいのに、と思うんです。せっかく好印象なドラマだったのに、仕掛けの至らなさでキャラクターの魅力まで台無しになってる。

 先に書いた『日常』編でも、こうした事件の粗は見られましたが、脚本が徹底的に人物に寄り添っていたので、見応えのあるドラマになっていました。しかし『ロイコ』編では、弓神の心情よりもミステリーの仕掛けに心血が注がれ、その結果、弓神のキャラクターが崩壊していた。さらに、弓神のキャラクターを崩壊させてまで組み上げたミステリーも破綻しているという、なんとも残念な最終回になりました。

 あと、いくら金属バットだからって、12歳の少女が一撃必殺で大人の頭蓋骨を割って殺すのは無理だと思うよ。日馬富士でも、たぶん一撃じゃ無理だと思う。以上です。
(文=どらまっ子AKIちゃん)

最終更新:2017/12/15 21:59
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